[462] これからのSF映画:ドゥニ・ヴィルヌーヴの描く人間たち



アカデミー賞ノミネートも果たした新世代SF映画『メッセージ』エイリアンとのコンタクトというSF映画でありながらエイミー・アダムズ演じる言語学者ルイーズの人間的な部分を主要軸にした今作は従来のハリウッドやSFのジャンルを超えた新しい環境を確立したとも言える。記憶や言語、時間の概念に深く踏み込んでいく哲学的要素をも含み人間に徹した傑作である。

未来という時間を探索することによって人間の犯し得る間違い、可能性、世界を垣間見、そしてそれらに対するいまの自分たちの世界と向き合う。はっきりとした定義こそないもののSFというジャンルは常に私たちの現状に真っ向から挑んできたのではないだろうか。

今作の監督ドゥニ・ヴィルヌーヴは『プリズナーズ』、『複製された男』、『ボーダーライン』など人間の内面的描写において確実に経験を積んできた人物である。カナダのフランス語圏ケベック出身の彼は英語の作品デビューは割と最近であり映画を撮り始めた当初はフランス語で活動していた。2010年監督『灼熱の魂』はアカデミー賞外国語部門にカナダ代表でノミネートされている。*1

『メッセージ』でも彼の人間的部分へのフォーカスという特徴は脚本から撮影までいたるところにあらわれている。今作の撮影監督を探す際に、まず彼は設定した条件は「SF映画未経験」といいうものだった。ジャンル外のものを取り入れていくことでジャンルを超える作品が生まれたのにもうなずけるだろう。選ばれたのは人間そのものを撮った作品たち『グローリー/明日への行進』や『アメリカン・ドリーマー 理想の代償』の撮影監督を務めたブラッドフォード・ヤングだった。はデヴィッド・ロウリー監督の『セインツ -約束の果て-』での撮影を観たことが大きなきっかけになったようだ。「彼の光の使い方に驚いたんだ。光を使って繊細で詩的な感覚を表現していた。造詣深い世界をつくりだせる人物が必要だった」と語っている。今作について「彼の技術によって今作の肝ともなるバンクスの娘のフラッシュバックのシーン、記憶と現実を行き来する独特の時間的概念の感覚というものを画面上で表現することを可能にしたのである」 *2


『メッセージ』の快挙に続き10月にはSF映画の金字塔と評されるリドリー・スコット監督『ブレード・ランナー』の続編『Blade Runner 2049』の公開が決まっている。

そして彼に再びSFに未来が託されることになった。先日、世界的ベストセラーSF小説『デューン』の監督に任命されたことが原作者の息子ブライアン・ハーバートによってツイッターで発表された。この小説は過去に映画化の構想が幾度も上がっている作品だがなかなか良い結果を残せていない。一度目は1973年にアレハンドロ・ホドロフスキー監督が200万ドルもの予算を試作に費やしたが映画化に至ることはなかった。(このエピソードはのちにドキュメンタリーとなり2013年に『ホドロフスキーのDUNE』として公開された)二度目は1984年デヴィッド・リンチによって映画化されたが興行収入や評価的な面からは失敗作のようだ。*3,4

『デューン』は1965年にフランク・ハーバートによって発表された作品で歴史上最も売れたSF小説と称されることもある。SF小説の権威であるヒューゴー賞とネビュラ賞共に受賞しテイル。全部で6シリーズの長編大作であり、今回映画化されるのは1シリーズ目の『デューン/砂の惑星』だ。近未来、恒星間航行が日常となった世界では皇帝に仕える貴族たちがそれぞれの惑星の統治を任されていた。その中で宇宙の希少物質を保持する唯一の惑星アラキスとその土地を治めるアトレイデス公爵の息子ポールを主人公に物語が展開されていく。惑星は砂の覆われた砂漠の惑星、ここの時点でスターウォーズ的な匂い(タトゥイーン)を持つこの物語を彼はどう映画化していくのだろうか。

*1 http://www.imdb.com/name/nm0898288/

*2 ‘Arrival’: How DGA Nominee Denis Villeneuve Shaped His Unique Oscar Contender

*3 Brian Herbert

*4 Denis Villeneuve Confirmed to Direct ‘Dune’ Adaptation For Legendary Pictures

mugiho
好きな場所で好きなことを書く、南極に近い国で料理を学び始めた二十歳。日々好奇心を糧に生きている。映画・読むこと書くこと・音楽と共に在り続けること、それは自由のある世界だと思います。


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