オランダ出身ポール・バーボーヘン監督による『ELLE』がついに今夏日本で公開される。そしてそれに先立ち東京ではフランス映画祭2017において6月23日(金)に上映されることとなり、その際主演のイザベル・ユペールとポール・バーホーヘン監督が来日することが決まった。イザベル・ユペールは昨年のフランス映画祭で団長を務めて以来約1年ぶり、ポール・バーホーヘン監督は『ブラックブック』のプロモーション以来約10年ぶりの来日である。その他詳細についてはフランス映画祭2017のホームページ(#1)を確認してほしい。また、アメリカ公開時に監督へのインタビューを通してこの記事とは別の角度から『ELLE』を紹介したIndie Tokyoの記事(#7)も是非参照されたい。

 Hollywood ReporterのLeslie Felperinによれば、
 「ポール・バーホーヘン監督による、ある女性のレイプされることへの複雑な反応の映画は、フェミニストなどからの怒りを買うであろう。しかしこの作品は今までスクリーン上で提示された主題において最も勇敢であり、最も正直であり、最も考察を鼓舞するものの1つだ。」(#2)
と、評されている。
 このようなレイプシーンにおける反応が主ではあるが、主演のイザベル・ユペールは
「あまりにも多くの人々がキャラクターは立派であるべきと考える。しかし、正直であることがより重要である。」(#3)
「この映画はある人々が言い張るように、レイプを擁護していることは全くない。」(#4)
と、レイプシーンに嫌悪感を抱く多数の観客に説明しつつ、
「この映画は、暴力がどこから来るのか、なぜ我々は時にそれに惹かれるのか、何が彼女に暴力を引き起こさせるのか、について語っている。」(#5)
「彼女はレイプされこの暴力に直面している、そして、彼女は壊れやすい息子の母親で、そして、気が狂った母親の娘でいなければならない。そして、バツイチであり、恋人であり、上司である。この女性が多岐にわたって定義されること、それが彼女をとても複雑な人間にしている。彼女はレイプやレイプによる被害者ということだけによって定義されるのではない。彼女は新しい。ポストフェミニストのヒロインである。」(#6)
「ミシェルという人物はこの事故を1つの宿命とはみなしておらず、独特の廻り道を伴った復讐のためだけに揺れ動いている。」(#4)
と、映画をレイプという具体的なものではなく、広く普遍的に暴力という主題から捉え、ポストフェミニズムを引き合いに出しつつ1人の女性の生き方を提示するものとして表明している。たしかにこれは『ELLE』(フランス語で彼女という意味)というタイトルからもうかがえることだろう。

#1 
http://unifrance.jp/festival/2017/
#2 
http://www.hollywoodreporter.com/news/critics-notebook-why-cannes-elle-896334
#3
http://m.washingtontimes.com/news/2017/apr/22/isabelle-huppert-awarded-golden-thumb-award-ebertf/
#4 
http://kapitalis.com/tunisie/2017/05/06/isabelle-huppert-presente-elle-a-tunis/
#5 
http://m.washingtontimes.com/news/2017/feb/15/isabelle-huppert-im-not-an-artist-im-the-canvas/
#6 
https://www.theguardian.com/film/2017/feb/23/isabelle-huppert-oscar-nomination-rape-revenge-elle
#7
http://indietokyo.com/?p=5313

嵐大樹
World News担当。東京大学文学部言語文化学科フランス文学専修3年。好きな映画はロメール、ユスターシュ、最近だと濱口竜介など。いつも眠そう、やる気がなさそうとよく言われます。


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