世界には名だたる映画監督が多数いるが、彼ら、彼女らも映画を愛し、そこから学んだ人々であることに変わりはない。今回は著名監督それぞれの大好きな作品ベスト10をご紹介したいと思う。日本公開されていない作品は、原題のまま記載している。

ルカ・グァダニーノ

アカデミー賞、ロサンゼルス映画批評家協会賞を受賞した「君の名前で僕を呼んで」、「サスペリア」で、今や世界的な存在となったイタリアの映画監督だ。

①フリッツ・ラング 「Blue Gardenia」

②ジョアン・セーザル・モンテイロ 「行ったり来たり」

③イングマール・ベルイマン 「ファニーとアレクサンデル」

④ブライアン・デ・パルマ 「フューリー」

⑤ホウ・シャオシェン 「憂鬱な楽園」

⑥ジャン=リュック・ゴダール 「ゴダールの映画史」

⑦大島渚 「愛のコリーダ」

⑧ロベルト・ロッセリーニ 「イタリア旅行」

⑨アルフレッド・ヒッチコック 「サイコ」

⑩ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー 「ベロニカ・フォスのあこがれ」

ペドロ・アルモドバル

スペインを代表する鬼才監督。「抱擁のかけら」、「私が、生きる肌」など作品ごとに色が異なり、極彩色にとんだユーモラスかつセクシャルな作風のものが多い。独特なストーリー展開で魅せてくれる名監督だ。

①チャールズ・ロートン 「狩人の夜」

②ジャン・ルノワール 「ゲームの規則」

③ジョセフ・L・マンキーウィッツ 「イヴの総て」

④ジョン・M・スタール 「哀愁の湖」

⑤アルフレッド・ヒッチコック 「北北西に進路を取れ」

⑥ジャック・ターナー 「過去を逃れて」

⑦ミッチェル・ライゼン 「ミッドナイト」

⑧ビリー・ワイルダー 「お熱いのがお好き」

⑨オーソン・ウェルズ 「黒い罠」

⑩ルキノ・ヴィスコンティ 「夏の嵐」

 

アルモドバルに関しては、2018年の好きな作品も挙げておきたい。

 

①アルフォンソ・キュアロン 「Roma」

②パヴェウ・パヴリコフスキ 「Cold War あの歌、2つの心」

③マッテオ・ガローネ 「Dogman」

④是枝裕和 「万引き家族」

⑤グスタフ・モーラー 「The Guilty ギルティ」

⑥ポール・シュレイダー 「魂のゆくえ」

⑦ナディーン・ラバキ― 「カペナウム」

⑧ヨルゴス・ランティモス 「女王陛下のお気に入り」

⑨クロエ・ザオ 「The Rider」

⑩イサキ・ラクエスタ 「The Double Steps」

是枝裕和

言わずと知れた日本人監督。ドキュメンタリー出身らしく、温かみがありながらも、リアルで社会的な作品が多い。「万引き家族」のカンヌ国際映画祭での栄誉からアカデミー賞ノミネートまで、今話題をさらっている人物だろう。

①ジョン・カサヴェテス 「こわれゆく女」

②ホウ・シャオシェン 「恋恋風塵」

③成瀬巳喜男 「浮雲」

④ジェイムズ・ホエール 「フランケンシュタイン」

⑤ケン・ローチ 「ケス」

⑥ロベール・ブレッソン 「ラルジャン」

⑦フェデリコ・フェリーニ 「カビリアの夜」

⑧テオ・アンゲロプロス 「旅芸人の記録」

⑨イ・チャンドン 「シークレット・サンシャイン」

⑩ジャック・ドゥミ 「シェルブールの雨傘」

アスガー・ファルハディ

イランの映画監督。「セールスマン」「別離」「ある過去の行方」など、人間心理を深く描く作品が多い。アカデミー賞をはじめ、カンヌ国際映画祭など世界の映画祭で受賞経験がある。個人的にベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞した、「彼女が消えた浜辺」が大好きだ。

