今月の初め、フランスのメディアLes Inrocksにおいてゴダールに関するニュースが発表された。要点としては主に2つである。まず1つ目は新作“Image et Parole”(イメージと言葉)に関すること、そして2つ目は1986年にテレビ用に撮られた作品である“映画というささやかな商売の栄華と衰退“に関することである。
 
・新作“Image et Parole”について
 ゴダールの新作“Image et Parole”は今日のアラブ世界に関する考察を促すようなドキュメンタリーであるが、現在ポストプロダクションの最中であり、今年の11月までの予定である。公開としてはおそらく遅くとも来年5月のカンヌ国際映画祭であるという。(#1)
 

・“映画というささやかな商売の栄華と衰退”について
 この作品は1986年に、フランスのテレビ局であるTF1のテレビ映画シリーズ『セリ・ノワール』の一環として制作、放映された。小説が原案ではあるがもちろんゴダール映画なので自由に翻案され、新作を準備中の映画監督を演じるジャンピエール・レオを通して、映画に関する辛辣なマニフェストを表明するものとなっている。この長らく未公開であった作品が今年9月にフランスにて劇場公開されるとのことである。(#1)


 この記事を受けて2日後にLe Figaroでも似た内容の記事が公開された。それによると、映画文法を革新してきたゴダールが数年間映画から遠ざかっており、これは現在、大きな不在である。おそらくこの長い不在を埋めるためにカプリッチはこの未公開の作品の劇場公開を決めたのだろう、という。(#2)
また同記事において、ゴダールとテレビの関係はあまり良くなかったと述べられ、
「しかし、彼はこのメディア(彼の言葉によれば“忘却させる工場”)のために良く働いた。このテレビのためのフィクションは小さなスクリーンの正確な批判である。 “映画というささやかな商売の栄華と衰退”は大規模な映画産業に対する、シネフィルのための辛辣なマニフェストである。同様に、皮肉にもゴダールのテレビ映画は、テレビの拝金主義やその無数のプログラムによってじわじわと死んでいくある種の映画に対する譲歩などない挑発的な口頭弁論である。」
と続く。(#2)


 そしてその数日後、今年70周年を迎える8月のロカルノ映画祭においてもこの作品の公開が決まり、主催者に対するインタビューでゴダールについて言及されている。
 
Q. ゴダールの映画“映画というささやかな商売の栄華と衰退”がコンペティションの外で公開されます。彼は招待されているのでしょうか?
A. はい。彼は来ないと思いますが、もし来るのであれば私は世界一の幸せものでしょう。このTF1による1986年の作品は、時代の要請により彼自身について語るものです。それは劇場とテレビにおける現在の論争に加わっています。というのもそれはテレビのために製作されたが、劇場にて第二の生を受けるからです。
Q. そのような文脈において、あなたはNetflixやAmazonで製作された作品がカンヌ映画祭において拒否された論争についてはどう思われますか?
A. 一方ではこれらの会社は、監督に様々な手段や大きな自由を与えることで映画を助けています。Amazonで製作された“The Big Sick”などです。また一方で劇場での生活も重要です。結局、1つの教義に固執することが良い回答ではありません。私は平行的な行程を、補足的な経験を信じています。人々は小さな画面で見る時も、大きなスクリーンで見る時もこれに気をつけなければなりません。次のようなケースがしばしばありえます。映画祭で最も成功した作品がしばしば最もよく知られた作品であり、人々は小さな画面で見たが大きなスクリーンでも見たい、というケースです。また、近頃では小さな劇場と同じくらいの大きさのスクリーンを所有している人もいますけどね!

#1
http://www.lesinrocks.com/2017/07/03/cinema/un-telefilm-inedit-de-godard-sortira-en-salle-la-rentree-11961663/ 
#2
http://www.lefigaro.fr/cinema/2017/07/05/03002-20170705ARTFIG00171-un-film-meconnu-de-godard-sortira-en-salle-a-la-rentree.php
 
#3
http://www.24heures.ch/culture/cinema/esprit-locarno-cest-changement-louverture/story/24832681
 

嵐大樹
World News担当。東京大学文学部言語文化学科フランス文学専修3年。好きな映画はロメール、ユスターシュ、最近だと濱口竜介など。いつも眠そう、やる気がなさそうとよく言われます。


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