スタンリー・キューブリック監督の名作『2001年宇宙の旅』が、公開50周年となる今年のカンヌ国際映画祭で上映されることが発表された。
5月12日のクラシック部門にて、本作の大ファンであるクリストファー・ノーラン監督がプレゼンターを務める。

今回の上映にあたって、ノーラン監督はワーナーブラザーズと協力し、撮影時のオリジナルのネガから70mmフィルムへの現像を行った。
これは初回公開時以降、初となる試みで、デジタル・リマスターもなければ修正・補正も行っておらず、1968年の初上映に忠実な上映方法となる。

ノーラン監督はこう語る。
「人生最初の映画の思い出は、父とロンドンのノートルダム・ホールで『2001年宇宙の旅』の70mm上映を観に行ったことです。
この体験を若い世代に与えられる機会を作ることができ、さらにカンヌ国際映画祭という舞台で、修復していない状態の70mmでキューブリックの傑作映画を紹介することができて、大変名誉に感じています。」

映画祭での上映後、5月18日よりアメリカの映画館でも上映されることが決定している。

また、公開50周年にあたり、多数の映画関係者がこの映画に受けた影響について語ったインタビューを幾つか紹介したい。

● ダグラス・トランブル
『2001年宇宙の旅』や『ブレードランナー』で視覚効果を担当

毎日、本当に楽しんで製作をしていました。アメリカとソ連の宇宙開発競争の真っ最中で、とても重要なことをしているという実感がありました。この数年後に実現した月面着陸に直接関係があったとは思いませんが、この映画を若い頃に見て、その道に進んだという科学者やエンジニア、天体物理学者には毎週のように遭遇します。
誇らしいことに、この作品は、知的な文明との遭遇の可能性など、そういったことへの可能性や壮大さを信じさせるような影響力を持っていました。

● ジョン・ゲイター
『マトリックス』で視覚効果を担当

HALは、初めて大衆にAIの存在を知らしめました。
こういったインターフェイスを作っている人たちは、『2001年宇宙の旅』のような映画を参考にしています。
この作品は、AIが人間を破滅させるという非常に現代的なテーマを扱っています。2001年から20年近く経った現在からすると、このストーリーは必ずしも正確な未来予想だったとは言えませんが、AIが私たちを覆すという文脈自体が重要なのです。次のステップがスパイク・ジョーンズが『Her』で語っていることといえるでしょう。

● クレール・ドゥニ監督
自身初のSF作品『High Life』が今年公開予定

パリの巨大スクリーンでこの映画を観て、本当に圧倒されました。
宇宙を舞台にしている映画であるのは知っていたけど、人類を批判するような映画だとは予想していませんでした。
当時、本当にこのミステリアスな哲学的解釈を理解できていたかはわかりませんが、全てを受け止めてはいました。この映画から何かを模倣することができません。それはターブであり、プライベートな領域に踏み込むことです。

● アンドリュー・ニコル監督
代表作に『ガタカ』、『ターミナル』など

この作品の冒頭部分は、これまで映画館で体験した中で一番の没入感を得ることができました。私はブラックホールの中にいるように、その世界に吸い込まれてしまったのです。3D上映が存在する以前に、3Dを体感していたといえるでしょう。それまでのサイエンス・フィクションだけでなく、映画館の形式さえ変えてしまった作品です。
作品の壮大さもそうですが、実はディテールへのこだわりも素晴らしいのです。HALがIBMのアルファベットを一文字ずつずらしたネーミングになっているように。

参考
1.http://deadline.com/2018/03/christopher-nolan-cannes-stanley-kubrick-space-odyssey-2001-1202354670/
2.https://www.theguardian.com/film/2018/apr/02/50-years-of-2001-a-space-odyssey-stanley-kubrick

荒木 彩可
九州大学芸術工学府卒。現在はデザイン会社で働きながら、写真を撮ったり、tallguyshortgirlというブランドでTシャツを作ったりしています。


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