①黒澤明 「羅生門」

②Sun Yu 「The Road

③フランシス・フォード・コッポラ 「ゴッド・ファーザー」 

④小津安二郎 「東京物語」

⑤ビリー・ワイルダー 「アパートの鍵貸します」

⑥クシシュトフ・キェシロフスキ 「トリコロール 赤の愛」

⑦ウディ・アレン 「泥棒野郎」

⑧イングマール・ベルイマン 「仮面/ペルソナ」

⑨マーティン・スコセッシ 「タクシー・ドライバー」

⑩チャーリー・チャップリン 「モダン・タイムス」

アリ・アスター

最新作「ヘレディタリー」が高く評価されている新進気鋭の映画監督。今後もっと著名になっていきそうな、可能性を感じる監督だ。

①イングマール・ベルイマン 「仮面/ペルソナ」

②イングマール・ベルイマン 「叫びとささやき」

③イングマール・ベルイマン 「ファニーとアレクサンデル」

④ロマン・ポランスキー 「袋小路」

⑤ロマン・ポランスキー 「反撥」

⑥ロマン・ポランスキー 「ローズマリーの赤ちゃん」

⑦ロマン・ポランスキー 「マクベス」

⑧溝口健二 「山椒大夫」

⑨溝口健二 「雨月物語」

⑩溝口健二 「西鶴一代女」

 

同じく、アスターに関しては2018年の好きな作品も挙げておきたい。

 

