映画『ヴィレッジ・オン・ザ・ヴィレッジ』公開までの手探り宣伝の日々を綴ります。

第一弾はこちら→宣伝日誌①

第二弾はこちら→宣伝日誌②

第三弾はこちら→宣伝日誌③

<文:黒川由美子(本作宣伝担当)>

unspecified

2016年8月6日、ついにこの日がやってきた。

期待少し、不安はいっぱい。正直初日にお客さんが来る材料は足りないと思っていた。出演者中最も知名度がある鈴木卓爾さんは参加できず。他にもたくさんの初日が開けるこの日、わざわざ『ヴィレッジ・オン・ザ・ヴィレッジ』に来てくれるお客さんはいるのか?

ふたを開けてみたら想像以上の入り。満席まであと数席という状況に。(のちに、そういうときは「満席!」と言い切るもんだよと宣伝のベテランに言われた)たくさんのお客さんに見守られて笑顔の舞台挨拶となった。俳優でない出演者も多いので、そのひとりは「自分がおばあちゃんになったときに孫に語れる自慢話がひとつできた」と喜んでいた。そのとき見た景色は一生忘れないだろうと言う。

夜に検索をかけるとヴィレッジに対する熱い感想がたくさん!初日に来て下さるお客さんはそれだけ期待値が高かっただろうから、満足していただけてよかったと胸を撫で下ろす。

 

7日、中西ライブその1。田中淳一郎、佐伯美波、宮崎晋太朗、赤堀超太郎が参加。力の抜けたいい感じのライブで順調な滑り出し。

img_20160809_223445

翌日から鈴木卓爾さんが上京。映画館にもトークにも慣れている卓爾さんがいるだけで皆が安心するのがわかる。1日目はトーク、2日目はライブを行なった。ライブではギタリスト杉本拓さんが参加し、この映画のためにイメージソングを書き下ろしてくれた。杉本さんがBlogでこの映画のことをフォークロアと言い表していたが、それを音楽で表現したような無国籍で懐かしさを感じるほのぼのした時間であった。この時演奏した2曲はまたいつか発表する機会があればと思う。

 

10日のゲストはboidの樋口泰人さん。爆音上映をプロデュースしている樋口さんだけに音への指摘は鋭かった。明らかにバランスがおかしいところや普通の映画では採用しない音を使っているがそれは自覚的なのか?という質問に、整音さんに頼むと均されてしまうので、あえて自分でやったと監督。最後に樋口さんが連想したというジョナサン・リッチマンのCDを流し、計算された調子っぱずれぶりにすべてを理解(笑)。さすが。

 

img_20160811_225349翌11日は祝日。チラシにコメントをくださった古谷さんがゲスト。より深く作品を見ている方だけに監督も緊張する。古谷さんはトークで話したい内容を準備していたようだが、K’s cinemaでの爆音に驚き、以前見たときと印象が違い過ぎて話したいことを忘れてしまったらしい。同日観にきていた田村千穂さんも同じことを感じたそうで、上映環境の違いによる見え方の違いについて考えざるを得なかった。戸惑う監督。※古谷さんはその後「こんなに荒くて激しい映画だったのか」と日記に書いています。→http://d.hatena.ne.jp/furuyatoshihiro/20160812

 

お客さんの入りは上々、ではあるがこの後の平日は落ちてくるのではないかと気を引き締めなおす。Twitter等での評判も相変わらずよく、もっと「わからない」という反応が多いかと構えていたが深い見方や意外な解釈で作品の面白さをどんどん広げてくれていてありがたい!

 

12日のゲストは映画監督で俳優の太田信吾さん。太田さんは海外に行った際危険と隣り合わせの経験をして死が近くにある感覚をリアルに味わったため、この映画の死者(に見える存在)との距離感を興味深く見たようだ。また、他者を受け入れる共同体はこれからの時代に必要、と一歩広げた視点での見方も提示してくれた。

 

13日は中西ライブその2。田中淳一郎、佐伯美波、山形育弘、瀬木俊が参加。ju-seiのseiさんの飛び入りもあり、豪華なライブに。本家の歌声に改めて感銘を受ける。

 

1週間を過ぎて、まだ客足は落ちる気配がない。はじまった当初は宣伝がうまくいったのだと喜んでいたが、それだけではないと感じてきた。口コミによってこれまで反応していなかった層に届き始めているのだ。これはもっと嬉しい。

 

14日は絢役の柴田千紘トーク。はじめて観客から質問を受けるティーチ・インを行なったが、質問が途切れることなくほっとする。一方、この日は元NHKディレクターであり、黒川が助監督でついた『ミンヨン 倍音の法則』の監督である佐々木昭一郎さんが映画を見にきてくれた。トーク前にひとこと挨拶をしてくださり、尊敬する監督の前で黒川は緊張の面持ちであった。

 

