英国映画協会、British Film Institute(BFI)が、インディペンデント映画の現状を知るための大規模な調査を行うことを発表した。これは、イギリス映画産業のさらなる発展のため、5年間をかけておこなう新たなプロジェクト「BFI2022」の一環である。*1

調査委員長のLionsgate UK and EuropeのCEO、ザイジャイ・カマサは、「イギリスの映画産業にはサポートが必要だ」と言う。

「イギリスでの映画製作への税金控除は、素晴らしい制度だ。スター・ウォーズのような大作がイギリスで作られるようになった。だが、そうした映画は厳密にはイギリス映画ではない。イギリス人のスタッフが作るイギリスが舞台の映画が、もっとサポートされるべきだ。」

「メジャー映画とインディペンデント映画で控除率が一律なのも問題だ。インディペンデント映画への控除率が上がれば、大いに制作の助けになるだろう。インディペンデント映画をサポートすることは、文化的に重要なことなんだ。」*2

実際、2016年は、税金控除によるハリウッドの大作映画の招致に成功し、記録的な収益を上げた。しかしその一方で、イギリス映画の製作本数は減少し、インディペンデント映画のマーケットシェアはこの3年間で最低の7%にとどまった。*3

「イギリスの映画産業はたくさんのプレッシャーにさらされている」とカマサは指摘する。

「EU離脱も悩みの種だ。現在、EUと共同で資金集めをしたり、撮影をしたり、たくさんのEU出身のスタッフがイギリスで働いていたりする。EU離脱の影響は、はかり知れない。」*4

「映画館の高いチケット料金にも改善が必要だ。メジャー作品は値上げを、イギリスのインディペンデント作品は値下げを。イギリスの配給会社や映画館のサポートが、イギリスで公開される作品に多様性をもたらすはずだ。」*5

委員会は、こうした問題の実態を詳しく調査し、有識者と改善策を議論し、年内には報告書を出す予定だ。BFIのCEO、ジョッシュ・バーガーは、「イギリスのインディペンデント映画の発展を確実にするのがBFIの仕事だ」とコメントする。

「近年、イギリスの映画産業は成長しているが、現在の環境の中で、クリエイティビティの宝庫であるインディペンデント映画の成長を助けなくてはならない。だから、「BFI2022」プロジェクトのはじめに、この調査をすることにしたんだ。」*6

こうしたイギリス映画産業の現状とBFIの活動は、日本の映画界にもヒントを与えてくれるだろう。今後の動向にも注目していきたい。

BFI2022
http://www.bfi.org.uk/2022/

*1
http://www.screendaily.com/news/production/bfi-to-investigate-health-of-independent-film-sector/5119831.article

*2,4,6
http://www.screendaily.com/news/distribution/british-films-need-more-support-says-lionsgate-uk-ceo/5116197.article

*3
http://www.screendaily.com/news/production/us-investment-fuels-record-16bn-production-in-uk-but-domestic-movies-struggle/5114201.article

*5
http://www.screendaily.com/news/brit-films-should-be-cheaper-at-cinemas-says-lionsgate-uk-ceo/5080109.article

北島さつき
World News&制作部。
大学卒業後、英国の大学院でFilm Studies修了。現在はアート系の映像作品に関わりながら、映画・映像の可能性を模索中。映画はロマン。


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