①イ・チャンドン 「バーニング」

②アルフォンソ・キュアロン 「Roma」

③ルクレシア・マルテル 「Zama」

④ポール・シュレイダー 「魂のゆくえ」

⑤ヨルゴス・ランティモス 「女王陛下のお気に入り」

⑥アンドレイ・ズビャギンツェフ 「ラブレス」

⑦是枝裕和 「万引き家族」

⑧アリ・アバシ 「Border」

⑨ガイ・マディン、ゲイラン・ジョンソン、エヴァン・ジョンソン 「The Green fog」

⑩リン・ラムジー 「ビューティフル・デイ」

ダルデンヌ兄弟

ベルギーを代表する映画監督兄弟。「息子のまなざし」、「サンドラの週末」などリアリズムと人間の素朴な強さ、温かさを描いた作品が多い。

①ピエール・パオロ・パゾリーニ 「アッカトーネ」

②フリッツ・ラング 「The big heat」

③黒澤明 「どですかでん」

④ロベルト・ロッセリーニ 「ドイツ零年」

⑤モーリス・ピアラ 「ルル」

⑥チャーリー・チャップリン 「モダン・タイムス」

⑦ジョン・フォード 「捜索者」

⑧クロード・ランズマン 「Shore ショア」

⑨溝口健二 「赤線地帯」

⑩フリードリヒ・ヴィルヘルム・ムルナウ 「サンライズ」

ポン・ジュノ

韓国の映画監督。「殺人の追憶」「グエムル 漢江の怪物」が有名だが、アメリカ、フランス合作の「スノーピアサー」も手がけている。彼に関しては9作品のエントリーだ。

①黒沢清 「Cure」

②コーエン兄弟 「ファーゴ」

③キム・ギヨン 「下女」

④アルフレッド・ヒッチコック 「サイコ」

⑤マーティン・スコセッシ 「レイジング・ブル」

⑥オーソン・ウェルズ 「黒い罠」

⑦今村昌平 「復讐するは我にあり」

⑧アンリ・ジョルジュ・クルーゾー 「恐怖の報酬」

⑨デヴィット・フィンチャー 「ゾディアック」

ミア・ハンセン・ラブ

フランスの若手女性監督。イザベル・ユペール主演の「未来よ こんにちは」でベルリン国際映画祭の銀熊賞を受賞。夫は同じく映画監督のオリヴィエ・アサイヤスだ。

①ピエル・パオロ・パゾリーニ 「アラビアンナイト」

②スタンリー・キューブリック 「アイズ・ワイド・シャット」

③イングマール・ベルイマン 「ファニーとアレクサンデル」

④フィリップ・ガレル 「愛の残像」

⑤エリック・ロメール 「緑の光線」

⑥マイケル・マン 「ヒート」

⑦モーリス・ピアラ 「The House in the Woods」

⑧ジャン・ユスターシュ 「ママと娼婦」

⑨ホウ・シャオシェン 「ミレニアム・マンボ」

⑩アベル・ガンス 「ナポレオン」

ホン・サンス

韓国の著名映画監督。日本での人気も高く、近年では女優のキム・ミニをヒロインにした「夜の浜辺でひとり」、「それから」などを撮っている。

①ジャン・ヴィゴ 「アタラント号」

②リュミエール兄弟 「The Boat leaving the port」

③ジャン・ルノワール 「素晴らしき放浪者」

④小津安二郎 「早春」

⑤エリック・ロメール 「緑の光線」

⑥ロベール・ブレッソン 「抵抗(レジスタンス)-死刑囚の手記より-」

⑦ロバート・フラハティ 「極北の怪異」

⑧ルイス・ブニュエル 「Nazarin」

⑨カール・テオドア・ドライヤー 「奇跡」

⑩ジョン・フォード 「若き日のリンカーン」

ミヒャエル・ハネケ

オーストリアの映画監督。「白いリボン」、「愛、アムール」でカンヌ国際映画祭のパルムドールを受賞、独特の後味の悪さを武器にする鬼才である。

①ロベール・ブレッソン 「バルタザールどこへ行く」

②ロベール・ブレッソン 「湖のランスロ」

③アンドレイ・タルコフスキー 「鏡」

④ピエロ・パオロ・パゾリーニ 「ソドムの市」

⑤ルイス・ブニュエル 「皆殺しの天使」

⑥チャーリー・チャップリン 「チャップリンの黄金狂時代」

⑦アルフレット・ヒッチコック 「サイコ」

⑧ジョン・カサヴェテス 「こわれゆく女」

⑨ロベルト・ロッセリーニ 「ドイツ零年」

⑩ミケランジェロ・アントニオーニ 「太陽はひとりぼっち」

 

個性に富んだ様々なランキングは、本当に面白かった。興味深かったのは、ヒッチコックの「サイコ」を含めている監督が多く、金字塔的な作品なのだと感じた。またスウェーデンの巨匠イングマール・ベルイマンの人気も高く、彼はウディ・アレンやアンドレイ・タルコフスキーなども尊敬する監督なので、その影響力の大きさを知った。

個人的に好きなのは、ポン・ジュノ監督のベスト10だ。まだ40代ということで、感覚的に近いこともあるのだろうか、黒沢清の「Cure」は傑作で個人的に大好きなので、目線が同じであるのを感じられ嬉しかった。

優れた監督たちを作り出したイマジネーションのもとを知ることができるのは、同じ映画好きであるつながりを感じられ、とても楽しかった。作品選びの参考になれば幸いです。

 

☆参考リスト

film stage

https://thefilmstage.com/?tags=director-favorites

indie wire

https://www.indiewire.com/2018/12/directors-best-movies-tv-2018-guillermo-del-toro-edgar-wright-pedro-almodovar-1202030788/

MUBI

https://mubi.com/lists/pedro-almodovars-favourite-films

IMDB

https://www.imdb.com/

鳥巣まり子

ヨーロッパ映画、特にフランス映画、笑えるコメディ映画が大好き。カンヌ映画祭に行きたい。現在は派遣社員をしながら制作現場の仕事に就きたくカメラや演技を勉強中。好きな監督はエリック・ロメールとペドロ・アルモドバル。


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