設立から僅か7年でありながら、『ムーンライト』、『レディ・バード』、『ヘレディタリー/継承』など次々と話題作を配給し注目を集めているインディペンデント・スタジオA24の新作、”The Farewell”が7月12日にアメリカで公開された。製作は『リトル・ミス・サンシャイン』でも知られるビッグ・ビーチ・フィルムズ他、監督は本作が2本目の長編となるルル・ワン。主演は、昨年日本で公開された『オーシャンズ8』、『クレイジー・リッチ!』にも出演しているオークワフィナが務める[#1][#2]。

中国で生まれ、幼い頃に両親と共にアメリカへ移住したビリー。ある日、両親から中国にいる祖母が末期がんだと知らされる。中国のしきたりに従い、祖母本人には余命3ヶ月であることを告げず、代わりにビリーのいとこの結婚式を開くという名目の元、最後に親戚一同が祖母の元へ集まれるよう画策する両親。病気のことを知らせない方が本人にとって幸せだという考えを理解出来ず反発するビリーに、娘が秘密をばらしてしまうことを恐れる両親はアメリカに留まるよう言い聞かせるが、最後にもう一度愛する祖母に会おうと、ビリーは祖母の住む長春へ向かう[#3]。

「実際の嘘に基づく物語」。”The Farewell”は、自身も中国で生まれアメリカで育った中国系アメリカ人であるルル・ワン監督の実際の経験に着想を得ており、それゆえ物語の描かれ方がリアルだ。自分と他の家族の考え方の違いに戸惑いながらも、ビリーはたくさんの新しい気付きを得る。幼い頃の記憶しか残っていない生まれ故郷の再発見、祖母の素晴らしい人間性、言葉では多くが語られなくとも確かにある家族の絆。英紙ガーディアンは、「あからさまなカルチャーショックを描いたコメディにすることを避け、家族と遠く離れて暮らすことに対する罪悪感と個々人にとって「家」が本当に何を意味するのかということの複雑さの双方を巧みに描いている」と評価している[#2][#3][#4]。

オークワフィナの演技にも注目だ。これまで出演してきた作品でも強い印象を残してきた彼女だが、”The Farewell”ではビリーの内面の葛藤を表現することを通じて、演技に今までにない深みがもたらされている。中国系アメリカ人のアイデンティティを真に体現するオークワフィナの姿は、彼女の新たな境地と言えるだろう[#5]。

本作は、今年のサンダンス映画祭でプレミア上映され高評価を獲得、アマゾン、ネットフリックス、FOXサーチライト・ピクチャーズを抑えA24が7百万ドルで配給権を獲得した。英語圏のみならずアジアでもヒットが見込めるとの判断が高額オファーの背景にあると思われる。まずはアメリカの限られた劇場からの公開だが、近い将来日本でも公開されることを期待したい[#6]。

予告編はこちら。

引用URL:
[#1] https://a24films.com/films/the-farewell
[#2] https://www.theguardian.com/film/2019/jan/31/the-farewell-review-awkwafina-sundance
[#3] https://www.sundance.org/social-events/benefit-events/thefarewell
[#4] https://variety.com/2019/film/festivals/the-farewell-review-awkwafina-1203117966/
[#5] https://www.indiewire.com/2019/01/the-farewell-review-awkwafina-sundance-1202038325/
[#6] https://www.hollywoodreporter.com/news/awkwafina-drama-farewell-lands-at-a24-1179548

濱口ゆり子
レディースデイの水曜日は全力で定時退社を目指す会社員。映画はメジャー作品からアート系、サイレント映画まで広く浅く。旅先でその土地の映画館に行くことが好きです。自分はどのような角度から映画と関わってゆきたいのか日々模索中。


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