[517]Amazonが見据える映画産業の展望


Amazon Studiosが単独での映画配給に乗り出しました。
初の自主配給作品は、ウディ・アレン監督の新作“Wonder Wheel”。アカデミー賞レースを視野に入れた本年12月1日公開の予定です。

Amazonが映画を配給するのは、もちろんこれが初めてのことではありません。映像部門がオリジナル作品の制作を開始した2015年以来、他の配給会社と組んで20本以上の映画を配給してきました。ロードサイド・アトラクションズと共同配給した『マンチェスター・バイ・ザ・シー』はアカデミー賞で主演男優賞と脚本賞を獲得し、Cohen Media Groupと共に配給した『セールスマン』は同賞外国語映画賞を受賞するなど、話題作にも多数関わっています。

単独配給に舵を切ったAmazonの狙いはどこにあるのでしょうか。

『ダンケルク』が現在、快進撃を続けているクリストファー・ノーラン監督は、配信サービス会社Netflixを痛烈に批判しました。「Netflixは映画を共同配給しようといったような考えは毛頭持ち合わせていないようだ。劇場公開は不要、配信サービスだけでいいという方針は思慮が浅いとしか言いようがない。これは明らかに映画産業にとってマイナスだ。彼らは独自路線を貫き、自分に言わせれば、そのことでとてつもなく大きなビジネスチャンスを逃している。彼らがどんなに素晴らしい作品や企画を見つけて投資をしたところで、劇場で公開せずネットに囲い込んでいるのでは無意味だ。まったく理解できないね」。一方、Amazonに対しては、「Amazonは劇場公開の90日後に配信サービスを行う方式をとっており、これは完璧に有益なモデルだ。素晴らしいよ」と好意的な姿勢を示しています。

配信サービスをめぐる論争については、今年5月のカンヌ映画祭での出来事が記憶に新しいでしょう。映画祭初日の記者会見で、今年の審査委員長ペドロ・アルモドバル監督が、映画祭の主催者が打ち出した「来年からフランスの映画館で上映していない作品は審査の対象から外す」という方針を熱烈に支持したのです。「新しいテクノロジーを否定するつもりはない。だが、私は生きている間は、その『新世代』たちが気づいていないこと、『大画面こそが観る者を夢中にさせる』ということを示し続けるつもりだ」。さらに続けて「劇場で観られない映画に、賞をあげたくない」といった爆弾発言をして物議を醸し、同映画祭で高い評価を得たネット配信限定の『オクジャ』のボン・ジュノ監督に謝罪するといった騒動もありました。

映画はスクリーンで観るものとして育ってきた当世代の監督たちにとって、スマホのような小さな画面でですら自分たちの作品が観賞できてしまうことには、感覚として受け入れがたいものがあるかもしれません。

Amazon Studiosは、今後も自主配給作品を広げていく方針を打ち出しています。サービス加入者への配信に専念するNetflixとは対照的です。今回、独自配給に踏み出したことで、Amazonには資金調達から制作、劇場公開までといった、伝統的な映画スタジオと同じサービスを提供できる体制が整うこととなり、他の配信サービス会社との違いが明確になりました。この新たなビジネスモデルが吉と出るか凶と出るか。いずれにしても、劇場での公開にこだわりを持つノーラン監督のような人たちにとっては、配給会社を決める際の選択肢の一つになることは間違いないでしょう。Amazon Studiosがこれから配給する予定の作品のリストには、トッド・ヘインズ監督の“Wonderstruck”や、『サスペリア』のリメイクが含まれており、さらには幻の大作、テリー・ギリアム監督の『ドンキホーテを殺した男』の名前も見えます。これらがAmazon Studiosの単独配給作品になる可能性は十分あります。

ウディ・アレン監督の“Wonder Wheel”は、今年55周年を迎えるニューヨーク映画祭のクロージングを飾ることが決定しています。映画の舞台は50年代のニューヨーク。コニーアイランドにある遊園地で回転木馬の技師として働く中年男(ジェームズ・ベルーシ)とその妻(ケイト・ウィンスレット)のもとに戻ってきた、疎遠になっていた娘(ジュノー・テンプル)に、若いイケメンのライフガード(ジャスティン・ティンバーレイク)が絡んできて何かが起こる、といった、いかにもウディ・アレン監督らしいニュアンスを感じさせる内容の模様です。この作品でウディ・アレン監督は、『カフェソサエティ』で撮影監督を務めたヴィットリオ・ストラーロと再タッグを組んでいます。『地獄の黙示録』、『レッズ』、『ラストエンペラー』で三度アカデミー撮影賞に輝いた伝説の撮影監督が見せる光と影、深い色調が美しい映像と、ウディ・アレン監督の軽妙で洒脱な世界のコラボレーション、再び。胸ときめく冬となりそうです。

《参照サイトURL》
http://variety.com/2017/film/markets-festivals/amazon-self-distribution-woody-allen-wonder-wheel-1202508413/

https://www.theverge.com/2017/7/27/16050568/amazon-distribution-movies-woody-allen-wonder-wheel

https://www.theverge.com/2017/7/19/15999182/christopher-nolan-netflix-film-strategy-interview

http://www.indiewire.com/2017/07/christopher-nolan-interview-dunkirk-netflix-1201857101/

http://www.bbc.com/news/entertainment-arts-39954563

《画像使用サイトURL》
http://moviemarker.co.uk/woody-allens-wonder-wheel-set-december-release/

小島ともみ
80%ぐらいが映画で、10%はミステリ小説、あとの10%はUKロックでできています。ホラー・スプラッター・スラッシャー映画大好きですが、お化け屋敷は入れません。


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