[650]ロン・ハワード監督作『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』におけるジョン・パウエルの音楽


2018年の『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』は、2016年の『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』に続く、シリーズ2作目のスピンオフ作品である。ハン・ソロのテーマ曲をジョン・ウィリアムズが担当し、残りの音楽をジョン・パウエルが手掛ける方向で作曲が進められた。ジョン・パウエルは、『ボーン』シリーズや『ヒックとドラゴン』シリーズなどの音楽の作曲家である。

「ジョン・ウィリアムズの参加は、仕事を引き受ける上で、非常に大きな決め手となりました。非常に敬意を持っています。たぶん、畏怖という言葉の方が適切です。このシリーズにおける音楽の歴史にとって、ヨーダに相当するフィルムスコアリングであり、その一部となることには、大きな動機がありました。そして、決して逃すことができない機会であったのです。ジョンのプロセスを覗き込むことを許されるという現実に起こった経験だったのでしょうか?これほどの素晴らしい才能はほかに思いつきません」とパウエルは話す。

『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』は、本シリーズへと付随する物語であるために、取り掛かりにおいて少し方向性を変えている。その際に、プロデューサーのキャスリーン・ケネディ、作曲家のジョン・ウィリアムズ、監督を担当したフィル・ロードとクリス・ミラーによって、キュレートされたリストから選び出されていたことをパウエルは知った。ロードとミラー監督は、撮影の最中で降板となり、ロン・ハワード監督が後を引き継いだ。パウエルによれば、ウィリアムズがメインテーマ曲に携わり、残りのスコアのテンプレートを作曲することを知ってから、この仕事に同意した。「彼のテーマ曲を受け取ると、映画が求めているであろう音楽を作曲することができました。別のタイプの映画だったので、彼は心配することはなく、オリジナルへの敬意をあまり考えなくてよいと言いました。そして、自分がやりたいと思うことが、なすべき正しいことであると言ってくれました」とパウエルは述べる。チャレンジのひとつは、時代を超えた現在のスコアを取り入れることであったが、それは矛盾した課題であった。「ジョンは、ありのままに現代的であるならば、その音楽はどのようになるのかということに興味を持っていました。私は、あべこべの引用における『現代』であると言いました。彼のスタイルは古典にとって不朽であるからです。現代的にする上で危惧することとは、時代遅れになることです。1977年のジョン・ウィリアムズによるスコアを振り返ると、まったく時代遅れではないのです。しかし、(1970年代の)エレクトロニック・ロック・バンドを振り返り、今その音楽を聴くと、本当に時代遅れです。ジョンのスコアは、77年、88年、98年であっても時代遅れにはなっていません」と、さらにパウエルは説明する。パウエルによれば、彼の目標とは、「その世界観に合わせて、台無しにせず、映画が必要とするものを作曲することを恐れないこと」であった。

パウエルは、2017年の夏にサインをし、2017年の秋公開の映画Ferdinandを終わらせた後に、最初の数曲のテーマを書き始めた。ウィリアムズの参加は、『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』と『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』のスコアを終えた後の2017年12月後半からであった。ウィリアムズは、若きハン・ソロのテーマ曲に取り組んだ。

ウィリアムズは、いくつかの短い楽曲を書き上げた。“Adventure of Han”は、2つのテーマ曲で構成されている。パウエルは、それらを、“Han hero theme”と“Han searching theme”と呼ぶ。パウエルは、『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』の2時間30分のスコアを書いたが、その至る所にそれらのテーマ曲を取り入れた。

「ジョンが、(2018年1月にロサンゼルスで録音された)デモを完成させると、それらをどのようにするのかを考え始めました。しかし、同様に多くのほかの素材も必要でした」とパウエルは話した。

パウエルの音楽には、ハン(オールデン・エアエンライク)とキーラ(エミリア・クラーク)のロマンティックなテーマ曲、ハンとチューバッカの友情のテーマ曲、無法者のベケット(ウディ・ハレルソン)と彼のギャングのテーマ曲、ギャングの計画を狂わせる略奪者たちのための合唱曲、ランド・カルリジアン(ドナルド・グローヴァー)の連れであるドロイドのL3のテーマ曲、そして、ほかの小さなモチーフの数々である。

<“Corellia Chase”における弦楽器と木管楽器のリハーサルの様子>

新たなウィリアムズのテーマ曲と多様なパウエルのテーマ曲を拡げるのは、ミレニアム・ファルコンと関連付けられるウィリアムズの“Rebel Fanfare”を含む、最初の映画『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』からの様々な音楽である。

