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女優のミラ・クニスは、今月2日、自身が経験したハリウッドのジェンダーバイアス*1について、A Plusにエッセイを寄せた。*2

“You’ll never work in this town again.”

あるプロデューサーは、映画のプロモーションのために雑誌でヌードになることを断るなら、「もう、ハリウッドで働くことはできない」とミラを脅した。

「私は自分が‘物’のように扱われている気がして、怒りを感じた。そして、私のキャリアではじめて、NOと言ったの。」

しかし、彼女のキャリアは終わらなかった。それどころか、映画は成功し、彼女はハリウッドの人気女優になった。

「プロデューサーが口にしたことは、職場で女性が性別による偏見に出会った時に感じる恐怖そのものだった。」

ミラは問いかける。

「多くの女性は、その恐怖に疑問をもたず、‘NO’ということで、‘いけすかない女’というレッテルを貼られ、立場が危うくなることを恐れてはいないだろうか…私たちは、現状を維持するために妥協をして、変化が訪れることを心の中で望んでいるだけではないだろうか。しかし、この変化が実現するには、私たちの友人、仲間、そして子供でさえも救うことができないほど、時間がかかるのです。」

事実、ある大学の調査によると、女性と男性の賃金格差がなくなるには、あと136年かかるといわれている。*3

ミラ自身も、ギャラが男性よりも低かったり、創造性を無視されたりしたことがあるという。

「この業界でやっていくために、男性社会のルールに従わなければならないと思っていた。でも、キャリアを重ねるうちに、それがばかばかしいことだとわかった。そして、自分がそのくだらないルールに従うことで、彼らの共犯となっていたことに気づいた。だから、私は自分のチームを作ることにしたんです。」

彼女は、偏見がなく、お互いを平等にパートナーと認め合える男性と女性のみのプロダクションを作った。そして、こうした重要な社会問題に光を当てたプロジェクトに取り組むため、ある有力なプロデューサーと契約した。しかしプロデューサーは、作品を売り込むためテレビ局に以下のようなメールを送ったという。

「ミラはハリウッドで最も重要なスターの1人であり、もうすぐアシュトンの妻となり、子供の母となる予定です!」

プロデューサーは、まるでアシュトンとのプライベート以外にミラの価値がないかのような発言をしたのだ。ミラはすぐに、このプロデューサーとの契約を解除した。確かに、これは小さな出来事に見えるかもしれない。しかし、女性が明けても暮れても対処しているのは、こうした女性の価値を下げる小さな攻撃だと、ミラは言う。

「こうした小さな性的偏見は、男性だけでなく女性にとっても、まったく認識されないことも多い。プロデューサーは、後から、これが偏見だとはまったく思っていなかったといってきた。彼が‘気楽な’コメントとして描写したものは、私の努力や能力を徐々にむしばんでいくもので、プロジェクトのパートナーとして許されなかった。」

こうした偏見は、子供の頃からさまざまな場面で自然にすりこまれ、知らないうちに私たちがもっているものだ。しかし、ミラは「妥協することはやめた」という。

「これから、偏見に出会ったら、私はそれを声に出して指摘する。もし私がそれをやめたら、さらに多くの女性が苦しむことになる。偏見をなくすことが何よりも大事だと気づけてよかった。仕事を失うことだって恐れない。そして、このことを声に出して語れる女性を一人でも増やすために、語ることができる私は幸運だと思う。」

おかしさに気づき、声に出すこと。変化を待つのではなく、行動を起こすこと。知らないうちにジェンダーバイアスに苦しんでいるのは、女性だけではないだろう。1日でも早くジェンダーバイアスをなくすためには、私たちひとりひとりの勇気が必要なのだ。

*1

ジェンダーバイアスとは、社会的・文化的に刷り込まれた性別による偏見。男女の役割について固定観念をもったり、性別によって評価や扱いが変わったりすること。

*2

A Plusは、世界にポジテイブな変化をもたらすこと、様々な人々をつなげることを目標に、ジャーナリスティックな視点から情報を発信するデジタルメディア。ミラのエッセイの原文はこちらから。

http://aplus.com/a/mila-kunis-sexism-gender-bias-workplace-producer?rel=homepage

*3

http://nymag.com/thecut/2016/09/only-136-more-years-until-women-earn-as-much-as-men.html

 

北島さつき World News&制作部。 大学卒業後、英国の大学院でFilm Studies修了。現在はアート系の映像作品に関わりながら、映画・映像の可能性を模索中。映画はロマン。


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