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今年度のニューヨーク映画祭において初めてドキュメンタリーがオープニング作品セレクションの一部として選ばれた。『The 13th』というタイトルの今作品はアメリカの憲法(Constitution of the United States of America)の第13条に関連付けられているもので、この条文には公式に奴隷制度を廃止することが記されている。(*1)昨年、日本でも公開された『グローリー/明日への行進』の監督として知られるエイヴィア・デュヴァーネが多様性の時代にありながらもなお収監される人種を圧倒的に黒人が占めるのはなぜか、その現状について様々なインタビューや映像を交えながら描くドキュメンタリーとなっている。

統計的データによるとアフリカ系アメリカ人はアメリカの人口を13%しか占めていないのにもかかわらず、実際に現在アメリカ全土において収監されている割合は40%にものぼる。(*2)いままで見て見ぬ振りされ続けていたアメリカにおけるアフリカ系アメリカ人たちの実情が近年注目されているが、これはあまりにも悲惨な事件をいくつも巡ってたどりついた場所だ。これからどこへ向かっていきたいのか、それはこれからの私たち自身の世界への意識にかかっているのだろう。

人種や性別における格差が顕著だからこそ、彼女はそこに注目されることを嫌う。—「多様性という言葉が嫌い。なぜかというとその言葉を示すとまるでそれが義務になってしまう。本当はみんながそこに向かって共に協力しあっていかないといけない目標のひとつなのに。」(*3)
しかし多様性をスタンダードにしていくためには、そのための土台作りをしていく必要がある。

39歳の時に長編デビューした『I Will Follow』が映画批評家ロジャー・イーバートから好評を得る前からエヴァの映画界との付き合いは長い。(*4)30代まで映画を撮ったことはなかったが自分で立ち上げた広告会社を通して様々な映画をこの世に広めてきた。配給や広報の仕事と二足わらじで週末に脚本を書き、短編から撮り始めた。その経験も生かしながら現在は監督業と同時に、アフリカ系アメリカ人や女性監督を中心としたマイノリティと称される人々たちの作品を配給する団体を運営している。(ARRAY

8月のあたまにはディズニー界では初めてのアフリカ系アメリカ人の女性監督としてマデレイン・レングルによる小説、『五次元世界の冒険』の映画化を指揮することが発表された。(*5)これからますます注目される彼女は、映画界のスタンダードをひっくり返していく改革者になっていくことだろう。

*1 https://www.theguardian.com/film/2016/jul/19/ava-duvernay-the-13th-documentary-new-york-film-festival

*2 http://www.prisonpolicy.org/reports/pie2016.html

*3 https://www.fastcompany.com/3053516/innovation-agents/selma-director-ava-duvernay-raises-her-hand-for-diversity-in-hollywood-in-

*4 http://www.rogerebert.com/reviews/i-will-follow-2011

*5 https://www.theguardian.com/film/2016/aug/04/ava-duvernay-woman-of-color-wrinkle-in-time-100-million-film

mugiho
好きな場所で好きなことを書く、南極に近い国で料理を学び始めた二十歳。日々好奇心を糧に生きている。映画・読むこと書くこと・音楽と共に在り続けること、それは自由のある世界だと思います。


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