先月27日に開催された第89回アカデミー賞授賞式にて外国語映画賞を受賞したアスガル・ファルハディが火曜日にドーハのDFI(Doha Film Institute’s Qumra)にてスカイプを通した映画の講義を行った。講義のあとに設けられた少数の記者のための質疑応答にて、二度目のアカデミー賞受賞について、ペネロペ・クルズ、ハビエル・バルデムらを起用するスペインで撮影予定の次回作などについて語った。

      
 オスカー授賞式の欠席についてファルハディは「私は一度『別離』(2011)で受賞していているのですが、今回は前回とは少し事情が異なります。アマゾンが配給でもう公開されている映画なので宣伝をする必要が無く、アメリカに行く理由もあまりありませんでした。それでも元々は出席するつもりでしたが、(ムスリム)渡航禁止令がだされたので、出席せずオンラインで授賞式を観ようと決めました」。
 授賞式から間もないが、ファルハディの関心は早くも次回作に移っているようだ。次回作については「家族についてです。私が言えるのはそれだけですね」と、あまり語りたがらない監督だが、スペインの田舎のワイン生産業の家族を巡る心理スリラーと言われている。
 主演を務めるペネロペ・クルズ、ハビエル・バルデムら世界的スターとも既に良い関係を築いているそうだ。「彼らとはいい友達だしリラックスした関係です。我々は脚本に対してとても情熱を持っているので、この企画は見通し良好です」。

 現在監督はマドリードで次回作の脚本を執筆中で、脚本はまずペルシア語で書かれ、スペイン語に翻訳されるそうだ。「スペイン語は話せないが、撮影の時までには音には慣れておきたいね」と、ファルハディ監督。映画は今夏スペインで撮影され、来年の公開を予定されている。
 また意外なことに、ファルハディはコメディへの意欲を見せた。「コメディを通して人間のリアリティに向き合う映画を作ることは私の一番大きい夢の一つです。イランに戻ってすぐにそれができるといいのですが」。
 まだ44歳と若くしてベルイマン、フェリーニ、黒澤明など伝説的な映画監督が成し遂げたアカデミー外国語映画賞二回受賞を果たしてしまったファルハディだが、シリアスなヒューマンドラマ作家という側面は彼の才能の一部なのか?新作とともに彼のコメディにも期待だ。

[参考URL]

http://www.khabaronline.ir/detail/644221/culture/cinema

http://www.dohafilminstitute.com/videos/spotlight/asghar-farhadi-master-screening-about-elly#comments

http://variety.com/2017/film/global/asghar-farhadi-breaks-silence-on-oscar-victory-talks-new-movie-hes-making-in-spain-1202003501/#respond

 

 

奥村耕平
WorldNews部門。大阪の大学生。服と映画が好きです。アッバス・キアロスタミを中心にイランの映画について研究しながら東京の映画視聴環境に日々嫉妬中…。


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