近年、どんな商業においても、中国を無視することはできなくなりました。もちろん、映画も例外ではなく、ハリウッド映画は完全に中国にすり寄っているように見えます。
現在13億の人口を抱える中国において観客を得ることは、商業的に成功する近道であるのに間違いないでしょう。
そもそも映画は商業として成立したものなので、興収を上げる前提で作られるのはもっともですが、それにしてもそれが加速しているように感じられます。

近年のハリウッド映画では、特に3D映画において、中国へのサービスショットや、中国公開に配慮した作品制作が増えています。
なぜ3D映画かというと、中国では随分前から映画館での上映をビデオカメラで撮影した海賊版が出回っており、映画館に人が入らずなかなか興収が上がらないことがありましたが、3D作品は、海賊版では3D効果が得られないということで、それまで海賊版で済ませていた人たちも映画館に行くようになったからです。(*1)

たとえば「パシフィック・リム」は、日本の特撮モノに着想を得た作品ではありますが、終盤まで活躍するのは日本ではなく中国のロボットです。
また、「ワールド・ウォーZ」に、台湾で発生した狂犬病が拡大するという場面があるのですが、もとは台湾ではなく中国だったらしいです。「それはまずい」と会社の上層部が差し替えたとか。(*2)

先にも述べたように、映画は商業芸術なので、興収を上げてもとを取らないといけない。
けれど多かれ少なかれ、作家の意図が捻じ曲げられたり、作品が損なわれるとなると、話は別です。
「映画はビジネスであるか、アートであるか」というのはどの時代にもついて回る、バランスをとることの難しい問題ですが、一部ではありますがハリウッドの、映画の作品性が失われようとしている今、もう一度考えてみるべきなのかもしれません。

つい最近のこと、インドではヌードのシーンが禁止されておりますが、スティーブ・マックイーン監督『それでも夜は明ける』(2013) は、作品自体の良さが認められ、特別に差し替え無しで公開されたそう。(*3)
このように、いつか中国のように検閲の厳しい国であっても、文化の壁を越えて作品の良さを語れるようになることを切に願っています。

則定彩香

*1
http://bylines.news.yahoo.co.jp/kihirateruyuki/20140423-00034056/

*2
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11078822.html?_requesturl=articles%2FDA3S11078822.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11078822

*3
http://www.independent.co.uk/arts-entertainment/films/news/12-years-a-slave-first-us-film-to-have-fullfrontal-nudity-cleared-by-indias-censor-board-9112932.html


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