[547]撮影監督ロジャー・ディーキンス


「ブレード・ランナー2049」の撮影監督ロジャー・ディーキンスはイギリス・デヴォン州出身のカメラマンで、キャリアを通してのアメリカ撮影監督協会のLifetime Achievement Awardなど数々の国際的な撮影賞を受賞している。(#1)「バートン・フィンク」以降のコーエン兄弟作品の殆どの撮影を担当している他、主な作品としては「ショーシャンクの空に」(1994年)、「デッドマン・ウォーキング」(1995年)「クンドゥン」(1997年)「ビューティフル・マインド」(2001年)「愛を読む人」(2008年)「007 スカイフォール」(2012年)「プリズナーズ」(2013年)などがある。これまでアカデミー撮影賞にも13回ノミネートされており、映画界を代表するカメラマンの一人だ。

祖父がデヴォン州トーキーの地元漁師で、父が建設会社の経営をしている家系に1949年、ロジャー・ディーキンスは生まれた。ロンドンにあるNational Film and Television Schoolで撮影の勉強をしたのち、建設業の父の後を継ぐのを断りドキュメンタリーカメラマンとして撮影のキャリアをスタートさせた。ツーリスト用の紹介ビデオを作るというを名目のもと、秘密裏にジンバブエの内戦を撮影した「Zimbabew」や、ヨットレースの世界選手権に同行し1年近く密着した「Around the World with Ridgeway」などイギリスに留まらず様々な国で撮影をしていた。(#2)ロジャー・ディーキンスはドキュメンタリーのスタイルがその後の、自身の映画撮影方法に深く影響を与えていると語っている。「ドキュメンタリーは僕に経験とこれから何が目の前で起こるかに対する第六感を持つこと、そして大事なものをフレームにどう入れ込めば良いのか、ということを教えてくれた。対象に対してどのようにカメラ位置を決め、目の前のことをヴィジュアルとしてどう解釈して行くのかが私の撮影のキーポイントであり、つまり本能的に、素早く行動することが大事なんだ。また人々に撮影監督になるためにどうしたら良いかと聞かれるのだが、ドキュメンタリーを撮影することは良い勉強になると思っている。ドキュメンタリーであろうが劇映画であろうが、目の前で俳優や出演者が見せてくれることを如何に映像として表現していくかは変わらないし、ドキュメンタリーではそれを即座にやらなくてはならないのだから」。

数々のドキュメンタリーを撮影する傍ら、Channel 4などのTVドラマをロジャー・ディーキンスは手掛けるようになって行く。そんなある時、エージェントを通しコーエン兄弟から撮影依頼の連絡がきた。当時コーエン兄弟は、それまで撮影を務めていたバリー・ソネンフェルド(#3)が監督に転職する為、次作の「バードン・フィンク」の撮影監督を新たに探さなくてはならなかった。コーエン兄弟は「おそらく低予算で、ノンユニオンの映画製作になるから、外国人で経験のある撮影監督を探していたんだ。ロジャーの作品は追いかけて見ていたんだけど、最初彼からの反応はよくなかったんだ。複数台のカメラで撮影するの事は嫌だし、ズームレンズは嫌いだ。自分でカメラオペレーションをしたい、と言っていた」。しかし脚本を受けっとたロジャー・ディーキンスはロンドンでコーエン兄弟と会うことにし「仕事に関して同じ波長を持っているように感じた。恐らく自分たちでお金を集めるところから映画を作り始め、それをスクリーン上につぎ込むことに全力で尽くしている。まっすぐで、実直な人たちだと感じた」と印象を語っている。(#4)

Cinematographer-Roger-Deakins-image

コーエン兄弟にロサンゼルスに来る事は出来るかと聞かれたロジャー・ディーキンスは、その後アメリカに渡りコーエン兄弟の作品を含め本格的に映画撮影の道に進んでいく。

述べアカデミー賞撮影賞ノミネート13回、英国アカデミー賞撮影賞3回受賞し、これまで撮影した映画は40本を超えているが、ロジャー・ディーキンスには“自分でカメラオペレーションをする”という1貫した撮影スタイルがある。(通常アメリカ/ヨーロッパの撮影監督達はカメラを自分で操作せず、複数台のカメラの動きと照明を全体が見渡せる位置、モニター前などにいてトータルで映像管理をしている。カメラ操作はカメラオペレーターという専門職が行う)。ロジャー・ディーキンスは「俳優の芝居が撮れてなければ、何も撮れていないと同じことだ。俳優が演技をし易い環境を作り、そのスペースを作ってあげる事が撮影監督の大事な仕事の1部だ。自分がオペレーションをすれば芝居を一番身近に感じれるし、俳優が何か新しいことをを試みようかと思った時、反応できるんだ」と言う。(#5)

ジャンルや国を問わず撮影を続けてきたロジャー・ディーキンスだが、実は自身のホームページを持っており、映画を見た人からの撮影に関する質問を受け付けている。 https://www.rogerdeakins.com 英語のみになるが、無料で誰でも投稿出来、ロジャー・ディーキンスが答えてくれるので撮影に関して質問を投げかけてみるのも面白いかもしれない。 

 

(#1)https://theasc.com/ac_magazine/January2011/RogerDeakinsASCBSC/page1.html

(#2)http://www.cinematographers.nl/PaginasDoPh/deakins.htm

(#3) http://www.imdb.com/name/nm0001756/

(#4)http://www.slashfilm.com/roger-deakins-interview/

(#5)http://variety.com/2015/film/features/cinematographer-roger-deakins-takes-visceral-approach-to-his-craft-1201593464/

 

戸田義久 普段は撮影の仕事をしています。

https://vimeo.com/todacinema これ迄30カ国以上に行きました。これからも撮影を通して、旅を続けたいと思ってます。趣味はサッカーで、見るのもプレーするのも好きです。


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