[006]『ヴィオレッタ』


いよいよ来月16日よりフランスで開催されるカンヌ国際映画祭。ジャン=リュック・ゴダール、デビッド・クローネンバーグといった映画祭常連の巨匠はもちろん、カンヌでのコンペ初出品となる若手監督グザヴィエ・ドランや、ライアン・ゴズリング、マチュー・アマルリックといった人気俳優陣による作品の数々も話題を呼んでいます。

豪華俳優陣、有名監督陣、レッドカーペット…。一見華やかに映る国際映画祭ですが、実際は映画祭開催と同時に併設されている国際見本市(マーケット)が見もの。マーケットには例年映画製作者、プロデューサー、バイヤーが多く揃い、世界各国から集まる映画配給会社へ新作映画を売り込む絶好のプロモーションの場となっています。見本市では、各製作会社による映画上映やプレゼンが行われ、これから公開を控えている映画はもちろんのこと、企画段階の映画までもが売り込みに出され売買されます。つまりバイヤーにとっては、このマーケットでいかに先のヒット映画を予測し、自国に買い取るかが勝負どころといえます。

その舞台裏を念頭に、本日は、2011年カンヌ国際映画祭で上映され、日本の映画倫理委員会(映倫)から異例の判定を受け、未公開の危機に立たされながらも2014年5月にようやく日本初公開が決定した『ヴィオレッタ』(原題「My Little Princess」)をご紹介します(*1)。

本作は、写真集のために実の母親からヌード写真を撮られたエヴァ・イオネスコ監督の実体験を映画化した作品。カンヌ国際映画祭で上映された後、フランスでは「一般」作品として劇場公開されました。しかし、日本の映倫は「少女の性的な描写を想起させる」という理由で『ヴィオレッタ』を「審査適応区分外」(R18指定にも当てはまらない)と判断(*2)。映倫の審査基準には、“児童ポルノなど非合法な描写のある作品は適用外にする”とあり、劇中で直接的な描写はないが、連想させるシーンがあるというのが問題になったとされています。

そこで映画配給会社アンプラグドはクラウドファンディングで公式ページを作成(*3)。本作の魅力と置かれた状況を事細かに説明したうえで、上映実現のため、イオネスコ監督と主演のアナマリア・ヴァルトロメイの来日に向け資金を募りました。また、映倫の判断を不服として、アンプラグドは再審査を要求。さらには、監督自身も「本作は自伝的映画。児童ポルノを推奨する意図はない」、「むしろ理性やモラルの問題提起を主題とした」と積極的にコメントを続けました。その熱い思いがくみ取られ、映倫による再審査の結果、「区分適用外」は撤回され「R15指定」の指定を受けることがついに決定。今月16日、無事来日したイオネスコ監督とアナマリア・ヴァルトロメイは、ようやく実現した日本公開に感謝の意を表しました(*4)。

一見華やかに見える国際映画祭にも、裏にはこのような苦労やドラマがあります。『ヴィオレッタ』のように、3年越しにようやく本公開が決まる作品も少なくはないでしょう。日本国内で海外のあらゆる作品に触れられること。このことにいつまでも有難みを忘れず、映画を鑑賞しつづけたいですね。

『ヴィオレッタ』は5月10日より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。

内山ありさ

*1 映画『ヴィオレッタ』公式ホームページ
http://violetta-movie.com/
*2 MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/entertainments/news/140320/ent14032020220009-n1.htm
*3 MotionGallery 『ヴィオレッタ』クラウドファンディング
https://motion-gallery.net/projects/violetta
*4 シネマトゥデイ
http://www.cinematoday.jp/page/N0062226


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