[608]作品の題材として語られるワインスタイン


数々のセクハラ疑惑などにより糾弾されたハリウッドの映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインが、自身についてのドキュメンタリー映画を製作する可能性についてニューヨーク・タイムズ誌の記事が報じた。

“Where`s Harvey?”と題された(今年1月にワインスタインがアリゾナ州パラダイスバレーのリゾートレストランで目撃され顔を殴られるという騒ぎののち、地元の住民たちが“Where`s Harvey?”と噂しては笑い種にしていることから派生しているという)その記事では、ハリウッドを去ったワインスタインの近況が述べられている。*1
それによると、ハリウッドを追放され、邸宅や土地を売却したのち、ワインスタインはアリゾナ州の施設で性依存症のための治療を受けているという。(なお、ユマ・サーマンは、以前ワインスタインから受けたハラスメントについてタイムズ紙に語った際、「彼は治療を受けなくてはならない」と述べている。)*2しかし、そこで定められた45日間の治療のプログラムを継続することができずに、治療に専念するというよりも時間潰しのように日々を過ごし、戯れのように関連施設の治療を受けたり、あるいは法に関する問題にあたっているようだと、最近ワインスタインから連絡を受けた知人たちは明かしている。
しかし、ハリウッドにおいて、かつて彼の影響下にあった者の一部は、ワインスタインがまた映画を製作することを期待しているという。
「『パルプ・フィクション』や『恋に落ちたシェイクスピア』の立役者は、これまでで最も挑戦的な映画をプロデュースするための題材が既にできている。今のところは誰もそれに手をつけてははいないが、ドキュメンタリーこそ、彼の復帰への道を切り開くだろうと彼らは言う。
ワインスタインの代理人は、”ワインスタイン側の視点や物語をいかに語るべきかについて、彼に接触を働きかけたプロデューサーやその他の人物についての長いリストがある”と述べている。」と記事は報じている。

一方、公共放送PBSのドキュメンタリー番組『フロントライン』とBBCの共同製作によるワインスタインについてのドキュメンタリー”Weinstein”が、アカデミー賞授賞式直前の3月2日に放送された。その内容について『フロントライン』のホームページでは「ワインスタインがどのように40名以上もの数々の女性を暴行し虐待したのかについての調査をしました。ワインスタインが若い頃の申し立てにまでさかのぼり、彼とその周囲の人々が行った、告発を沈黙させるための巧妙な手口について調べています」と紹介している。*3
”Weinstein”について、Variety誌のレビューはこのように述べている。
「(番組のなかで)女性はワインスタインによる暴行の、一連の手口について語る。彼女の話は目新しいものではないが、我々はその手段や隠蔽の仕組みにいまだ圧倒されている。
ドキュメンタリーの冒頭で調査されている暴行の嫌疑は、かのプロデューサーがコンサートのプロモーションビジネスから、より魅力ある映画界を目指していた頃、1980年に起こったものである。その物語は、何十年も続いた彼の悪事の経歴の長さを考えたとき、不快さと衝撃を同時に伝えている。
多くの被害者が、遭遇した彼の暴行について語っているーそれらは、今までに我々が耳にしたことのあるものだ。多くの人はこの活発なドキュメンタリーがテンポよく描いていることの多くを既に知っているだろう。ドキュメンタリーの冒頭で紹介された女性は映画産業において、その申し立てによると、40年もの間ワインスタインからの不快で犯罪的な振る舞いの集中攻撃に耐えたが、上層の機構や組織、陰謀は彼を守った。
しかし、あるサーガのひとつの全体像を知っているということは意義のあることだろう。被害者、あるいはワインスタインのかつての従業員から詳細を聞き出すことは、直接性のある新鮮さを提供している。フロントラインとBBCの共同製作によるこのドキュメンタリーは、証言の断片だけでなく、力強く特異な感覚をも差し出している。”Weinstein”は、#MeTooムーブメントへの有益な手引きとなるだけでなく、不可欠な後押しとなるだろう。」*4

IndieWire誌は、”Weinstein”を、アカデミー賞授賞式と関連づけてこのように評している。
「オスカー、あるいはゴールデン・グローブ賞、ハリウッドでの権威あるセレモニーの場で、俳優たちはワインスタインに感謝を述べてきた。それらの感謝の意は、当時は当たり前のもののように伝わっていたが、今では不快なものだろう。ステージの上の人々がワインスタインの罪を知っていたかどうかは重要ではない。彼らは、ワインスタインの振る舞いを許した産業の一部であったということだ。
被害者が秘密保持の契約を結ばされ、沈黙を強いられるといったような、容赦のない瞬間が再現されること、あるいは彼女らが声に出して語る物語を聞くことは、”Weinstein”の力強さとなっている。また、オスカーのタイミングは、作品に鋭さを与えている。アカデミー賞授賞式の直前に合わせて作られた”Weinstein”は、我々が既に知っていることの概要にすぎない。(中略)授賞式のタイミングと焦点を合わせて放送された映像であること、あるいは被害者たち、多くの人々がワインスタインから暴行を受けた直後のことについてインタビューを語っていることは、”Weinstein”に、一連の騒動の最新の要約である以上の意義を与えている。つまり、ワインスタインだけでなく、とがめられるべきものを受け入れてしまうハリウッドについて語っているということだ。」*5


また、ワインスタインを題材にした作品として、『グレンギャリー・グレンロス』(映画化作品『摩天楼を夢みて』)などで著名な劇作家のデヴィッド・マメットが彼にまつわる戯曲を書くことも報じられている。
「ブロードウェイのプロデューサーと話していて、何故ワインスタインについて書かないのかと尋ねられた。それで書くこととなった。」マメットは1992年の戯曲『オレアナ』でセクシャル・ハラスメントを題材に扱っているが、「今現在でもこの問題について考えることは多い」と語っている。「全ての社会は抑制することのできないセクシャリティーの誘惑に直面している。それに対処するための様々な方法を試みるが、どれもあまりうまくいかない。ある認識を切り替えるには大変な困難があるが、今現在我々はまさにその状態にある。人々はおかしくなり、彼らは互いを攻撃しはじめるだろう」*6

一連の事件はハリウッドを揺るがすような大きな出来事となっただけに、ワインスタインについて今後どのように語られていくのか、関心の寄せられるところだろう。

参照
*1https://www.nytimes.com/2018/03/09/style/harvey-weinstein-in-arizona.html
*2https://www.nytimes.com/2018/02/03/opinion/sunday/this-is-why-uma-thurman-is-angry.html
*3https://www.pbs.org/wgbh/frontline/film/weinstein/
*4http://variety.com/2018/tv/reviews/harvey-weinstein-documentary-review-frontline-1202714331/
*5http://www.indiewire.com/2018/03/harvey-weinstein-documentary-review-frontline-zoe-brock-1201934587/
*6http://www.chicagotribune.com/entertainment/ct-ae-david-mamet-chicago-novel-kogan-sidewalks-0225-story.html

吉田晴妃
現在大学生。英語と映画は勉強中。映画を観ているときの、未知の場所に行ったような感じが好きです。映画の保存に興味があります。


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