2月20日は合衆国のプレジデント・デイでした。これは歴代大統領をたたえる祝日です。今回のWorld Newsはアメリカ合衆国の大統領についての記事です。

 

昨年の大統領選の直前の10月30日に、The Sydney Morning Heraldは「Presidents in the movies: What Hollywood’s portrayals show about America」という記事で映画と大統領の関係を紹介していました。以下抜粋になります。

 

 政治と映画は互いに利用し利用される関係にあります。しかし、ハリウッドが見せる大統領に対する敬意はほとんど偶像崇拝に近いものがあります。合衆国大統領について描かれた映画は何百とあり、実際、すべての大統領は少なくとも一つ以上の映画やTVで描かれています。

アメリカ以外の国で、これほどにまで自国のリーダーを理想化して描くことはほかの国では珍しいことです。映画「リンカーン」(2012)でダニエル・デイ・ルイス演じるリンカーンは、奴隷解放のための法案を可決のための賛同者集めに難航する中、こう言い放ちます。「私は合衆国大統領で、絶大な権力を持っているのだ。私のために票を集めるのだ!」建国の父たちが国の最高権力者を何と呼ぶのかを話し合っていた時、(2代大統領の)ジョン・アダムスは「Majesty」という言葉を使うことを望み、そして実際、多くの大統領が映画の中で「アメリカの王」のように描かれるようになりました。そういった「威厳ある大統領像」は映画におけるオフィスの場面でアンタッチャブルな存在として描かれてきました。しかし、最近になってオバマ夫妻の若いころの恋愛を描いた映画「Southside with you」やオバマの弁護士時代を描いた映画「Barry」などそのイメージは変わりつつあります。

 

映画と合衆国大統領との密接な関係の裏には何があるのでしょうか。そこには、大統領を特別の存在として尊敬したいと欲する19世紀からの願望が多分に含まれているでしょう。歴史の浅かった国家はヒーローを求め、そして映画という新しい芸術は大統領たちをヒーローにすることに一役買ったのでした。また偉大な大統領の物語は、しばしば偉大な監督を魅了するため、実在の大統領をモデルにした映画が過度に仰々しい場合でも素晴らしい映画が生まることがあります。例えばジョン・フォード監督の「若き日のリンカン」(1939)とスピルバーグ監督の「リンカーン」(2012)は兄弟の関係にあると言えます。フォードもスピルバーグも「威厳ある大統領像」のようにその時代の最高の監督でした。

 

フィクションの大統領像はアメリカ人が自分たちのリーダーに対いてどのように考えているかを映します。一つの大統領の理想像は外見的な魅力です。例えばジョン・F・ケネディのスマートな外見や、多くの大統領に見られる広いおでこなどです。映画 「アメリカン・プレジデント」では、マイケル・ダグラスが架空の大統領アンドリュー・シェパード役を演じました。独身で上品さと偉大さを兼ね備えた人物像はハリウッドが好む大統領像でした。広い額は大統領職に就くのに必要不可欠というわけではないですが、確かに大統領になるのに有利になります。

もう一つの大統領像は 「目撃」のジーン・ハックマンや 「マーズ・アタック!」のジャック・ニコルソンのように、気が狂った悪人で、危険な人物であることです。あるいは 「博士の異常な愛情」のピーター・セラーズのように弱い人物として描かれたり「ニューヨーク1997」のドナルド・プレザンスのように臆病な人物として描かれたりします。

そして、時々ごくまれに普通の人間として大統領が描写されている映画に我々は出会います。リー・ダニエル監督の「大統領の執事の涙」ではフォレスト・ワイテカーが8人の大統領に仕えた黒人執事のセシルを演じますが、そこでは大統領を理想的に描くというハリウッドの傾向はあまり見受けられませんでした。最も顕著なのはリーブ・シュレイバー演じるリンドン・ジョンソン大統領がホワイトハウスのトイレで便秘で苦しみながら、「セシル、プルーンジュースをくれ」と開けっ放しにしたドアから呼びかけるシーンです。そこではセシルがプルーンジュースを注ぐと同時に、トイレの前に立つ側近との間で大統領の業務が進んでいくのでした。

 

ちなみに、歴代大統領で最も映画に登場した大統領はリンカーンだそうです。(日付は少々古いですが)2012年にStateの記者三人が調べたところそういった結果になったようです。彼らは歴史上の実在の大統領について描いた映画をIMDb(インターネットムービーデータベース)で調べ、ユニークな結果を記事にしていました。調査にあたって設けられたルールは以下の通りです。

・レンタル専用映画、アニメーション映画、短編なども含むが、テレビ映画は含まない

・必ずしも「大統領」という役職でなくともよい。

(例えば、グラント大統領はしばしば南北戦争の将軍として映画に登場するが、そうした場合もカウントする)

・大統領がみずから本人役を演じている映画はカウントしない。あくまで役者が演じていることが必要

 

結果的には130の映画に登場したリンカーンが他の大統領に大きく差をつけての一位でした。2番目に登場が多かったワシントンは70本だったのでほぼ二倍近い数になります。その一方でジョン・タイラー、ジェイムズ・ブキャナン、ウォレン・ハーディングの三人の大統領は一度も映画で描かれることはありませんでした。

参考URL

http://www.smh.com.au/entertainment/movies/all-the-presidents-films-what-the-depictions-of-us-leaders-show-us-20161024-gs98w5.html

http://www.slate.com/blogs/browbeat/2012/11/08/presidents_in_movies_which_american_president_appears_in_the_most_films.html

 

石黒優希
96年京都生まれ映画育ち。字面で女の子と間違われることが多いですが男です。そして、大阪大学でロシア語を専攻してますが、ロシア映画は詳しくありません。(これから観ます)影響を受けた映画は「アメリ」「めぐりあう時間たち」「桐島、部活~~」の3つです。


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