11/23(土)台北で中国のオスカーとも言われる金馬奨の授賞式が行われた。今年は中国の不参加により参加者の少なさが目立った。(1)

 金馬奨は1962年に創設された映画賞だ。当初は台湾映画を促進する目的でつくられたものだったが、後に台北金馬映画祭へと名前を変え、台湾に限らない中華圏の映画の奨励や、他国の映画を台湾に紹介する国際映画祭になっていった経緯がある。上海を拠点に活動する映画批評家Dong Shuによれば、映画祭は中国、台湾、香港の文化的交流の基盤にもなっていた。(2)(3)

 しかし、今年の映画祭は中国の不参加によって提出作品と参加者が減少した。背景には中国と台湾の政治的な緊張関係がある。昨年の金馬映画祭では、ドキュメンタリー監督のFu Yueが受賞スピーチの際に、「台湾を独立した国と認識してほしい」と発言し議論を呼んだ。また、2019年8月には中国が台湾への個人旅行を禁止。映画界も影響を受け、中国の事実上の不参加となった。中国の措置は2020年に控える台湾総統選への圧力と見られている。(3)(4)

 こうした事態を受けて、同映画祭のチェアマンを務めた台湾出身の映画監督アン・リーは、中国の映画人が不在だったことについて「損失だ」と述べた。また、「作品や参加者の少ないことはもちろん残念だが、中国語話者の映画監督である限り、私たちはあなたを歓迎する」と話している。(1)

 中国の不参加に加え、香港のデモが続く中で行われた授賞式だが、作曲賞を受賞した台湾の作曲家Lu Lumingは賞を「理想を訴える香港人」に捧げるとし、その「自由と安全な生活を祈っている」とした。(1)

 

参考

(1)https://www.indiewire.com/2019/11/ang-lee-golden-horse-awards-1202191941/

(2)http://www.goldenhorse.org.tw/aboutus/about/

(3)https://www.theguardian.com/film/2019/aug/07/china-to-boycott-chinese-oscars-taiwan-golden-horse-awards-taipei

(4)https://www.theguardian.com/world/2018/nov/20/chinas-oscars-tawian-independence-golden-horse-awards-beijing-cuts-live-coverage

 

貳方勝太 (にのかたしょうた)迷える社会人。大学在学時は映画の制作に耽るなどして徒らに過ごし、現在は重度のヘヴィ・メタル好きが高じて作曲に手を出す。好きな監督はハル・ハートリーやマルコ・ベロッキオなどなど。文化に触れる時間を確保するのが日々の課題。


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