アメリカ、ユタ州で開催されていたサンダンス映画祭は28日に閉幕した。世界有数のインディーズ映画の祭典である本映画祭は毎年世界中の映画ファンから注目を集める。

(詳しい情報については*1参照)

さて、今年のサンダンス映画祭を特徴付けるものとはなんだったのだろうか。この映画祭は、昨年からセクハラ事件の発覚により渦中の人となっているハーヴェイ・ワインスタインが過去30年間出入りしていた映画祭でもある。しかし今年はワインスタインと「絶縁」し、新たな映画祭の歴史を刻むこととなった。そんな決意からか監督賞は女性が総占めする結果となった。*2

他方で、映画の上映権を購入する「市場」としては、例年に比べて「静か」であったと指摘されている。多くの次なるインディーズ映画の旋風を巻き起すような作品を探しにやってきたハリウッドのディール・メーカーたちにとっては、あまり印象がよくなかったようだ。「ひどい」、「退屈」そんな意見が、スタジオ・エグゼクティブや配給会社の口から出てくる正直な言葉だった。「この映画は誰のためのものなんだ?」とまで言った有力な配給会社の担当者もいるらしい。インデペンデント映画のビジネスにおける、硬直した経済的現実(優良な映画でさえ十分なチケットを売り切るのに困るような)とも合わさって、映画祭期間中もっともよく聞かれた単語は「パス」だった。*3 もちろん多くの良い作品があったことも事実だが、WTFによる1000万ドルでの”Assassination Nation”をのぞいて、それほど多くのビックビジネスは存在しなかった。*4

 

特に昨年に比べて、最大の変化はNetflixとAmazonというVODの2大巨頭が全く手ぶらで帰ったことだ。これはここ2年間の状況と比べると劇的な変化である。というのも、2016年にはNetflix、amazonともに6作品ずつ上映権を獲得し、2017年にはNetflixが『マッドバウンド 哀しき友情』を1250万ドルで購入したのを含む、10作品を獲得。amazonも1200万ドルで購入した『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』を含む5作品を手に入れていたからである。こうした積極的な獲得の成果は、これらの作品が今年のアカデミー賞において大手のスタジオと競っていたことによく現れていた。*5 このように高額で、かつ多くの作品を購入していたからには、今年も両者ともに「市場」の重要なプレーヤーになるだろうということは多くの人が予想していたに違いない。

 

しかし、彼らは昨年までとは打って変わって、1作品も買わずに帰って行った。原因は何か。最近これらの会社は、自ら制作まで手がける方向性への比重を高めている。その結果、映画祭での上映権獲得に対しては、保守的になってきている側面がある。amazonの場合は、エンターテイメント部門ヘッドを勤めていたロイ・プライスのセクハラ問題とその解雇に直面しており、彼の代わりが決定するまで今後の方針はかならずしもクリアではない。*3 しかし、amazonは特に低予算よりも大規模で、高額な映画を好む方針を明確にしている。昨年の9月、variety紙のレポートで示唆されたのは、ジェフ・ベゾス自らが指揮をとって、将来有望なプロジェクトを見つけるためのチームを率いているということだった。

「もし市場における5本や10本のトップの映画のうち一本でも保有していれば、それはつまり自分たちのショウが価値をもつということだ。そのショウによって、会話の話題を操り、サービスへの加入を促すからだ」

2ヶ月後、ベゾス自らが『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの契約交渉をしたことがわかった。プロジェクトへの予算は推定で2億5千万ドルにもなる。こうしたamazonの戦略における優先順位のつけ方をみれば、ベゾスや彼の会社がインディーズ映画よりも大規模なプロジェクトを選ぶだろうということは理解できる。

 

Netflixの戦略はamazonに比べるとはっきりしないが、しかしプライスのメッセージである、会話の話題を操り、契約を促すということは、SVODの業界においては一般的に妥当なことである。”The Handmaid’s Tale”のような一つの野心的なプロジェクトによってhuluは巨大な数の新しい顧客を動員しているように見えるし、ストリーミングにとって名前のある大規模なプロジェクトに出資することが利益をうむのである。

 

もしNetflixやamazonが今年のサンダンスに見られたような配給獲得戦略に集中する場合には、監督は配給にために新たな道を開拓する必要がある。しかし常に変化を続ける映画産業の中では新たな変化がまたすぐに起こりうる。*6

 

一方で、何人かのバイヤーは今年のサンダンス映画祭での経験に満足しているようだ。彼らはビジョンと品質を備えた映画が多くあったと話す。

「確かに例年のように1本、2本の作品が映画祭全体を刺激するようなことはありませんでした。しかし、多くの良い映画があったことも事実です。」とRoadside Attractions の共同設立者、ホワード・コーヘンは述べる。

「映画祭の性格である複雑さは、映画を反映しているのです。そしてそこには興味深かったり、多種多様なだったり、時代の精神と格闘するような映画がありました。たとえ話題性のある映画が少なかったとしてもね。」*3

 

*1

http://indietokyo.com/?p=7337

*2

http://www.indiewire.com/2018/01/sundance-2018-roles-women-weinstein-the-tale-assassination-nation-1201921601/

*3

http://variety.com/2018/film/news/sundance-film-festival-market-wrap-2018-1202676721/

*4

http://flavorwire.com/612848/sundance-2018-ends-with-a-few-deals-and-awards

*5

https://www.cinemablend.com/news/2304451/why-netflix-and-amazon-sat-out-of-the-sundance-buyer-market

*6

http://www.tubefilter.com/2018/01/29/netflix-amazon-sundance-no-movies/

村上 ジロー
World News担当。国際基督教大学(ICU)在学中。文学や政治学などかじりつつ、主に歴史学を学んでいます。歴史は好きですが、(ちょっと)アプローチを変えて映画についても考えていきたいと思ってます。


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