HBOで7月8日から配信開始される「シャープ・オブジェクト」原作は「ゴーン・ガール」の作者ギリアン・フリンの処女作「『KIZU―傷―』(邦題)」が基になっており、彼女は本作の共同脚本として名を連ねている。「ゴーン・ガール」で一躍注目を集めたフリンの作品がHBOで独占配信されるということ、エイミー・アダムスが主演、製作を務めることに注目が集まっている。

全8回のエピソードは、セントルイスで新聞記者として働くカミーユと、彼女の故郷のペンシルベニア、ウインドギャップという街で起こったシリアルキラーによる少女の殺人事件について。もともとは「ゲット・アウト」のプロデューサーなどで知られるジェイソン・ブラムが映画化を決めていたが、本作のプロデューサーのマーティ・ノクソンが「ゴーン・ガール」を読みフリンの熱烈なファンになったことで、本作をテレビドラマ化できないかブラムを説得したという。「ゴーン・ガール」を読んだノクソンは「この(「ゴーン・ガール」主人公エイミー・エリオット・ダンのこと)ひねくれた女は何者なの?私は彼女が何者か知る必要があった」[*1]と先月のATX TV Festivalで語った。

12年前、エンターテインメント・ウィークリーでポップカルチャーの記者をしていた間に、原作者のフリンは小説「シャープ・オブジェクト」を書いた。「近年のフィクションでは描かれない女性のキャラクター(「ブリジット・ジョーンズ」に出てくる女性とはかけ離れた)あまり語られていない”女性の心理的に暗い部分”を描きたかった(…)(そんな本は)男たちが手に取れるようなところにはないと思わない?」[*1]とフリンは話す。

本作「シャープ・オブジェクト」では、主人公のカミーユは過去の体験を紐解いていく過程で、犠牲者のティーンエイジャーたちに親近感を抱いていく。犠牲者の一人は歯茎から歯を抜き取られた死体で見つかり、もうひとりは失踪中だ。「一体、この小さな街で両親は何をしていたのか?」カミーユはティーンエイジャーだった頃の記憶をさかのぼり「ギルモア・ガールズ」のエミリー・ギルモアのような、ソシオパスとしか思えない自身の母親の庇護にも疑問を感じる。

タイトルは”尖ったもの”という意味で、英語ではリストカットを暗示している。母と不仲であり、親子関係を克服てきていない。大人になった彼女はカミソリで自傷行為を試みている。

本作の主役を務めるのはエイミー・アダムスだ。「メッセージ」の撮影が終わったエイミー・アダムスは、本作の役作りを始め、また製作に加わった。

 BUILD Series[*2]のインタビューでエイミー・アダムスは本作について以下のように応えた。

「原作者のギリアンと話したのは、多分いまだったら女性の”怒り”を探求してもいいんじゃないかって。どうやって女性が怒ったり、憤ったりするのか。女性が”怒り”を表現することは、あまり認められていないでしょ。女性が女性を助けるのは大事なことだと思う。もし女性が”これはダメだ”って言ったら、全くそうだよねって言う。必ず彼女の味方になるの。
1人の人間ではとても難しいことが、同じ意見の人が5人になれば、あなただって聞かなくちゃいけないことだってわかるでしょ。女性同士で真実に耳を傾けて体験を聞くことはとても大事なことだと思うの。聞き始めることでお互いの経験を理解するの。無視するんじゃなくて」
 
 彼女は”女性の心の複雑さ”を表現しようと努めたと付け加えた。

「それがとても大事だと思うから、私は非なるヒロイン像を探しているの。女性はもっと自身を見つめる必要があるわ。
私達は見た目にこだわらない女性の、見た目にしかこだわらない女性のことではなく本当の、私達の物語を語る必要があるわ。
それがもし女性の醜い部分をさらけだしても、私達の”怒り”には美しい部分だってあると思うわ」

 マリ・クレールのインタビュー[*1]でフリンは、女性同士が助け合うことの重要性を以下のように語った。

「カミーユの母親から見ればウィンドギャップは無慈悲に支配された街です。親世代の彼らがそうしてきたことで、今も人々が同じような状態になっている。言い換えてみれば、ウィンドギャップは女性同士が助け合わない地獄のような場所です。つまり『もし、あなたが手を差し伸べて女性を助け上げたら、あなたの場所は少なくなるでしょ』なんて今の時代から遅れた考えがあります」

エイミー・アダムスやギリアン・フリンがインタビューで語っていること、女性たちが助け合うことはフェミニズムの原理だ。彼女たちのように(大きな運動の影に隠れがちな)フェミニズムの原理に沿って行動する人が増えることで、#Metoo 運動は本当の意味で時代を変えるのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
https://www.marieclaire.com/culture/a22075062/gillian-flynn-sharp-objects-interview/

*2
https://youtu.be/cbxJacEepco

参考URL
https://www.hbo.com/content/hboweb/en/sharp-objects/synopsis.html
https://www.indiewire.com/2018/07/sharp-objects-amy-adams-patricia-clarkson-marti-noxon-women-rage-1201981237/

伊藤ゆうと

イベ ント部門担当。平成5年生まれ。趣味はバスケ、自転車。(残念ながら閉館した)藤沢オデヲン座で「恋愛小説家」を見たのを契機に 以後は貪るように映画を観る。脚本と執筆の勉強中。


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