共に2015年に映画製作・配給業に進出したAmazonとNetflix。業界の”新入り”である彼らはどのように評価されているのだろうか?

 Amazonは、第69回カンヌ映画祭に出品された5作品の配給をするなど、映画配給会社としての存在感を高めている。「Amazon Studiosは頼りになる仲間であり、貴重な財産だ。」インディペンデント映画を手がけるBroad Green PicturesのDaniel Hammond氏は、プロデューサーのための会議「Produced by」カンファレンスでこうのように語った。「彼らは人々が注目し始めたばかりの新しいものや、普通ならあまり注目されないものに投資してくれる。」Broad Green PicturesとAmazon Studiosは、2011年にカンヌ国際映画祭監督賞に輝いた映画『ドライヴ』や『オンリー・ゴッド』などで知られるデンマーク出身の監督ニコラス・ウィンディング・レフンの新作ホラー映画『ザ・ネオン・デーモン(原題) / The Neon Demon』の配給で提携関係にある。
 
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 一方で、Amazon Studiosと同様の”新入り”であるNetflixは、従来とは異なる流れで上映を行っている。Netflixが製作した『Beasts of No Nation』は劇場公開とインターネット配信が同時に行われた。一度は大手シネマコンプレックスに上映を持ちかけたものの、同時配信であることを理由に断られ、アメリカ国内のミニシアターでのみ上映された。NetflixのTed Sarandos氏によると、Netflixがこのような特殊な流れで上映ができるのは、そもそも劇場公開による収益を想定していないからだという。従来の映画配給会社は興行収入を重視し、劇場での売り上げに悪影響を与えないために、劇場公開から3~6ヶ月後にDVD/Blu-ray化、インターネット配信をする。しかし、このような方法だと、ミニシアターでの上映がメインであるインディペンデント映画は興行収入が少なく、メディア化されることもなく消えてしまう可能性がある。Netflixのインターネット配信と同時上映という手法ならば、大きな興行収入を見込めないインディペンデント映画でも多くの人に観てもらうことができるうえに、上映までの敷居が格段に低いのだ。また、ワーナーやパームスターを押し退け、ウィル・スミス主演、デビッド・エアー監督(『フューリー』、『スーサイド・スクワッド』)の映画『Bright』の製作配給権を取得するなど、その影響力はインディペンデント映画に限らない。
 しかし、これらの手法への批判も根強くある。アメリカのフォックス・エンターテインメント・グループ傘下のテレビ局、FXのCEOであるJohn Landgraf氏は、NetflixとAmazon Studiosを「未来のクリエイティブにとって最悪のモデルである。つまり我々の社会にとっても最悪ということだ。」と述べている。
 これらの変化に加え、ショーン・パーカー氏のScreeningRoom(詳細記事:http://indietokyo.com/?p=4333)が賛否を呼んでいるが、今後、映画鑑賞の場を劇場から自宅へシフトさせていく流れが強くなっていくのは間違いないだろう。これらの上映形態の変化が、予算の少ないインディペンデント映画の発展につながることが期待される。

http://www.indiewire.com/2016/06/netflix-amazon-studios-debate-broad-green-pictures-neon-demon-1201684766/
http://www.indiewire.com/2016/04/its-an-amazon-world-at-cannes-with-five-selection-titles-288145/
http://www.imdb.com/title/tt1974419/
http://variety.com/2016/biz/news/ted-hope-bob-berney-amazon-studios-spike-lee-chi-raq-1201727385/
http://deadline.com/2016/03/netflix-bright-will-smith-90-million-deal-david-ayer-joel-edgerton-max-landis-1201721574/


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