映画『ヴィレッジ・オン・ザ・ヴィレッジ』公開までの手探り宣伝の日々を綴ります。
<文:黒川由美子(本作宣伝担当)>
黒川幸則監督の自主制作映画『ヴィレッジ・オン・ザ・ヴィレッジ』は2014年夏から撮影が始まり、2016年1月に完成。シナリオ作りを含めると丸3年を費やした。すぐに劇場公開に向けて動いたところ、2016年8月6日から新宿K’s cinemaにてレイトショー上映が決定。完成までは長かったが、その後の展開は早かった!あまりにトントン拍子で少々慌てる。この掴みどころのない映画が果たして世間に受け入れられるのだろうか?
宣伝活動が始まったのは2月末頃。まずは宣伝をプロに頼むか?というところから悩んだが、思い切って自分たちの手で配給宣伝をやってみることに。不安はあったものの、いざとなれば自主上映で各地を回ることも考えていたので映画館で公開というのは何よりもモチベーションの源となった。折しも主演の鈴木卓爾さんが監督した『ジョギング渡り鳥』が3月公開を控えて宣伝の真っ最中。渡り鳥たちの姿に背中を押されるものもあった。
宣伝を支える主なメンバーは、制作時のスタッフ、キャスト、そして完成後に協力を買って出てくれたTAMA映画祭の実行委員たち。最初に取りかかったチラシ作りでは自宅をロケ場所として貸してくれた上に制作スタッフとして現場で大活躍してくれた梨乃さんが本業のデザイナーとしての力を発揮してくれた。彼女とはロケハン中に偶然出会ったのに、もはやこの映画に欠かせない存在となっている。そうした幸せな出会いがいくつもあったことは、つくづく恵まれていると思う。
チラシ・ポスターのデザインは悩みに悩んだ。俳優達の顔がわかるものがいいか、ちょっと奇抜で目を引くものがいいか、並べた時インパクトがあるのはどれか、そうやってこの映画にふさわしいものを選び取る過程で宣伝の方向性も見えてきた気がする。こうして、美しく少し不穏なものを含み、人間たちの後ろ姿しか写っていない潔いチラシが出来上がった。印刷があがって手にしたとき、覚悟のようなものが湧いてきた。このデザインに恥ずかしくない宣伝をしていこうと。また、チケットは美術家・小林耕平さんが鉛筆画を描き下ろしてくださり、映画が見られるという実用性以上の価値が加わった。なんと、贅沢な!
そういった印刷物が一通り完了すると、今度はWEB関係の充実をはかるべく動き出した。SNSは手っ取り早いのでFacebook、Twitter、Instagramととりあえずアカウントは作成するが、まだ投稿する内容が少なくスカスカ。と同時にホームページも準備を始めた。担当は同じくロケ場所提供でお世話になった篠原さん。ホームページをオープンするタイミングでプレスリリースも送り、WEBニュースにも取り上げられた。WEB関係の宣伝はTAMA映画祭の実行委員が経験を生かして動いてくれた。
そうこうするうちに気付けばもう1ヶ月前。やれることはだいたいやった気もするし、まだまだ足りない気もする。先日はマスコミ試写を行い、観て欲しかった方々から嬉しい言葉もたくさんいただいた。この映画を語るとき引き合いに出されるのはリヴェット、ゴダール、ラウル・ルイス、ジェリー・ルイス、鈴木清順、黒沢清…などなど、錚々たる面々。畏れ多いが嬉しい!どんな風にこの映画を伝えていくかのヒントになった。観た方たちが与えてくれた言葉によって、ぼんやりとしていた輪郭が少しずつはっきりしていくのも感じる。公開後はどんな言葉で迎えられるのか、楽しみでもあり怖くもある。
スタッフ・キャストたちはそれぞれに独自のアイディアでクリエイティブな宣伝活動をしている。例えば主演の田中淳一郎は役名の中西名義で映画の続きの世界で作られたサントラ盤を制作中で、いつの間にか発売記念ライブまで決めてきた。脚本の山形育弘と宣伝スタッフの出雲美智子はヴィレッジとパラレルワールドのような世界の(すでに4コマではない)4コマ漫画の不定期Twitter連載を始めた。
そういった自由な発想と動きは楽しい。これから公開日に向け徐々に盛り上がっていきたいところだが、長らく宣伝活動を続けているせいか微妙に温度差も生まれてきてそれをどう埋めていくかが目下の課題。続きはまた次回。
映画『ヴィレッジ・オン・ザ・ヴィレッジ』
2016年8月6日(土)から新宿K’s cinemaにて2週間限定レイトショー
公式HP:http://www.villageon.ooo/
Twitter:@villageon_movie
Facebook:映画 Village On The Village
Instagram:village_on_the_village
製作・監督・編集:黒川幸則
出演:田中淳一郎、鈴木卓爾、柴田千紘、佐伯美波、只石博紀、宮崎晋太朗、赤堀超太郎、園部貴一、長宗我部陽子
脚本:山形育弘 音楽:のっぽのグーニー(田中淳一郎) 撮影:渡邉寿岳 録音:青石太郎
配給:STANDARDS OF LOSSTIME
2016年 | 日本 | ヨーロピアンヴィスタ カラー デジタル | 76分
お問い合わせ:village@village.ooo
© STANDARDS OF LOSSTIME
佐藤友則
制作部担当。映画資料のアーカイブ業務に携わっています。大学時代より映画祭TAMA CINEMA FORUMのスタッフとして企画運営等をしています。映画の多様な魅力をより多くの人に届けたいです。