[349]ジェフ・ニコルズの新作SF映画『Midnight Special』が公開へ


midnight special poster

 「Midnight Specialは瞬間催眠術にかかったかのように、街灯が消えている夜中に車が流星のごとく走っているところから物語は始まる。この印象深い逃避行は『MUD-マッド-』(2012)でも見られたように、ミシシッピ州の曲がりくねった道で撮影され、8歳の少年の追跡劇が内省的なロード・ムービーとして展開される。アルトン・メイヤー、発光する目を持つアウトローの少年は千里眼やテレキネシスの能力を持っているため、とあるテキサス州の宗教団体や国家の人間(アダム・ドライバー)から追われる身となる。彼は嘘っぱちの幻想家か、それとも保養に来たエイリアンなのか。アルトンは差し迫ったこの世の終焉から人類を救うという予感を抱きながら、自分の父親(マイケル・シャノン)と母親(キルスティン・ダンスト)、そして家族の良き友人(ジョエル・エドガートン)と共に秘密の場所へと向かう。」*1

jeff nichols

 『Midnight Special』はアメリカの若手映画監督、ジェフ・ニコルズによる4年ぶりの新作で、『Shotgun Stories』(2007)、『テイク・シェルター』(2011)、『MUD -マッド-』(2012)を経て、本作が4作目となる。『Mignight Special』はこれまでジェフ・ニコルズが手掛けてきた作品と共通するテーマ、父と子にまつわる物語を軸に、80年代のSFアドベンチャーのテイストが盛り込まれた作品となっているようだ。その背景には『未知との遭遇』(1977)、『E.T』(1982)、『スターマン/愛・宇宙はるかに』(1984)、『アキラ』(1988)などの影響が見られるものになっているという。

「- あなたは『未知との遭遇』や『スターマン/愛・宇宙はるかに』などから影響を受けたと仰られていますが、本作ではまさにそうした名作が再解釈され、再文脈化されています。なぜこうした要素にあなたは惹かれたのでしょうか。

JN:あまりにも美学的な類似点が多くあるので、そのことについては一晩中語り合えるほどでしょう。言うまでもなく、確かにわたしはそうしたものに惹かれています。また、それはわたしが成長期にそうした映画に触れた経緯にもあるでしょう。わたしは80年代キッズの世代なので、映画を見に行くと言ったら、スピルバーグの映画を見に行くわけです。そして映画の仕組みを理解する前に、わたしは映画がどのように自分を感情的に至らしめるのかを理解し、そのような感情を抱かせる映画を作りたいと思っていました。奇妙で神秘的、そして畏敬の念を抱かせるような映画を作りたかったのです。しかし問題は、自分がオリジナル作品から得たインスピレーションをかき集めているうちに、自分だけのものを作らなければならない、それらを打倒する必要があることに気付くのです。つまり自分が愛するものを殺さなければならないのです。それを『Shotgun Stories』と本作で行いました。」*2

 また本作では、ジェフ・ニコルズがインディペンデント映画で培った自分の仕事の流儀を貫き通し、アメリカ映画では珍しく、映画の最終的な編集権(ファイナルカット)をプロデューサーの代わりに、監督自身が持てる方向で制作が進められている。それは映画が低予算だからこそ可能となっていることでもあるが、映画の制作プロセスを自分がコントロールでき、自分の人生と関わりがあるような物語でなければプロジェクトに携わらない姿勢を崩さないでいるようだ。そして本作では実の息子との関係性などが脚本を執筆する上で大きな原動力になったという。

midnight special 2

 「わたしがこの作品を作ったときは、自分の息子についてまだ知り始めて間もない頃でした。彼は1歳、2歳、3歳、4歳と成長していき、まるで小さな人間へと変わっていくようでした。彼が1歳の頃、ひどい熱性けいれんを起こしました。わたしと妻にとってそれは恐ろしい瞬間でした。それは自分がこの少年の身に起こっていることに対して何もできないことがとても明白に分かるものだったからです。自分が状況をコントロール出来ていないときの人々の反応は、何とかその状況にしがみつこうとするものです。しかし、それは親としてやってはならないことなのです。つまりそのとき私が分かったことは― 親としての役目とは、子供を管理することではないということです。何故ならできないからです。それは無益な努力なのです。親としての役目とは彼らが一体何者であるかを理解し、彼らが一体何者になるべきかを助けてあげようとすることです。それがこの映画で目指そうとしたものです。」*3

 『Midnight Special』は近年に見られるような『ゼロ・グラビティ』(2013)、『インターステラ―』(2014)や『オデッセイ』(2015)のようなリアルなSF志向の映画ではなく、ジョン・カーペンターやスティーブン・スピルバーグに見られる、空想SF作品よりの映画となっているようで、多くの関心と好評価を集めている。

「『Midnight Special』に漂う神秘的で狂信的な香りは、『テイク・シェルター』で描かれたような、思慮深く、限りなく曖昧な信念と向き合わせることで、信念に対する問いかけをフィクションの核心に据えることに役立っている。そうすることで、登場人物たちの真摯さと熱意をわたしたちに共有し、映画の「超現実的な」世界の純粋なヴィジョンを提示させている」*4

予告編

参考資料、引用元:
http://next.liberation.fr/cinema/2016/03/15/midnight-special-l-enfance-de-l-air_1439791 *1
http://www.theverge.com/2016/3/13/11209378/midnight-special-jeff-nichols-interview-sxsw *2
http://www.rogerebert.com/interviews/berlin-2016-interview-jeff-nichols-and-michael-shannon-on-midnight-special *3
http://www.lesinrocks.com/cinema/films-a-l-affiche/midnight-special/ *4
http://www.comingsoon.net/movies/features/666541-video-interviews-with-the-midnight-special-cast-and-director#/slide/1
http://www.outsideintokyo.jp/j/review/jeffnichols/mud.html
写真:Warner Bros.

楠大史 World News担当。慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科修士2年、映画雑誌NOBODY編集部員。高校卒業までフランスで生まれ育ち、大学ではストローブ=ユイレ研究を行う。一見しっかりしていそうで、どこか抜けている。


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