[345]ハルーン・ファロッキ協会 設立

 昨年11月、2014年にこの世を去ったドイツの実験映画の巨匠であるハルーン・ファロッキの
名を冠し、非営利組織ファロッキ協会が設立された。
 この協会は、ファロッキ自身の視覚的、そしてその他様々な手段で行われた映画の実験の研究、集積機関としてはもちろん、新たな実験映画のプラットフォームとして、映像(あるいは、イメージ)作家たちのプロジェクトの支援を行うことも目的としている。これはファロッキが生前、抽象的な理解や記憶の集積としての研究機関ではなく、実質的な作家運動をも組み込んだ研究所を実現させることを目指していたことも汲まれた結果である。
 2015年から、ベルリン郊外のウェディングにあるイベントスペース、サイレントグリーン文化地区にドイツ映画協会アルゼナルが所有している展示室で、フィルム、ビデオ、カタログなど、ファロッキの作品に関わる資料がアーカイブ展示されている。
 ファロッキ協会の目指すところとしては、彼の作品を今後も守り続け、学術的、芸術的、教育的、展示的目的で利用され続けることを可能にするため、作品と社会がアクセスしやすい環境を作ることにある。
 先月行われた、第66回ベルリン国際映画祭期間中、アルゼナルに保管されていた作品群のなかから、フォト・ドキュメンテーションがファロッキ協会の事務所の窓で展示されていた。(*1)
 ファロッキの作品は、今でも個展が世界各地で行われるなど、多くの人に鑑賞され続けている。
 ハルーン・ファロッキは生前、120本の映像作品とインスタレーションを製作していた。その作品群には、イメージのパワーとオリジナリティを感じさせるものがあった。彼は映画を通して、戦争や社会を批判し、作品を通して鑑賞者が実生活について想像力を持てるような作品製作を行ってきた。(*2)

(*1)https://www.harun-farocki-institut.org
(*2)http://www.harunfarocki.de/biography.html

藤原理子
World News 部門担当。上智大学外国語学部ドイツ語学科4年、研究分野はクリストフ・シュリンゲンズィーフのインスタレーションなどドイツのメディア・アート。上智大学ヨーロッパ研究所「映像ゼミナール2014」企画運営。ファスビンダーの『マルタ』のような結婚生活をおくることを日々夢見ております。


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