「すべての楽曲には理由があり、そこに存在しています。ハンを知るときに、ハンの運命(destiny)への言及があります。彼が将来、向かっていく場所です。だから、私は、その箇所とミレニアム・ファルコンのアイデアに、オープニングタイトルの音楽を使いました。しかし、同時に、私は存在していなかった楽曲を書かなければなりませんでした。チューバッカと花開くことが分かっている本当の友情のための楽曲です。なぜ、彼の生涯において(友情が)続いていくのか、彼が頼りにしているチューバッカとは誰であるのかについての楽曲です。彼が将来、レイアと恋に落ちることは知っています。しかし、この映画におけるこの愛情への興味とは何であるのか?本当の愛情であるのか、幻想であるのか?この自由というアイデアを留めておかなければなりません。彼は、いつも自由であろうとしています。ほかの映画において、それは反乱軍のアイデアと合っています。だから、多くの平行面があります。しかし、物事は異なります。ジョンの『スター・ウォーズ』の規範への敬意となっていることを望んでいます。ジョンは、その一部であり、自ずとDNAを得るのです。しかし、私には自分の能力というものがあります。自分の能力のひとつに、ほかの人の音楽をあまりうまく扱えないということがあります。試みたとしても、私は必ずしも正確に同じようにすることができないのです。」

パウエルは、オリジナルの『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』のテーマ曲を、ハンへの“destiny”のテーマ曲として使用した。さらに、『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』と『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』からアクション音楽も聞くことができる。

<“L3 & Millennium Falcon”におけるレコーディングセッションの様子>

「私は、どのようにジョンがDNAとなる音楽を書いたのかを常に考えていようと心掛けました。それは、メロディの流れであり、ポリフォニーです。そして、もちろん、驚くほど面白くオーケストラのリズムを使っています」とパウエルは話した。彼は、ウィリアムズを訪ねたこと、電話を通してウィリアムズと話し合ったことを思い起こした。「彼は驚くほどに寛大で、私のことをとても信用してくれました」と彼は語った。

パウエルは、3月にロンドンのアビー・ロード・スタジオにおいて、98人編成のオーケストラを用いてスコアをレコーディングした。しかし、ブルガリアのソフィアに少しだけ立ち寄った。36人のブルガリア人の女性合唱団による声をレコーディングしたのである。彼女らは、略奪者たちの物語のために、「攻撃的で異国風のサウンド」を提示してくれたのだとパウエルは述べた。「別の文化がそのシーンにはあると思えるのです」と彼は続けた。

パウエルは、歌を書くことを楽しんだ。彼は、それを“Chicken in a Pot”と呼んでいる。ハン、キーラ、ドライデン・ヴォス(ポール・ベタニー)のシーンのためのバックグラウンドのラウンジ・ミュージックである。パウエルは、ハット語に翻訳された歌詞を書いた。オリジナルの『スター・ウォーズ』3部作のために、サウンドデザイナーのベン・バートによって考案された奇妙な言語である。

パウエルは、ロン・ハワード監督のことを「作曲家にとって夢の監督」と述べる。「彼は、それそれのシーンがどのようであるのかについて、熱心で、明確で、とても率直で表現豊かです。全面的に、実験をすることを許容してくれました。そして、自分たちのスタイルとは何か、どのようにテーマ曲が必要であるのかをゆっくりと考えました」と話した。

「それは、啓発的で成熟した経験です」とパウエルは笑いながら付け加えた。「この経験は、どのようにジョン・ウィリアムズがエレガントに音楽を書いたのかを教えてくれたのです。別のバージョンで彼のテーマ曲を使うことが本当に大好きだったのです。それらの音楽は、とても美しく作曲されていたからです。それは自分にとって修士号を取得しているかのようでした。」

<ブルガリアのソフィアからの合唱団によるコーラス>

参考URL:

https://www.billboard.com/articles/news/8457839/star-wars-solo-music

https://variety.com/2018/music/news/solo-a-star-wars-story-john-powell-score-john-williams-1202821271/

https://www.billboard.com/articles/news/movies/8456721/solo-star-wars-story-composer-john-powell-interview

https://variety.com/2017/film/news/john-williams-star-wars-composer-han-solo-movie-theme-1202650282/

https://www.facebook.com/johnpowellmusic/posts/2046540545569237

https://www.facebook.com/johnpowellmusic/videos/2055945587962066/

https://www.facebook.com/johnpowellmusic/videos/2059566397599985/

https://www.facebook.com/johnpowellmusic/videos/vb.1689850014571627/2073611619528796/?type=2&theater

宍戸明彦
World News部門担当。IndieKyoto暫定支部長。
同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科博士課程(前期課程)。現在、京都から映画を広げるべく、IndieKyoto暫定支部長として活動中。日々、映画音楽を聴きつつ、作品へ思いを寄せる。


コメントを残す