[612] 女性監督たちが輝いた今年度のSXSW映画祭注目作品


3月9日からアメリカのテキサス州オースティンで開催されていたSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)映画祭が幕を閉じた。今年で25周年を迎える今映画祭は映画だけでなく音楽、インタラクティブメディア、コメディ、ゲーム部門から企業展示までとクリエイティブなものすべてが集結する大規模なイベントだ。

毎年映画部門では長編、短編、ドキュメンタリー、アニメーションカテゴリーからポスターデザインまでと約20もの賞を設けている。ミュージックビデオやホラー映画など他の映画祭にはない個性的なカテゴリーを設置することでより幅広い、映画だけに限らない「映像」というものの魅力を多くの人たちに伝えていく。この他に主要カテゴリーでは最終日に観客たちの選ぶ観客賞が発表される。

映画界で問題にされ続けているジェンダーギャップはここにも存在する。ハリウッド映画の統計だけで見るといまだに上位100作のうち7.3パーセントしか女性監督が存在しないが各地の映画祭における女性監督たちの割合は年々増えている。SXSW映画祭も例外ではなく長編作品のうち33パーセント、短編においては59パーセントが女性監督による作品であった。

今回は今映画祭における女性監督たちによる注目作品を紹介していきたい。

長編作品部門で今年度観客賞を受賞した『First Match』
服役していた父親とのつながりを求めて高校のレスリングチームで戦う少女を描いたオリビア・ニューマンによる新作。2010年に卒業制作として発表された短編を下敷きに今作の長編化に挑んだ。アフリカ系アメリカ人たちの居住地区でありギャングやドラッグの街だと言われるシカゴのブロンズビルを舞台に彼女から浮かび上がってくる世界をそのまま描き切った力強い長編デビュー作品。今月30日からNetflixで配信される。

イラン系アメリカ人監督Suzi Yoonessi長編作『Unlovable』の主人公は愛情に飢えてセックス中毒と化した少女ジョイ。監督自身の体験から紡がれたこの物語ではどん底に落ちた自分の愛情を仲間と音楽とともに立て直していく過程を描く。性や愛、人間関係について、自分に直接的に関わるものとまっすぐに向き合った作品はコメディ色と美しい映像を携えて私たちの心にそのまま入り込んでくる。
http://www.suziyoonessi.com/reel/

フランス映画『呼吸 友情と破壊』(2014)監督メラニー・ロランの最新長編作『Galveston』は作家Nic Pizzolattoの小説を元に病を患った殺し屋ロイ(ベン・フォスター)とエル・ファニング演じる売春婦ロッキーと彼女の妹三人の過去を捨てようとする物語。過酷な過去を背負った人物たちの未来が壮大なアメリカの景色と儚さを持ったメラニー監督の持ち味で描かれる。

25年前にベルリン国際映画祭で短編『The Last Supper』で審査員賞を受賞したダリル・ハンナ初の長編監督作品『Paradox』。ニール・ヤングを中心に3人の無法者たちが音楽の力を授けてくれるという満月の夜を待つ物語。ドキュメンタリータッチの映像と響き渡る音楽への愛。Netflixで3月23日より配信。

『スイス・アーミー・マン』や『The Diary of a Teenage Girl』などの数々のインディ映画のプロデュースを手がけるミランダ・ベイリーの監督デビュー作品『You Can Choose Your Family』
一見面倒見の良い父親を演じるフランクに実はもうひとつ別の家族、別の人生があったことが息子にバレてしまうところから始まる。スタンドアップコメディ出身のJim Gaffiganによるテンポ良い笑いと家族や自分のアイデンティティを模索する17歳のフィリップの絶妙なバランスを繰り広げていく。

母親であり女性であり黒人である主人公の『Fast Color』
近未来、自分に超能力があることが知られてしまい家族を捨てて逃げ隠れする人生を強いられてしまったルース。破壊の力ではなく創造の力は女性に元々宿る力であり強さであると語る監督ジュリア・ハート。夫であり『ラ・ラ・ランド』のプロデューサーでもあるジョーダン・ホロヴィッツと共に書いた脚本は彼女がつくりあげたもので変わっていく世界を描く。家族の元に戻ってきた彼女に残されたものとは。

私たちを取り巻く世界は決していつも明るいものではないかもしれないが彼女たちの視点からそれらをひとつの「映画」という物語の形として語っていくことでどこかでこの世界と折り合いをつけて良き未来へと進んでいこうとする強い意志が浮かび上がってくる。

mugiho
好きな場所で好きなことを書く。南の果てでシェフ見習いの22歳。日々好奇心を糧に生きています。映画・読むこと書くこと・音楽と共に在り続けること、それは自由のある世界。

参考
http://www.indiewire.com/2018/03/sxsw-2018-movies-female-filmmakers-1201934155/

https://shadowandact.com/first-match-cast-director-sxsw-interview

https://movieweb.com/galveston-movie-review-2018-sxsw-ben-foster-elle-fanning/

http://www.indiewire.com/2018/03/paradox-trailer-daryl-hannah-neil-young-netflix-1201938664/

http://www.latimes.com/entertainment/movies/la-et-mn-sxsw-fast-color-julia-hart-20180310-story.html


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