15日はHEADZ主宰の佐々木敦さん。この映画を心霊青春映画と名付けてくれた。また、全体的にちょっとずつズれていくような変さ、音や編集の普通でなさも面白かったと。その「変」はストレンジやエキセントリックでなく奇をてらったものでもない、例えるなら「心霊写真」ぽい。心霊写真は本物かどうかよくわからないが、偽物だからと言って怖くないわけではないと、なるほど。

 

この頃になると、上映後K’s cinemaの下で缶ビールで乾杯するのが習慣になってきた。まるで映画の続きのような、夜がずっと続くような毎日。

img_20160816_231836

16日のゲストは「ゴダール的方法」の著者・平倉圭さん。映画を観終わったばかりのテンションで、椅子にじっと座っていられないようなアクティブさを感じるトークだった。切り返しの多さにまず着目し、カメラが反対側に切り替わると、音の左右も入れ替わっているということに気付き驚いたそう。また、カメラの切りかわる早さが中ちゃんの身体性と似てる、鈴木卓爾さんの動きにエレガントさを感じたなど平倉さんらしい視点にこの映画の新たな魅力をたくさん見つけてもらった気がする。

この日は嵐が近づいていたので誰も来ないかも?と思ったが想像以上にたくさんのお客さんが来てくれて感謝。嵐の中もK’sの前で乾杯。

 

17日はcore of bellsの短編を同時上映。相性はどうかやや心配したが、たいへんウケていたのでほっとする。

なんとこの日から連img_20160819_205446日満席に!駆け込みでやってくるお客さんをお断りするのは本当に忍びなかった。後半はこちらが仕掛けた宣伝でなく、自然に評判が広がっていくのがわかった。東京のお客さんは本当に成熟していると思う。有名人の言葉や定まった評価がなくても自分の感性で新しいものを選びとる。

18日は田中豊ライブ。田中豊って誰?って話だが田中淳一郎にあの人(尾崎豊)が降臨して作ったオリジナルソングを歌うという。やっぱり、誰?この日は前日より早い時間に満席に。

今まで思ってもみなかったことだが、これ以上宣伝すると見られない人を増やしてしまうのではというジレンマを抱えることとなった。でも、最後まで宣伝は続けたい。次の上映を一刻も早く決めることしか解決策はない。

 

19日は七里圭監督とのトーク&舞台挨拶。

最終日にふさわしいゲストは七里監督だと思っていた。黒川を映画の世界に導panoramaいた先輩であり、これまでの道のりすべてを知っている人。

先輩の厳しくも温かい感想に恐縮する監督であった。

そして、最後の舞台挨拶。時間もなく慌ただしくスタッフキャストを紹介、締めは監督の言葉だったが思いがあふれすぎてうまくまとまらず。でも、気持ちは充分伝わった。

最後は満員の客席と共に記念撮影。K’s cinemaのスタッフの皆さんには本当にお世話になり、感謝しかない。2週間通い続けた居心地のいいロビーともしばしお別れ。またいつか戻ってこれますように。

 

さて、感傷に浸っている暇はありません。

次はこちらです。

『ヴィレッジ・オン・ザ・ヴィレッジ』大反響につきポレポレ東中野で上映決定!

ポレポレ東中野:http://www.mmjp.or.jp/pole2/

9/17(土)〜23(金) 連日20:30より

<イベント>

9/17(土) 公開初日イベント
初日舞台挨拶、アフタートークあり<ゲスト:テンテンコ、黒川幸則、田中淳一郎(予定)>

9/21(水)アフタートーク 
出演:しまおまほ(漫画家、イラストレーター、エッセイスト)、黒川幸則、山形育弘

上映期間中にその他トーク等も予定中です。

 

再び宣伝の毎日です。

まだ、夏は終わりません。

また、お会いしましょう!

映画『ヴィレッジ・オン・ザ・ヴィレッジ』

公式HP:http://www.villageon.ooo/
Twitter:@villageon_movie
Facebook:映画 Village On The Village
Instagram:village_on_the_village
製作・監督・編集:黒川幸則
出演:田中淳一郎、鈴木卓爾、柴田千紘、佐伯美波、只石博紀、宮崎晋太朗、赤堀超太郎、園部貴一、長宗我部陽子
脚本:山形育弘 音楽:のっぽのグーニー(田中淳一郎) 撮影:渡邉寿岳 録音:青石太郎
配給:STANDARDS OF LOSSTIME
2016年 | 日本 | ヨーロピアンヴィスタ カラー デジタル | 76分
お問い合わせ:village@village.ooo
© STANDARDS OF LOSSTIME

佐藤友則
制作部担当。映画資料のアーカイブ業務に携わっています。大学時代より映画祭TAMA CINEMA FORUMのスタッフとして企画運営等をしています。映画の多様な魅力をより多くの人に届けたいです。