アカデミー賞受賞監督のペドロ・アルモドバルは現在新作「Dolor y gloria」 を7月前半から撮影中である。監督、脚本を務め、プロデューサーはおなじみの兄弟にあたるアグスティン・アルモドバルだ。

キャストにぺネロぺ・クルス、アントニオ・バンデラス、レオナルド・スパラグリア、アシエル・エチェアンディア(スペインの有名なテレビシリーズ「Velvet」に出演) を迎え、マドリードにあるアルモドバルと彼の兄弟であるアグスティンによって作られたプロダクションが、撮影を立ち上げている。このプロダクションはアルモドバル兄弟がアントニオ・バンデラス、カルメン・マウラ主演の1987年の作品「欲望の法則」を製作するために立ち上げたプロダクションである。

 アルモドバルは作品について、バンデラスとアシエル・エチェアンディア扮する男性の主人公たちの物語と説明する。彼の直近の作品「ジュリエッタ」と対照的だ。「Dolor y gloria」(英訳すると文字通り、Pain and Gloly 痛みと栄光)では、脇を固めるのがぺネロぺ・クルス、フリエタ・セラーノ だ。(アルモドバル曰く、「尊敬するふたりの女優。」)また、映画的かつ、舞台的な創造欲求、そしてそれを人生から切り離す難しさにゆさぶりをかけると語る。
 内容は、晩年の映画監督が、これまでの人生を振り返り、過去または現在にした決断について考えさせられる物語だ。いくつもの出来事や出会いによって思い起こされていく展開には、初恋からはじまる様々な恋愛、母親、人の生き死に、60年代や80年代、現在にいたるまでに彼が共に働いた役者たち、映画を作り続けることができないことに起因する空虚感などを含んでいると、アルモドバルは語る。

このような記述には、今作にどれくらい、彼自身の実体験が含まれているのかという好奇心をもたずにいられない。1970年代から映画を作りだしたアルモドバルにとって21作目の作品であり、68歳の彼にとっての最後の作品になる可能性もあるからである。

 アントニオ・バンデラスは、「セクシリア」(1982年)から「アタメ」(1996年)など、彼がハリウッドに進出するまで、アルモドバルの作品において重要な役をずっと務めてきた。その後、21年の時を経て、「私が、生きる肌」で2人は再度タッグを組んだのだ。

 1999年の「オール・アバウト・マイ・マザー」で一躍注目を集めてから、ぺネロぺ・クルスはアルモドバルの作品の中でよく鑑賞されている作品のひとつ、「ボルベール 帰郷」で主演を務めた。
 また、「ペピ、ルシ、ボンとその他大勢の娘たち」、「バチ当たり修道院の最後」、「神経衰弱ぎりぎりの女たち」で以前アルモドバルと仕事をしていたベテラン女優のフリエタ・セラーノが、30年ぶりに出演する。
そう、アルモドバルは勇退しようとしているのではない、再集結させているのだ。「ジュリエッタ」や「Dolor y gloria」は、欲望の結果ではなく「私の秘密の花」のような彼のルーツの作品にもどる行為であり、彼自身の人生にも関わる、未来への期待や進化への象徴なのだ。

 

 

そんなアルモドバル監督の昨年、2017年のベスト10をご紹介すると現在日本で公開中、もしくはレンタル開始されているものばかりである。
彼が今期待する監督、ショーン・ベイカーの「フロリダ・プロジェクト」も含まれている。夏休みの楽しみとして、鑑賞してみてはいかがだろうか。

① 「ファントム・スレッド」
監督 ポール・トーマス・アンダーソン
主演 ダニエル・デイ・ルイス、ヴィッキー・クリープス

 

② 「君の名前で僕を呼んで」
監督 ルカ・グァダニーノ
主演 ティモシー・シャラメ、アーミー・ハマー

 

③ 「BPM ビート・パー・ミニット」
 監督・脚本 ロバン・カンピヨ
 主演 ナウエル・ペレ・ビスカヤー、アーノード・ヴァロワ

 

④ 「スリー・ビルボード」
監督 マーティン・マクドナー
主演 フランシス・マクドーマンド、
   ウディ・ハレルソンン

 

⑤ 「ビューティフル・デイ」
監督、脚本 リン・ラムジー
主演 ホアキン・フェニックス、
   ジュディス・ロバーツ

 

⑥ 「Zama」
アルゼンチンの女性映画監督Lucrecia Martelの作品

 

⑦ 「Ghost story」
デヴィッド・ロウリー監督、ケイシー・アフレック、
ルーニー・マーラ主演、2018年日本公開予定

 

⑧ 「シンクロナイズドモンスター」
監督、脚本 ナチョ・ビガロンド
主演 アン・ハサウェイ、ジェイソン・サダイキス

 

⑨ 「聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア」
監督 ヨルゴス・ランティモス
主演 コリン・ファレル、ニコール・キッドマン

 

⑩ 「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」
監督、脚本 ショーン・ベイカー
主演 ブルックリン・プリンス、ウィレム・デフォー

 

 

★参考リスト

インターネットムービーベース(IMDB)
https://www.imdb.com/title/tt8291806/?ref_=nm_flmg_wr_1

 

Variety.com
https://variety.com/2018/film/global/pedro-almodovar-antonio-banderas-penelope-cruz-dolor-y-gloria-1202755351

 

instagram
https://www.instagram.com/penelopecruzoficial/

 

indie wire
https://www.indiewire.com/2017/12/pedro-almodovar-best-films-2017-phantom-thread-call-me-by-your-name-1201911860/

 

鳥巣まり子
ヨーロッパ映画、特にフランス映画、笑えるコメディ映画が大好き。カンヌ映画祭に行きたい。現在は派遣社員をしながら制作現場の仕事に就きたくカメラや演技を勉強中。好きな監督はエリック・ロメールとペドロ・アルモドバル。


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