[387]英国EU離脱の映画産業への影響とは?


6月23日に国民投票をひかえるBrexit(Britain+exit:英国のEU離脱)問題。さまざまな方面で議論がおこなわれていますが、映画産業も例外ではありません。結論から言えば、イギリス映画産業の多くの人々はBrexitに否定的です。Brexitは、イギリスの、そして世界の映画産業にどのような影響を与えるのでしょうか?

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6月2日、250を超えるイギリスの著名人が、”love letter”と呼ばれるBrexit反対をうったえる文書にサインしました。その中には、俳優のパトリック・スチュワート、ベネディクト・カンバーバッチ、キーラ・ナイトレイ、ジュード・ロウ、映画監督のスティーヴ・マックイーンらがいます。”love letter”は、「英国のクリエイティブ産業の国際的な成功は、Brexitによって深刻な被害をこうむるだろう」と主張しています。例えば、近年、成功を収めた多くのイギリスのインディペンデント映画 — 『エイミー』、『キャロル』、『パディントン』、『ひつじのショーン スペシャル』など — は、ベルギーのブリュッセルからの助成金を受けて製作されています。*1

また、『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』や『英国王のスピーチ』などの作品は、EUのCreative Europeというクリエイティブ産業振興プログラムを利用した助成金を受けています。今年の第69回のカンヌ映画祭でCreative Europeの支援(注1)を受けた作品でパルムドールを受賞したケン・ローチ監督は、Brexitは「イギリスにとって危険な選択だ」とコメントしました。*2

もしイギリスがEUから離脱すれば、法的な問題により、こういったEUからの援助や、他の国の助成金制度を受けにくくなります(注2)。また、ヨーロッパの他国との共作も、難しくなるでしょう。さらには、完成した映画の売買の自由度が低くなることが予想されます。*3

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これは、イギリスだけの問題ではありません。近年、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』や『アサシン クリード』など、大作をイギリスで製作することが多くなっているハリウッドにも影響があります。ヨーロッパでのロケが難しくなったり、助成金が得難くなったり、EUからの優秀な人材を自由に雇用することができなくなれば、ハリウッドにとってもマイナスです。またハリウッドは、EUからの援助がなくなっても、イギリスでの映画製作への25%の税金の割引が維持されるのかということも懸念しています。*4

686人のイギリスのテレビ・映画業界の人々におこなわれたアンケートでは、68%の人がBrexitは自分たちの業界にネガティブな影響があると答えました。一方、22%の人々はポジティブな影響があると答えています。*5

Wag TVというTVプロダクションは、クラウドファンディングで£300,000を集め、『Brexit the Movie』というBrexitへの賛同をうったえるドキュメンタリー映画を作りました。映画は、現在劇場公開中で、公式サイトでも視聴可能です。*6

また、俳優のマイケル・ケインは、EU法の規制に不満を感じており、「顔の見えない官僚に支配されているよう」とコメントし、『ダウントン・アビー』の製作者ジュリアン・フェロウズは、EUを英国議会に影響すべきではない「独裁的で反民主主義の機関」と呼びました。*7

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しかし、もしEUを離脱したとしても、本当にイギリスはEUから自由になれるのでしょうか。近年のイギリス映画の成功に、EU諸国の存在が不可欠であったことは事実です。金銭的な援助だけでなく、優秀なクリエイターや俳優が自由に作品に関われたことは、イギリス映画に大きく貢献したはずです。そして、これからもヨーロッパの他国と協力して映画を作るためには、EU法と付き合っていかなければならないのは明らかです。来る国民投票は、イギリス映画産業にとって最善の結果となるのでしょうか。

『Brexit the Movie』

https://www.brexitthemovie.com

注1:ケン・ローチ監督『I, Daniel Blake』は、その製作・配給資金としてCreative Europeから €100,000助成を受けている。また、今年の第69回のカンヌ映画祭では、23の作品がCreative Europeの助成を受けており、そのうち11の作品が賞を受賞。

注2:もしイギリスがEUを離脱しても、基準を満たせばCreative Europeの助成金を獲得することは不可能ではない。しかし、映画がその基準をみたせないならば、莫大な資金提供や租税優遇措置ができない限り、ヨーロッパのプロダクションはイギリスのプロダクションと共同製作をするメリットがなくなってしまう。*8

*1,4,7

http://www.hollywoodreporter.com/news/what-brexit-would-mean-hollywood-900505

*2,3

What would Brexit mean for UK’s arts and media industries?

*5

http://www.alfinsight.com/resources/blog/brexit-will-hurt-media-and-creative-sectors-warns-mbi-industry-survey/

*6

https://www.brexitthemovie.com

*8

Britain Analysis: How Brexit Will Damage the Film Industry

北島さつき World News担当。早稲田大学卒業後、現在は英国、レスター大学の修士課程 Film and Film Cultures MAにて世界各国の映画作品、産業、文化について勉強中。


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