台湾は言わずもがな多民族国家です。歴史的に見ればオランダ、中国、日本などの外国に統治されてきたことなどから移民も多く、台湾本土の人同士でも外省人、本省人と呼び分けることでアイデンティティを確認しながら現代を生きてきました。
そして今年の5月に行われた総選挙では高雄の原住民俗にルーツを持つ蔡 英文が民進党(民主進歩党)の代表として総統に選ばれましたが、彼女は東京都知事に就任した小池百合子氏に祝福のコメントを送りました。
「東京と台湾の街で強いつながりを持ちたい」と期待を表した上に、さらには高官らによる外交の意思も示しています。

この危機感はどこから来ているものなのか、
実は台湾では経済の停滞が数年来の問題として掲げられています。
明後日9月2日に公開の映画「銷售奇姬~Ace of Sales~」の公開イベントが求職者向けの説明会の会場で開かれました。
そのフォーラムでThe China Postの記者がプロデューサーの葉如芬(Yeh Jufeng)に経済状況に関する質問を問いかけたところ、憂いてはいない様子でした。
「母子(父子)家庭や、子供を持たない夫婦が増えていますが、彼らはもっと働くことを望んでいるのです」

葉如芬といえば、
蔡明亮「天邊一朵雲~The Wayward Cloud~」のようなアート作品や、青春映画「9月に降る風(邦題)」のプロデューサーとしても知られていますが、今作監督の卓立(Cho Li)とはデビュー作から続く長年のタッグです。
第23回東京国際映画祭で上映された「ズーム・ハンティング(獵豔~ZOOM HUNTING)」以来、卓立監督の作品が日本公開されていないのは残念ですね。また今作「銷售奇姬~Ace of Sales~」は、辛口レビューとして知られるTAIPEI TIMESで、
「マイナーな職業をメインテーマに選んだのはいいが、出演者に難あり」と書かれてしまいました。
実力のある監督が商業的な理由で豪華キャストと制作に挑んでいる点には私も少し残念な気持ちを覚えました。

卓立監督が販売員を主人公にしたのは、
「彼らの気持ちが理解できなかったから」とインタビューで答えています。
「『ズーム・ハンティング』を撮影している時にテレビ販売のセールスマンを見て興味を持ちました。だって普通は、他人に干渉するのを避けて通ろうとするものだから。自分と違って『個性的で愉快な』人たち観察して調べるのが私は好きなのです」
流行やトレンドはどこ吹く風で、やりたいことを貫く卓立監督をますます応援したくなるコメントでした。

最後に、今作のトレーラーをご覧ください。
https://vimeo.com/177711360

◇参考サイト◇
http://focustaiwan.tw/news/aipl/201608010025.aspx (FOCUS TAIWAN)<—日本語版あり
http://www.chinapost.com.tw/・・・/2016/08/28/476819/Ace-of.htm (THE CHINA POST)
http://www.taipeitimes.com/・・・/arch・・・/2016/08/26/2003653873  (TAIPEI TIMES)

伊藤ゆうと
イベ ント部門担当。小さなラジオ局で働く平成5年生まれ。趣味はバスケ、自転車。(残念ながら閉館した)”藤沢オデヲン座”で「恋愛小説家」を見たのを契機に 以後は貪るように映画を観る。脚本と執筆の勉強中。


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