[311]ガン映画財団:未来ある映画人を発掘する


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 皆さんは”ガン映画財団”をご存じだろうか。フランスで1987年に発足されてからまもなく30年を迎える民間団体で、フランス映画の普及を促進するとともに、映画フィルムの保存・修繕、次代を担う 才能の発掘と育成の助成を行なってきた。また、パリのシネマテーク・フランセーズとは設立当初から密な関係を築いており、共同で様々なイベントを行っている。(現在はマーティン・スコセッシ展を開催中)

 そのガン映画財団が先日、今年度の有望若手監督5組を資金援助受賞者として発表した。今後撮影に入る予定の処女作もしくは2作目の長編作品を対象に、シナリオを見て選考された。今回の審査委員長は監督で女優、そして脚本も手掛けるマリリン・カント。彼女は2011年度の受賞者だ。

以下、今回受賞した6組の近い将来世界を担うであろう若手映画人たちとその作品を紹介しよう。

 

Nicolas Buenaventura:ニコラス・ブエナベントゥラ

『Kairos, Temps Opportun』

60歳のアマラントは銀行窓口係の仕事をクビにされた60歳のアマラントは、解雇後も毎日職場へ通い、壮大な銀行強盗を図っている。現金郵送車が大金を積み下ろす日は、最大のチャンスが訪れる。

シナリオライターで詩人でもある監督の故郷であるコロンビア、カリにて2016年6月より撮影予定。

 

Renaud Féry et Arnaud Louvet:ルノー・フェリ&アルノー・ルヴェ

『L’Ami, François d’Assise et ses frères』

13世紀イタリア、カトリックの修道士アッシジの聖フランシスコの世界平和と平等のための葛藤を描く。主演にジェレミー・レニエを迎えた本作の撮影は既に終えているようだ。

監督はモーリス・ピアラ、アラン・ギロディなどのアシスタントとして独学で力を付け、ローラ・スメット主演『PAULINE ET FRANÇOIS』(2010)で長編映画デビューを果たしているルノーと、アルト局での10年の実績を持つプロデューサーのアルノー。

 

Hubert Charuel:ユベール・シャルエル

『Bloody Milk』

若い農夫ピエールは乳牛を愛している。しかし一頭が悪い病気にかかったことから、農家の牛を処分する決心をするが、それはピエールにとって目の前に見えていた世界の終わりを意味する。両親と姉はそんな彼を見守っている。

FEMIS(フランス国立映画学校)出身のユベールは、農家の息子であることを活かし、親が所有する農場をロケ地として採用した。2016年8月撮影予定。

 

Annarita Zambrano:アナリタ・ザンブラノ

『Après la guerre à Rome』

ローマで裁判官がテロ行為により殺された。関与を疑われた元左翼過激派マルコのメディアとの壮絶な闘いが始まる。全ては家族を守るため。

ローマ生まれ、パリ育ちの彼女はこれまで積極的に国際映画祭にてショートフィルムを発表してきた。2014年の巨匠ルキノ・ヴィスコンティのドキュメンタリー『L’anima del Gattopardo』が記憶に新しい。

 

Yann Le Quellec:ヤン・ル・ケレク

『Cornelius, le meunier hurlant.』

アルト・パーシリンナ原作の『The Howling Miller』(意味:叫ぶ粉屋)を元にした物語。製粉業者の主人公が風車小屋を建て直したことから村人に快く受け入れられるものの、彼には変わった癖があった。気に入らないことがあると、林に逃げ込み大声で叫ぶのだ。それを知った村人は徐々に不信感を募らせていく。

中編作品『ビートに踊らされて』(2012)と『LE QUEPA SUR LA VILNI !』(2013)で、既に世界から評価を得ているヤンは、漫画作家でもある。                  

 

Patrick Zachmann:パトリック・ザックマン(特別賞)

『MISTER WU』

フリーランスの写真家、ジャーナリストとして活躍するパトリック。受賞のコメントに、写真家として小津 安二郎、黒澤 明の日本映画に影響を受けたと語っている。80年代の中国を舞台にした、写真、映像、アニメーションを融合させた独特の映画作りの手法を期待されての受賞だ。

特別賞は、有望監督という括りではなく、あくまで生産物としての一つの作品で評価される。過去には『ペルセポリス』のマルジャン・サトラピや、スタジオジブリ協力の『The Red Turtle』でマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィットが受賞している。彼は『岸辺のふたり』という短編アニメーションで日本でも評価されている。

 

 映画製作と予算の問題は切っても切れない関係で、避けては通れない。1987年度から続くこの選考による製作支援プロジェクトは、これまで170以上の実績を残してきた。実際に、受賞者には製作助成金として53 000 ユーロ(約710万円)が送られ、その後、宣伝費としてさらに20000ユーロ(約270万円)が配給会社に当てられる。こうして積極的にフランス国内のカンヌ、アンジェ、アヌシー、アミアン映画祭等で上映されることによって、世界に発信していこうというシナリオが確立されている。新人には願ってもないチャンスであるに違いない。

 それを証明するかのように、歴代受賞者もそうそうたる顔ぶれだ。ブリュノ・デュモン、ミア・ハンセン=ラヴ、トマ・リルティ、ルイ・ガレル、そして本国フランスで9月に公開されたばかりの『Maryland』が話題のアリス・ウィンクール。彼女は2016年度の審査委員長を務めることが決まっている。才能のかけらを見出す賞であることは間違いなく、これによって彼ら自身に映画人としての大きな自信と責任感をもたらすことだろう。

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参考URL

http://www.telerama.fr/cinema/jeune-cinema-la-fondation-gan-a-choisi-ses-espoirs,135116.php

http://www.fondation-gan.com/

http://www.babelio.com/livres/Paasilinna-Le-Meunier-hurlant/23842

 

田中めぐみ
World News担当。在学中は演劇に没頭、その後フランスへ。TOHOシネマズで働くも、客室乗務員に転身。雲の上でも接客中も、頭の中は映画のこと。現在は字幕翻訳家を目指し勉強中。永遠のミューズはイザベル・アジャー二。


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