[209] シャマラン復活なるか


801c15101-1M・ナイト・シャマラン監督の最新作“The Visit”の予告動画が23日に公開されました。[*1] 9月に全米公開を予定しているこの作品は、配給こそユニバーサルですが、シャマラン自身の会社ブランディング・エッジ・ピクチャーズと、「パラノーマル・アクティビティ」シリーズの製作で知られるブラムハウス・プロダクションズの共同製作で作られた“インディペンデント”映画です。公表されている製作費は500万ドル(約5.9億円)で、シャマランの劇場長編作の中で最も低予算の作品になります(ちなみに最も製作費が高かったのは『エアベンダー』で1億5000万ドル[約178億円])。

「祖父母が暮らす人里離れたペンシルバニアの農場に1週間滞在することになった姉弟の身に起こる恐ろしい物語とともに、シャマランは彼のルーツに戻って来た。子供たちはその年老いた夫婦が何かひどく不穏な事柄に関わっていることに気づき、家に帰ろうとするが、そのチャンスは日に日に狭まっていく――」[*2]

今回公開された予告は、公式サイトに記載された上記の簡単なあらすじを補足する役割を担っているわけですが、いくつかの映画サイトやニュースサイトを覗いてみると、ただの予告編紹介、あらすじ紹介以上の反応を示した記事が思いのほか多く見られました。その大部分に共通する論調は、巨額な予算のもと新境地に挑んだとされる前2作『エアベンダー』『アフター・アース』が興行的にも批評的にも大失敗した後、この作品でシャマランは復活できるのかどうかということです。さらにはこの予告編から 自分が予測する“The Visit”のオチ(結末)を披露する書き手もちらほら。

シャマランについて「彼の名前は災いと同義である」と辛辣な文句とともにThe Guardianの記事が特に不安視しているのは、この予告編にファウンド・フッテージ風のフレームワークが見られる点です。「彼はどうも自身のスタイルをアップデートしようとしているようだが、その取り組みはもはや手遅れに思える。ファウンド・フッテージはもはやパロディーになっているし、観客も本格的に興味を失ってきている。シャマランのこのサブジャンルへの突然の関心はいくぶん遅すぎる。君の父親がある日突然ファレル(ウィリアムズ)を発見するようなものだ」[*3]

同じくファウンド・フッテージ風のアプローチが「シャマランの映画という以上にブラムハウス・プロダクションズの映画という感じがする」というCINEMA BLENDの記事は、しかしもう少し好意的な意見を寄せています。「この作品は近代的なおとぎ話をしのばせる要素を持っている。たとえばおばあさんが少女にオーブンの中に入るように頼むシーンは “ヘンゼルとグレーテル”そのままだ。お菓子の家こそが彼女が望むものなのだ。こういった要素は間違いなくシャマランにうってつけだし、ブラムハウスの実質本位のホラーとシャマランの魔法のようなリアリズムがある種の統合を見せる可能性を感じさせる」[*4]

また、なかには妙に熱のこもった記事もあり、Forbesに寄稿したスコット・メンデルソン氏は、「この映画が奇妙でばかっぽいスリラーであることを期待している。『サイン』のような映画はもはや作れないし、彼らが公開第1週で6000万ドル(約71億円)を稼ぐこともない。しかし少なくともシャマランの芸術的な魔法はいくらか復活するはずだ」と述べ、この作品を今年最も楽しみにしている1本として挙げています(が、そのすぐ後に「ジョークではない」という念押しが入るのが何ともいじらしく…)。[*5]

まだ観ぬ映画についてあれこれ言うのは不毛かもしれませんが、不毛であるがゆえの楽しさもあり、また、予告編ひとつでこれだけ話題になるのもシャマランならではと言えるのかもしれません。はたして“The Visit”の全貌はどうなっているのか、その答えは9月以降に明らかになるはずですが、実はそれ以前に見ることができるシャマランの新作がもう1本あります。

それは映画ではなくシャマラン初のテレビ作品。125カ国のFOX系列チャンネルで5月から同時に放送開始となるドラマシリーズ「ウェイワード・パインズ 出口のない街」の製作総指揮と第1話の監督をシャマランが手がけています。有名な俳優が出ていない“The Visit”とはがらりと変わって、こちらは主演のマット・ディロンに、ジュリエット・ルイス、テレンス・ハワード、メリッサ・レオなど一部の層には涎ものに違いないハリウッド俳優たちが出演。Varieyのレビュー[*6]によれば、「ツイン・ピークス」や「LOST」が頭に浮かぶが、一番設定が近いのは「プリズナーNO.6」とのこと。こちらも大いに気になるところです。

*1

*2
http://www.stayinyourroom.com/

*3
http://www.theguardian.com/film/filmblog/2015/apr/24/m-night-shyamalan-the-visit-trailer-found-footage-horror

*4
http://www.cinemablend.com/new/Visit-Trailer-Might-Night-Shyamalan-Weirdest-Movie-Yet-71062.html

*5
http://www.forbes.com/sites/scottmendelson/2015/04/23/m-night-shyamalans-the-visit-trailer-creeps-online/

*6
http://variety.com/2015/tv/reviews/tv-review-wayward-pines-1201478560/

黒岩幹子
「boidマガジン」(http://boid-mag.publishers.fm/)や「東京中日スポーツ」モータースポーツ面の編集に携わりつつ、雑誌「nobody」「映画芸術」などに寄稿させてもらってます。


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