[473]『Logan／ローガン』ウルヴァリン史上初のR指定はヒュー・ジャックマンへの花道となるか？

鋭い爪を持つ異形のヒーロー“ウルヴァリン”。マーベル・コミック刊行のヒーロー漫画『X-MEN』に登場するキャラクターの中でも絶大の人気を誇り、X-MENシリーズの映画への出演はもちろん、彼を主役にしたスピンオフ作品がこれまでに２本作られている。17年間の長きにわたり、このウルヴァリンを演じてきたのは、英国人俳優のヒュー・ジャックマンだ。実はこのウルヴァリン役は、ヒュー・ジャックマンにとって初めてのアメリカ映画であった。

３月３日の全米公開の始まった『Logan』はスピンオフとしては３本目となり、ヒュー・ジャックマンがウルヴァリンを演じる最後の作品となる。公開前日のプレミア上映では興収950万ドル（10億円）を叩き出した。配給のフォックスは、最終的な数字として北米で7,000万ドル（80億円）、海外市場では１億ドル（114億円）を見込んでいるという(1)。

ある日の「朝食」（Instagramより）

驚くべきは、ヒュー・ジャックマンが初登場の『X-MEN（2000年）』から最新作の『Logan（2017年）』に至るまで、筋骨隆々の完璧ウルヴァリンボディを維持し続けていることだ。彼は今年49歳。そのダイエットとトレーニングに関しては、フィットネス界からも熱い注目を浴び、彼自身しばしばその方法を語っている。１日のうち８時間の間だけ食べ、残り16時間は一切何も口にしないという「16:8メソッド」は南カリフォルニア大学で検証され、被験者は10日間で「空腹を感じることなく」２％の体脂肪率減少に成功、その有効性が認められている(2)。

NY一のイタリアンシェフ、マリオ・バターリからのサプライズ

映画が公開される約１週間前の２月24日にジミー・ファロンがホストを務める米トーク番組「ザ・トゥナイト・ショー」に出演したヒュー・ジャックマンは、「ウルヴァリンの肉体を破壊するために」と大皿に山盛りされたパスタを食べるパフォーマンスを見せる一方で(3)、

“Happy Break The Wolverine Diet!”（Instagramより）

スティーヴン・コルベア司会の深夜番組「ザ・レイト・ショー」では、「絶対に真似しないように」と視聴者に注意を促しつつ、ウルヴァリンの肉体を仕上げる過激な方法について明かしている。「『脱水』だよ。トレーニングはTシャツなしのシーンを撮影する日から逆算して３カ月前に始める。撮影の36時間前まで１日10リットルの水を飲み、あとは飲まない。始終、小便をすることになるけれども、10ポンド（4.5キロ）は痩せるよ」(4)。

好スタートを切った『Logan』だが、「全編にわたる非常に残虐な暴力とセリフ、短いヌードシーン」のためウルヴァリンシリーズでは初のR指定を受けた。R指定映画は全年齢向け映画に比べて興収が伸びにくい傾向にあり、ヒュー・ジャックマンはみずからギャラの減額を申し出たともいわれている(5)。

ウルヴァリン映画で唯一、２作品のメガホンを取った監督ジェームズ・マンゴールドは、なぜヒュー・ジャックマン最後のウルヴァリンをR指定映画にしたのだろうか？

「ヒューと私、そしてこの映画を一緒につくりあげてきた仲間たちにとっても、目標は何かを試してみることでした。これまでのストーリーの方法論や物語の切り口を見直す。もっと自然主義的に、視覚効果や特殊効果を減らしてアナログ的な部分を増やし、キャラクターは絞る。我々の知る、世界が破壊されるような叙事詩のたぐいを想定した映画をつくらないということです」。
「R指定を望んだ主な理由の１つは、視聴者がローガン（ウルヴァリン）に求める行動を可能にできるからだけではありませんでした。この映画のように、爪を持つキャラクターの暴力にさらされるのと同じくらい、私は暴力の余波がもたらす重みと喪失を感じています。そのことこそが、私が大人向けの、より洗練された映画をつくる上で最も関心のあった点です」。
「本作は、シーンをカットしたからといってPG映画にできるわけではありません。映画の雰囲気そのものが大人向けなのです。ある特定の場面や、暴力や際どい言葉が使われているせいではない。それ以上のものです」(6)。