先日、サウジアラビアでの映画自由化のニュースが世界中で大々的に報道され、 実に約35年振りにサウジアラビアの市民が映画館を訪れること出来るようになる。

若き皇太子モハンマド・ビン・ソルタンによる女性の運転の自由化、王族の汚職の摘発などに次ぐサウジアラビア王国の改革の一環である今回の自由化は、同国の脱石油依存、産業化のビジョン中では小さな改革と思えるかも知れないが、世界でこれだけの注目を集めているのは寧ろサウジアラビアでは映画が禁止されているという事を人々が知らなかったことをこの報道によって発見した驚きから来ているとも言えるのでは無いか。

人口の約6割が30歳以下の「若い国」ということもあり、国民は娯楽に飢えている。宗派は違うが同じイスラム教に基づく統治が敷かれるイランでも、酒の場やダンスクラブと言った娯楽は制限されているが、映画が最も重要な娯楽の1つとして国民に愛されている。対して、サウジアラビアの人々は映画館に行きたければ、バーレーンやUAEなどの他のアラブ諸国に赴かなくてはならなかった。
その様な背景を持つサウジアラビアで映画が解禁されるとなり欧米を始めとする巨大資本が先行投資の目を光らせてい、先日早速米国大手のAMC Entertainmentがサウジアラビアの公共投資基金と早速映画館の操業の取引を結び、CEOのアダム・アーロン氏は
「この発表は業界において歴史的な瞬間であり、AMCの映画作品を、映画を観るために近隣諸国を訪れていサウジアラビア王国の3000万を上回る市民を繋げる偉大な機会である」と述べた。

MKM Partnersのエリック・ハンドラー氏は「映画館の需要は確実にあると思う」と言う。
「問題は、ハリウッドや、他の世界各国の映画作品をどれだけ(サウジアラビアの映画館で)上映することができるかということだ。ここでも中国の様に厳しい規制が敷かれるのかどうかだ」。

サウジアラビア政府によると、映画館で上映される映画は「王国の道徳観とイスラム法に合致するように検閲によって確かめられたもの」となると言う。
サウジ社会は依然として保守的だ。ヌードやセックスという類は間違いなく禁止となるであろうし、映画館でも女性と男性が隔離されることが求められる可能性もある。
君主制批判は以ての外であり、政治の自由化の傾向も見られないであろう。最近レバノンでワンダーウーマンが主演のギャル・ギャロットがイスラエル出身ということで上映禁止が科されたように、国際政治の要素もこれに加わるだろう。

また、かつて映画を「堕落」と称した宗教家の動向も鍵となるだろう。サウード家統治の正当性を与える存在となっているため蔑ろにすることも出来ない。モハンマド皇太子の手腕が問われるところだ。

サウジアラビア政府によると映画の認許については直ちに始め、映画館3月に上映開始されることが予想されている。

[参考]

Saudi Arabia Lifts 35-Year Cinema Ban, Plans to Open 300 Movie Theaters By 2030

Five Key Questions About Saudi Arabia’s Decision to Reintroduce Movie Theaters

https://www.vanityfair.com/hollywood/2017/12/saudi-arabia-movie-theaters

http://www.latimes.com/world/middleeast/la-fg-saudi-arabia-movie-theaters-20171211-story.html

奥村耕平
WorldNews部門大阪の大学生。服と映画が好きです。大学ではアッバス・キアロスタミを中心にイランの映画について研究中。東京の映画視聴環境に日々嫉妬中…。


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