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今年発表され各国の映画祭受賞・ノミネートを果たした最新作『ラビング 愛という名前のふたり』をはじめ『MUD マッド』や『ミッドナイトスペシャル』など様々なストーリーを語り、インディ映画界で活躍するジェフ・ニコルズ。彼はアーカンソー州に新たなシネフィル団体を設立しようとしている。リチャード・リンクレイター監督の創設したオースティン映画批評家協会(Austin Film Society)の映画界への影響と活動にインスパイアされた彼は自分の故郷アーカンソー州をそのスタート地点に選んだ「この土地は大きな映画界とまったくと言っていいほど繋がりがないんだ」

最終的に彼は実際に「映画を作っている人」たちと出会ったことでそれが現実にある世界だと知ることができた。そして現在監督となった自分の道を使い故郷に夢が現実になると言う感覚を持ち込もうとしている。「人々がみんなで集まって知らない監督たちの作品を観たり、映画制作者たちをこの土地に呼んで彼らの映画に関する会話や姿を直接観客たちにみてもらえるような場を作りたいんだ」

彼がまず選んだの場所はアーカンソー州中心に位置する都市リトルロック。地域主催の映画祭もなければ駆け出し監督たちの作品を上映する場もないその場所ついて「多くの映画要素をカバーする基盤のようなものをつくりたい」と言う。また、ニコルズはテキサス州オースティンのAustin Film Societyが提供する映画制作ファンドからも大きな影響を受けている。このプログラムは映画祭への出品作品制作にかかる全ての資金をサポートとするものとなっていて彼自身、デビュー作『Shotgun Stories』や『テイク・シェルター』の制作の際にこの助成を受けている。

アーカンソー州には今年で3年目に入るベントンビル映画祭がある。だが監督が目指す映画祭はこれとは違っているようだ。過去にシャンペーン・イリノイ州で主催された映画批評家ロジャー・イーバートによるEbertfestに影響された彼はこう述べる。「週末にロジャーが選出した作品をひとつの映画館で連続上映する。集まって、上映して監督たちと話して一緒に昼食を食べてまた違う作品を観て一緒にチーズバーガーを食べてそして深夜上映に行く。映画について人が集まって話す感じだった。ACS(Arkansans Cinema Society)にとっては一年を通して開催できるいいアプローチだと思ったんだ」

ACSは映画関連イベント、パネルディスカッション、試写会などを年間通して主催していくと言う。今年の8月24-26日には様々な監督たちに彼らをインスパイアした作品を上映してもらう予定だ。「それらの作品について話して人々に映画をつくると言うことはどう言うことなのか、どこからそのインスピレーションが来るのか。それは魔法でもなんでもなくて初期に行われるたくさんの思考プロセスがあるということをもっと知ってもらいたい」

ニコルズ自身映画制作に関連した3つのセミナーを開催予定で2018年にはリトルロックで初の映画祭を主催予定だ。リトルロックにある映画館をリフォームし、それを足がかりにアメリカ全土の修復が必要な映画館が助成金を集めるためのプログラムを配布していきたいと考えている。「『ムーンライト』がアフリカ系アメリカ人の集中するアーカンソー州の南東部で観られないなんて!これらの映画たちを全土に広めていくんだ!」

映画は様々な世界への窓になり得ながらも、その映画自体が届く人たちに届かなければならない。ジェフ・ニコルズは監督、そして映画を愛する一員として映画に多くの想いや期待を込め、そして何よりも映画というものに宿る可能性を一番に信じているのだろう。

参考・翻訳リンク
‘Loving’ Director Jeff Nichols Launches Arkansas Cinema Society, With a Festival in 2018 — Exclusive

mugiho
好きな場所で好きなことを書く、南極に近い国で料理を学び始めた二十歳。日々好奇心を糧に生きている。映画・読むこと書くこと・音楽と共に在り続けること、それは自由のある世界だと思います。


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