アルゼンチン・デンマーク合作『Jauja(原題)』が、アルゼンチンのマルデルプラタ映画祭で先月29日プレミア上映され、アルゼンチン人のリサンドロ・アロンソ監督、主演俳優のヴィゴ・モーテンセンらが出席した(*1)。
『Jauja(原題)』は、デンマーク人の父と娘が、デンマークからアルゼンチンのパタゴニアに船旅をするという19世紀を舞台にした物語だ。旅の随行者と恋に落ち、消えてしまった娘を探す父親の不思議な旅を通して、愛と死を見つめる本作。第67回カンヌ国際映画祭ある視点部門でも国際映画批評家連盟賞を受賞し(*2)、39歳という若手リサンドロ・アロンソ監督はいまやカンヌお馴染みの顔となった。

ベネズエラ、アルゼンチン、デンマークで育ったためにスペイン語、デンマーク語が流暢なヴィゴ・モーテンセン。彼の達者なデンマーク語も見ものな本作だが、マルデルプラタ映画祭において、ヴィゴ・モーテンセンの語った映画業界の現状が的を得ていて辛辣だ。

『Jauja』について彼は「デンマークとアルゼンチンの共同制作なのに、国からの資金援助がない。それどころか、デンマークでは公開すら決まっていないんだよ。答えは単純で、作品にヒットの匂いがしないからだろう」、
続けて「デンマークに限ったことではなく、世界中でますます映画が撮りにくい流れになってきている。確実にヒットが保証されたものでなければ、出資もされないし公開もされない、誰だってリスクを犯したくないものだからね。もちろん今までもそうだったが、しかし今状況はもっと複雑になってきている」、
「リサンドロのように、自主映画を撮る人々はいつどこにだっている。『つらい、映画を撮るのは辞めよう』なんて彼らは一言も言わない。ただ撮るだけ」。
自主映画・低予算映画にも協力的なモーテンセンだが、ハリウッド式の映画製作を見下しているいうわけでもない彼は「莫大な予算があるからこそ危ない橋を渡りたくないのも分かるし、全く新しいことができないのも納得。だからいつも大作は分かりやすい設定や演出になるし、結果的にどれも既視感のある似たような作品になっているね」とコメント。
さらに、クリストファー・ノーランのSF大作『インターステラー』については「面白く観させてもらったが、ノーランは高予算でハイリスクな映画を撮る人物だとも思った。これはノーランに対する批判ではないよ、作品は非常に面白かったからね。だけど、誰だって予算があれば“もっとできたのに、もっとやれたのに…”と思うもの。リサンドロは本当に予算なしで『Jauja』を撮ったからね」

記事・内山ありさ(早稲田大学)

*1 Viggo Mortensen Talks About Taking Risks in Hollywood Filmmaking
http://www.hollywoodreporter.com/news/viggo-mortensen-talks-taking-risks-751984

*2 JAUJA -Festival de Cannes 2014
http://www.festival-cannes.fr/en/archives/ficheFilm/id/100001614/year/2014.html


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