[367] ハリウッドを二分するFacebook初代CEOによる新提案


ビデオ・オン・デマンド、通称VODはその手軽さや料金形態から映画鑑賞の形式として近年勢いを増している。そんな中、従来のVODとは異なるScreeningRoomという新たな試みがFacebookの初代CEOとしても有名なショーン・パーカーとPrem Akkarajuよって提案された。  

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ScreeningRoomを提案したショーン・パーカー氏

ScreeningRoomは映像受信端末を購入し映画を視聴するごとに料金を支払うことで最新の映画を劇場公開と同時に自宅で楽しむことを可能にするサービスである。現段階の構想では映像受信端末1台につき$150、1回の視聴につき$50を支払うことで購入後48時間は視聴可能となり、さらに、国内のすべての映画館で使える購入した映画の無料チケット2枚が特典としてついてくる、ということになっている。また、強力な海賊版対策技術も提供するとしている。

このビジネスに対する映画業界の反応は様々だ。大手スタジオではユニバーサル、FOX、SonyがScreeningRoomに興味を示しているとの情報がある。ほとんどの映画が公開後数時間でファイル共有サイトに違法にアップロードされている現状の中、多くの映画を抱える大手のスタジオにとって、ScreeningRoomの強力な海賊版対策は魅力的なのかもしれない。*1

しかしすべてのスタジオがこの大胆なビジネスに乗り気なわけではない。たとえば、ファミリー向けの作品を多く提供しているディズニーはこの構想にまったく関心を示していない。その理由は公にされているわけではないが想像に難くない。2年前に行われた調査で、80%近くの映画ファンが新作映画を自宅で見るためなら$25は喜んで払う、という結果が出ている。これは映画を1人でも見る映画ファンを想定したものだ。これが子どもを2、3人含む家族だったらどうなるだろうか。そのような家族の親にとって、$50で家族全員分の映画代がまかなえるとしたら、映画館より魅力的なものになるだろう。さらに、近所の友達家族を呼んでホームパーティーを開き、そこで新作ディズニー映画鑑賞をすることも容易に想像できる。ファミリー向け映画が主力の会社が$50ではやっていけないと考えるのは当然ともいえる。*1*2movie night home

また、関心を示しているスタジオにとっても懸念材料がまったくないわけではない。その1つに、ScreeningRoomが各スタジオとの独占的かつ排他的な連帯を目指していることがあげられる。たとえば、ユニバーサルは親会社であるコムキャストでの放映、SonyはPlaystationでの配信を行っている。このようなスタジオとScreeningRoomと契約をした場合、放送・配信内容に混乱が生じる可能性がある。*1

加えて映画館経営者たちとどう折り合いをつけるかも問題になってくる。5年前、ユニバーサルがScreeningRoomと同様のVODシステムの実験を計画したことがある。それはブレット・ラトナー監督による『ペントハウス』(原題: Tower Heist)を劇場公開から3週間後にコムキャストにて$59.99で家庭用レンタルをするというものだった。しかしチケットの売り上げに悪影響が出るという懸念から、複数の大手映画館チェーンがボイコットを宣言し、実験は中止に追い込まれた。*3

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現在ScreeningRoomへの反対を表明している映画人たち

ScreeningRoomについてはスタジオだけでなく、ハリウッドの著名な映画監督やプロデューサーたちの間でも意見が割れている。賛成派としてピーター・ジャクソン、スティーブン・スピルバーグ、マーティン・スコセッシ、J.J.エイブラムス、ロン・ハワード、ブライアン・グレイザー、フランク・マーシャルが、反対派としてはローランド・エメリッヒ、ジェームズ・キャメロン、ジョン・ランドー、クリストファー・ノーラン、M・ナイト・シャマランがそれぞれ独自の意見を表明している。*4

賛成派であるピーター・ジャクソンは、ScreeningRoomは映画館へ足を運ばない客層をつかむためによく構想されているため、劇場・配給会社どちらへも長期的な利益をもたらし映画業界の持続可能性を上げることになる、と述べており、長期的にみたときの業界全体への利益を強調している。*5

反対派で、ジェームズ・キャメロンとタッグを組むことが多い映画プロデューサーのジョン・ランドーはScreeningRoomの提案に強い反対を示し、こう述べている。

「私もJim(ジェームズ・キャメロン)も神聖な劇場での映画体験に力を注いでいくことに変わりはない。私たちにとって、創作上・経済上のどちらの観点からしても、映画が劇場で独占的に最初に公開されることが必要不可欠である。」
「映画館での観賞は私たちが苦労して作った作品を観賞するのにベストな形態だ。なぜ業界が観客にそれをスキップする動機を与えるようなことをするのか理解できない。」*6

企画自体はまだ初期段階とはいえ、実現すれば映画業界に大きな影響を与えると思われるScreeningRoom。今後の動向に注目したい。

参考URL
*1http://variety.com/2016/film/news/studios-exhibitors-consider-revolutionary-plan-for-day-and-date-movies-at-home-exclusive-1201725168/
*2http://www.thewrap.com/industry-casts-doubt-on-sean-parkers-plan-to-screen-new-movies-at-home-for-50/
*3http://deadline.com/2011/10/universal-halts-tower-heist-vod-plan-182046/
*4http://www.thewrap.com/study-screening-room-wont-replace-theaters-but-cost-remains-a-barrier/
*5http://variety.com/2016/film/news/peter-jackson-screening-room-sean-parker-1201728990/
*6http://variety.com/2016/film/news/james-cameron-jon-landau-screening-room-sean-parker-1201731696/

江利山公洋
立教大学社会学部3年。タルコフスキー作品を徹夜で観たのをきっかけに映画の虜。今後も何かしらの形で映画に関わっていきたいです。考えることが好きだけど不得意です。


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