ウェス・アンダーソンの新作『グランド・ブダぺスト・ホテル』は2014年3月7日にアメリカで公開されて以来、好調なヒットを記録している。これは前作『ムーンライズ・キングダム』や、国内外で評価されたストップ・モーション・アニメーション『ファンタスティックMr.FOX』を抜いて、アンダーソン史上最高の大ヒット作となりそうだ。

『グランド・ブダペスト・ホテル』はアメリカにおいてNYとLAの2都市、合わせてわずか4スクリーンから公開が始まったにも関わらず、公開初週1シアターあたりの平均興行収入で202,792ドル(日本円にしておよそ2100万円)を記録する偉業を成し遂げた。(*1)これはポール・トーマス・アンダーソンの『ザ・マスター』(2012)を抜いて、なんとアメリカ歴代新記録である!(*2)4月30日現在では海外での公開も続々と始まっており、まだまだこの勢いがとどまることはないだろう。

本作は、1932年の雪深きポーランドのズブロッカにあるホテルを舞台にしている。カラフルなパステルカラーに彩られたグランド・ブダペストでは、伝説のコンシェルジュ、グスタフ・H(レイフ・ファインズ)が、夜のお相手も含めて、宿泊客を究極のおもてなしでお迎えする。ところがある日、お得意様である伯爵夫人マダムD(ティルダ・スウィントン)が殺された。彼女の遺書で有名絵画の相続人とされていたグスタフが容疑者に挙げられ、彼の逃避行が始まる。それを発端に次々と巻き起こる事件を、ウェス・アンダーソン独自の世界観の中でユーモアと共に展開する、ミステリー・エンターテイメントである。

明朗で、色気があり、ロマンチストで、年齢を重ねたマダムに人気のバイセクシャル・ダンディ。そんなグスタフを演じたレイフ・ファインズは、アンダーソンの要求するギャグの応酬のすべてを演じきった、極めて実力のある俳優である。またファインズだけでなく、ビル・マーレイジュード・ロウ、エドワード・ノートン、ウィレム・デフォー、オーウェン・ウィルソン、エイドリアン・ブロディ、レア・セドゥなど、脇を固める主役級の豪華な役者陣もこの映画の見どころの一つだ。

日本では、2014年6月6日より、TOHOシネマズ シャンテ、新宿シネマカリテ他での公開が決まっている。グスタフのきめ細やかなおもてなしと同様に、アンダーソンは几帳面に作りこんだショットによって、私たち観客をコミカルな冒険と愛のあふれる夢の国へ連れて行ってくれるだろう。(*3)海外では既に波に乗っている『グランド・ブダペスト・ホテル』、筆者も一ファンとして、とても楽しみだ。

則定彩香

*1
http://www.huffingtonpost.com/2014/04/15/the-grand-budapest-hotel-wes-anderson-highest-grossing_n_5153009.html
*2
http://filmmakermagazine.com/85691-a-breakdown-of-the-special-effects-in-the-grand-budapest-hotel/#.U10YC_l_snd
*3
http://www.salon.com/2014/04/02/up_in_the_old_hotel_the_hidden_meaning_of_wes_andersons_nostalgia/
公式ホームページ
http://www.foxmovies.jp/gbh/


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