[424]ジェニ・オルソンの『The Royal Road』ー風景の映画、表現とプロセスについて


ジェニ・オルソン(1962-)は、LGBTに関する映画史家やキュレーターとしても知られる、サンフランシスコ在住のインディペントで活動する映画作家である。
彼女の最新作『The Royal Road』は、カリフォルニアの風景とともに過去のスペインによる統治、米墨戦争といった歴史や、レズビアンでもある作家個人の記憶を語ったドキュメンタリー映画である。昨年のサンダンス映画祭で上映され、ブレノスアイレス国際インディペント映画祭でスペシャル・メンションを授与されるなど好評を博した。

タイトルの”The Royal Road”とは、El Camino Realと呼ばれる、スペインの使節団をサンディエゴから北カリフォルニアのソノマまで運んだ950kmあまりの街道のことである。数百年の歴史のなかで開発のために破壊されながらも、今もなおカリフォルニアに存在している。
オルソンは1992年からカリフォルニアで生活しており、スペインの植民地であったという歴史が街の風景に色濃く影響していることを知り、本作の着想を得たという。*1

オルソンは『The Royal Road』について、風景と欲望、記憶と歴史についての映画だ、と述べている。*2
彼女の作品は、ゴールデンゲートブリッジにおける自殺について考察したドキュメンタリー『The joy of Life』(2005)など、しばしば街の中の風景を主役に据え、16mmフィルムで撮影された風景に画面には姿を現さない人物のナレーションが被さり展開される。『The Royal Road』でも同様の語り口がとられているが、このことについてオルソンは以下のように語っている。
「私が最初にこの語り口に惹かれたのはウィリアム・E・ジョーンズによる『Massillon』(1991)を観たときです。私は昔から、風景をある種の時間の静止したもののように感じる傾向がありました。世界を見るということが、目で風景を切り取り構成することのように感じられたのです。
風景についての映画を撮るということは、まるで映画のなかで人生を生きているかのようです。私にとって映画を作るということは同時に現実を調査していくことでもあり、この独特の語り口を試行錯誤している間は、我々の周囲の環境をつくりあげている平凡な日常を見直すということができるのです。(中略)16mmフィルムというフッテージは、私が作品で探求する歴史や記憶、現実や郷愁といったテーマに対して、一種の有機的な関係性があります。私は常にフィルムという素材自体のもつ、意味や感情を伝達する能力に驚かされています」*3
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オルソンは、LGBTに関連した映画専門のものとしては初めてとなる配信サイトWolfeOnDemandを興した人物の一人としても知られている。(このWolfeOnDemandは、1985年よりLGBTに関連した映画を紹介している配給会社Wolfeが母体となっている。)*4
また、本作の資金援助をクラウドファウンディングで募ったことから、インディペントの映画作家にとってのクラウドファウンディングや、動画のデジタル配信についてのアドバイスをインタビューで尋ねられている。
「クラウドファウンディングで調達した24,000ドルの資金がなければ、私は『The Royal Road』を完成させることができなかったと思います。ここ数年の間に本当に多くの映画作家たちがクラウドファウンディングについて語り、討論をしていますが、私のアドバイスは、プロジェクトを成功させるためには、あなた個人の時間と情熱を費やす覚悟をしなければならないということです。
クラウドファウンディングについて考えるとき、私はしばしば家や仕事を失くし、路上で物乞いをしている人々の姿が頭に浮かびます。私たちは屋根の下、コンピューターの前に座っているのです。しかし多くの進行形の社会的なニーズに対しての行政の無視と同様に、クラウドファウンディングという現象のすべては、公的機関が芸術に対して有意義なサポートを維持することを怠ったということの結果ではないでしょうか。
(中略)
映画を流通させるということは、映画を完成させるということと同じです。
自主制作の映画が紹介され、観客を期待するものとしてiTunesやAmazonといったオンライン上の媒体の存在があります。しかし、誰がどのようにしてより多くの予算がかけられ大きく取り上げられた映画が大多数並ぶなかから、その映画を選ぶのでしょうか。市場においては、配給会社を介するということが映画の知名度を高める一つの手段です。
若手の作家がもしも映画を配給してくれる伝手がない、アドバイスを得るような仲間もいないならば、できる限り早くIndependent Filmmaker Project(http://www.ifp.org)や、The Film Collaborative(http://www.thefilmcollaborative.org)などといった自主制作映画の世界に密接な組織と繋がりをもつべきです。そこには多くの情報と可能性があり、コミュニティーの一員であるということは非常に重要です。
作品をデジタル配信することにおいて覚えておかねばならないのは、伝統的な配給の全体像におけるデジタル・リリースの位置づけを把握するということです。」
しかしオルソンは最後にこのように述べている。
「本当のところ私の作品は、これらの映画とは違ったカテゴリーにあると思っています。映画を作っているとき、私は何よりもアーティストであって、それを幸せに思います。」*3
自身のアイデンティティや身近な風景といった私的な事柄から出発した表現が映画として完成し、観客を得ているということは、我々にとっても参考になるのではないだろうか。

『The Royal Road』は、先日DVDが発売されたほか、Amazon、WolfeOnDemandなどにて配信中。

参照
*1https://mubi.com/notebook/posts/landscape-and-memory-a-conversation-with-jenni-olson
*2http://www.imdb.com/title/tt3062620/?ref_=nm_flmg_dr_1
*3http://filmmakermagazine.com/99728-five-questions-about-essay-films-and-digital-distribution-for-the-royal-road-director-jenni-olson/#.V-HmR5FWBit
*4http://royalroadmovie.weebly.com/director-jenni-olson.html

『The Royal Road』予告編

吉田晴妃
現在大学生。英語と映画は勉強中。映画を観ているときの、未知の場所に行ったような感じが好きです。映画の保存に興味があります。


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