“実話”に基づいて着想を得た映画が最近の映画界を賑わせている。新宿シネマカリテの開館一周年記念として開催されている「カリコレ2014」(*1)では、2003年にイギリスで実際に起こったインターネット犯罪を描いた『U Want Me 2 Kill Him?(原題)』が封切りとなり、『ユージュアル・サスペクツ』のブライアン・シンガーが製作、『悪魔の棲む家』のアンドリュー・ダグラスが監督を務めたことでも注目を集めたが、描いた衝撃的な実話も話題となった。また先日『プラトーン』、『JFK』等で社会派作品に定評のあるオリヴァー・ストーン監督が、米政府による個人情報収集の実態を暴露したことで世界的に有名となった元CIA職員、エドワード・スノーデンをテーマとした映画製作を発表(*2)。自身の戦争体験を生かしながらアメリカの実情に鋭くメスを入れる、オリヴァー・ストーン監督ならではの描写に期待が高まっている。

今日は実話をテーマにした映画にスポットを当てたい。ロサンゼルスにあるいわくつきスポット、「セシル・ホテル」。このホテルで実際に起きた女子大生の変死事件を、『ドライヴ』、『オンリー・ゴッド』で世に名を知らしめたデンマークの鬼才ニコラス・ウィンディング・レフン監督がホラー作品『ザ・ブリンギング(原題)』として映画化する可能性が明らかになった(*3)。

2013年2月20日、セシル・ホテルの屋上にある給水塔貯水タンクから、2月頭から行方不明となっていたカナダ名門校の学生Elisa Lam(エリサ・ラム)さんの遺体が発見された。発見された時には既に死後3週間とみられ、遺体は腐乱しきって水面に浮上。屋上へのドアは警報装置付きで施錠され、給水塔は密閉されている状態のため、一体なぜ彼女がそのような経緯で死に至っているのか、いまだ死因は特定できないままにいる。

youtubeで公開され600万回を超え再生されたこの映像には、死亡数時間前にきわめて不可思議な行動をとるラムさんの行動が記録されている。セシル・ホテルのエレベーター内を撮影したこの監視カメラの映像では、ラムさんがなぜか扉の閉まらないエレベーターの中で、全ての階のボタンを押したり、何者かから身を隠すような動きをしたり、誰かを招き入れるような手の動きをしたり…と、一人不可解な行動を取る姿が映し出されている。セシル・ホテルは古くから自殺や凶悪殺人事件の発生場所として知られており(*4)、ゆえに心霊スポットとしても名を馳せている。ラムさんの死因は結局「事故」として処理されたが、真相はいまだ分かっていない。

『ザ・ブリンギング』はこの奇怪な事件をヒントに、ホテルで起きた宿泊者の死について捜査していた人物が、奇怪な現象に見舞われるというストーリーを予定。今年2月、米ソニー・ピクチャーズが激しい争奪戦の末にブランドン&フィリップ・マーフィー執筆の脚本を獲得した。以前からホラー映画製作に興味のあったレフン監督側からソニー・ピクチャーズに製作意欲をアプローチしたとのことである。

ラムさんのきわめて不可解な行動と死因を、一部は精神的疾患、もしくはアルコールやドラッグによるものだと推測する一方で、映像からうかがえる明らかに“一人ではない”、“何かが見えている”様子から、心霊現象によるものと見なす者もいる(*5)。このエレベーターでの様子から貯水タンクに至るまでの彼女の行動も、彼女の身に実際に起こったことも我々は知る余地もないが、レフン監督が作品として映画化することにより確実に新しいインサイトが生まれるであろう。

(記事・内山ありさ)

*1 カリコレ2014/カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2014
http://qualite.musashino-k.jp/quali-colle/

*2 シネマトゥデイ
http://www.cinematoday.jp/page/N0063468

*3 livedoor NEWS
http://news.livedoor.com/article/detail/8842644/

*4 CNN.co.jp
http://www.cnn.co.jp/fringe/35028618.html

*5 Cinema Blend.com
http://www.cinemablend.com/new/Nicolas-Winding-Refn-Might-Direct-Elisa-Lam-Horor-Movie-Bringing-43037.html


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