[382]映画業界の「格差」


様々な場所で多様性とその受容が望まれている現代、映画業界もその例外ではない。しかし、長年続けてきた慣習から抜け出すことは簡単ではないようだ。

 ソニーピクチャーズとPGA(The Producers Guild of America、映画やテレビ番組などのプロデューサーによるプロデューサーへの支援を目的とする非営利団体)は、エンターテイメント業界に携わるプロデューサーのための会議「Produced by」カンファレンスを毎年主催している。今年は6月4日と5日にロサンゼルスで開催された。8年目を迎えるこの会議では、今年も著名な俳優や映画作家も参加して様々な問題について話し合いが行われた。その中でも特に注目を浴びたのが、業界の「多様性」についての議論だ。

 男性・女性、そしてすべての人種が同様の役職に就いている・・・という理想とは違い、映画業界での性差・人種間の格差は深刻なものとなっている。

 メディア・多様性研究の専門家であるDr. Stacy Smithが、2007年から2014年までに公開された映画のうち、上位700本の監督のプロファイルの結果を発表した。それによると、女性が監督した作品は全体の約4%であり、さらに、アフリカ系アメリカ人女性が監督した作品に絞ると、わずか3作品しかないというのだ。

このような人種とジェンダーの横断的な検証によると、人種的マイノリティーの女性は、人種的マイノリティーの男性に比べ、要職を占める割合が少ないのだ。この問題については、専門家からだけではなく、実際に業界で働く人たちからも声が上がった。アフリカ系アメリカ人の母とイラン系アメリカ人の父を持つ16歳の女優ヤラ・シャヒディはハリウッドでの人種格差について“ハリウッドには自分がロールモデルとしてみることができる人種背景をもった人がいません”と述べ、業界内での多様性の欠如が明らかであるとした。また、彼女はそのような環境で作られた作品を見ることの影響について“映画を見ることを通して子どもたちは幼少期からハリウッドにおける偏見の影響を受けている”と指摘した。彼女がまだ8歳だった兄とアクション映画を見ているときに兄が“もちろん黒人が最初に死ぬよ”と言ったことを振り返り、このような偏見が早い時期から子どもたちに浸透していることを強調した。

 2011年にアカデミー助演女優賞を受賞したオクタヴィア・スペンサーは、この視聴者に与える無意識の偏見問題に加え、ハリウッドにおける白人主義的な傾向により、黒人女性の社会貢献が見落とされてきたと指摘した。彼女自身が、近々公開予定の映画『Hidden Heroes』でアメリカ宇宙開発事業の初期段階で重要な役割を果たした黒人女性役のオファーを受けた当初、このキャラクターはフィクションだと思ったという。このように今まで映画で扱われてこなかった歴史上の人物たちが、その存在を認知すらされないという事態も引起こしているのである。

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映画業界の多様性の問題については映画監督であるポール・フェイグは、自身が監督を務める映画『ゴーストバスターズ』が、メインキャストがすべて女性ということで激しい非難を受けていることについて触れ、ハリウッドの男性至上主義を批判した。無意識の偏見については“『ゴーストバスターズ』のキャストが全員女性であることはこんなに騒がれるのに『エクスペンダブルズ』のキャストが全員男性であることについて騒がれたことは一度もないよね”とコメントを残した。

最後に、映画プロデューサーのリディア・ディーン・ピルチャーは、現在、映画館へ行く人の半分が女性であり、消費者の意思決定の85%を女性が占めるという事実をハリウッドの重役たちが受け入れなくてはならない時期が来ていると述べ、業界全体で意識を変えていく必要があると述べた。

 

参考URL

http://deadline.com/2016/06/yara-shahidi-paul-feig-ghostbusters-pga-produced-by-conference-diversity-panel-1201767470/

http://deadline.com/2016/03/industry-gender-problem-panel-discussion-paul-feig-maria-bello-1201729059/

http://producedbyconference.com/la2016/

 

江利山公洋
立教大学社会学部3年。タルコフスキー作品を徹夜で観たのをきっかけに映画の虜。今後も何かしらの形で映画に関わっていきたいです。考えることが好きだけど不得意です。

 

 


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