6/20公開 『コングレス未来学会議』


 

World Newsを主に担当しております松崎と申します!
四月も、もう後半ですね。やっと春がやってきたと思ったら、連日の雨…。
衣替えしてしまったのに、こう毎日肌寒いと、着る洋服に悩みますよね。
でも、これからはすこし暖かい日が続くそうなので、ひと安心です!

先日、TOHOシネマズ日本橋にて行われた東京アニメアワードフェスティバルに行ってきましたので、それについてレポートを書いてみようと思います。

東京アニメアワードフェスティバル(TAAF)とは、クリエイター、アニメ業界関係者、ファンが一体となる日本を代表する国際アニメーション映画祭です。人材発掘・育成、世界に向けた情報の発信、アニメーション文化と歴史の継承を目的に開催されています。

2013年までは、東京国際アニメフェア内で、その年に制作されたアニメ作品やアニメ関係者を表彰するアワードとして開催されていましたが、2014年に本格的な国際アニメーション映画祭として生まれ変わり、今年で二年目となる、とってもホットな映画祭です。

コンペティション部門、アニメオブザイヤー部門、アニメ功労部門などのアワードに加え、スペシャル上映や、ワークショップやディスカッションなどのイベントなど、盛り沢山の内容で、会場は熱気に包まれていました。

今回わたしが参加させていただいたのは、アリ・フォルマン監督『コングレス未来学会議』(13)の上映と、アニメーション作家の山村浩二さんによる、来日されたアリ・フォルマン監督とのスペシャルマスタークラスという、なんとも豪華なイベントです。
『コングレス未来学会議』は、2014年のTAAFコンペティション部門(長編部門)にてグランプリを受賞した作品で、招待作品としてこの映画祭に戻ってきたかたちになります。
(翻訳家・柳下毅一郎氏による字幕監修版は初上映!)

アリ・フォルマン監督は、1962年生まれのイスラエル出身の映像作家で、監督自身の経験をもとに製作した長編アニメーション映画『戦場でワルツを』(08)が、その年のカンヌ国際映画祭のコンペティション部門、セザール賞、アカデミー賞、ゴールデングローブ賞など数々の映画祭にノミネートされ、一躍時の人となりました。第9回東京フィルメックスの優秀作品賞受賞作品でもあります。

今回のイベントに向けて、この作品をもう一度見直してみたのですが、これが何度見ても言葉を失うほど強烈な作品で、レバノン内戦という過去に起きた出来事へ思いを巡らせるとともに、現在のパレスチナ問題、PTSD、表現の自由などが、他人事という言葉で処理することができなくなるほど、自分自身に刻み込まれました。監督の内なるエナジーと記憶の探求の旅が、一種のセルフドキュメンタリーという形で描かれており、決してきらびやかな映画ではありませんが、その肌にヒリヒリと迫り来る感覚は筆舌しがたいものがあります。

全編に渡って表現されている、‘アニメーションであること’で初めて伝わってくる監督自身の感情の波は、アニメーションゆえにとても純度が高く、美しいと思います。そして、そのフィクショナルな世界観をぶち壊すように訪れるラスト数分のシークエンス。アニメーションという表現方法の奥深さを再認識する意味でも、必見の一本であることに間違いないでしょう。

そして、今回鑑賞した『コングレス未来学会議』ですが、これが前作とはうってかわって、幻想的で奇妙な、ハリウッド批判とも受け取れるようなエッジの効いた不思議な魅力のある作品でした。原作は、ポーランドのSF作家スタニスワフ・レム『泰平ヨンの未来学会議』
(レムの代表作『ソラリスの陽のもとに』は、A・タルコフスキー監督と(『惑星ソラリス』(72))、S・ソダーバーグ監督(『ソラリス』(02))によって二度映画化されています。)
実際は、原作というほど忠実に映画化しているわけではなく、未来学会議という設定を受け継ぎながらも、監督独自の視点でカラフルかつ大胆に近未来の世界を描いています。
半分実写半分アニメーションというユニークなバランスで作られており、実写パートからアニメーションパートへ移行するシーンでは、その伸び伸びとしたアニメーションの動きに思わず笑みがこぼれてしまいました。

あらすじはこうです。

2014年、ハリウッドは、俳優の絶頂期の容姿をスキャンし、そのデジタルデータを自由に使い映画をつくるというビジネスを発明した。40歳を過ぎたロビン・ライトにも声がかかった。はじめは笑い飛ばしていた彼女だったが、悩んだ末に、巨額のギャラと引き換えに20年間の契約で自身のデータを売り渡した。そして、20年後、文明はさらなる進歩を加速させていた。ロビンはある決意を胸に、驚愕のパラダイスと化したハリウッドに再び乗り込む。
(本作のチラシより抜粋)

すごいお話ですよね。そんな変な話、どうやって面白くなるんだろう、と誰もが思うと思います。そして、アニメと実写のハイブリッドという大胆な構成も、実際のところどうなの?と首を傾げたくなる人も少なくないと思います。
詳しい作品の説明は控えますが、観客が、本人役で出演する主役のロビン・ライトと共に体験する、ハリウッドという世界で老いを背負った崖っぷち女優の実写とアニメーションの人生の旅は、エキサイティングでありながら、どこかもの哀しく、息子と娘への愛に貫かれた一大叙事詩のようで、鑑賞後の感覚は、スタニスワフ・レムの小説の持つ独特な寂寥感に似ています。

アニメーションパートの語り口はとてもドラッギーで、(ボブ・ディランのある名曲を熱唱するロビン・ライトの歌声をバックに繰り広げられるシーンでは、その高揚感に酔いそうになってしまいました)、ベティ・ブープやポパイなどで知られるフライシャー兄弟などの表現を引用しつつも、ありとあらゆる創造性をこれでもかと盛り込んだ躍動感溢れるものとなっています。一回見ただけではすべて把握できないほどの映画や文化の小ネタもちりばめられていて、楽しいです。
とにかく、こんな複雑な物語をつくりあげ、見事に映像化してしまったフォルマン監督の手腕に、ただただ脱帽です。本当に素晴らしかった!!
ちなみに、俳優陣も豪華で、主演のロビン・ライトに加え、ハーヴェイ・カルテル、ポール・ジアマッティ、ジョン・ハム、ダニー・ヒューストン、コディ・スミット=マクフィーなど。アニメーションパートにしか登場しない俳優さんも居ますよ。これは見てからのお楽しみ。

では、上映後のトークセッションにてフォルマン監督が明かしてくれた、作品の製作プロセスやインスピレーションなどを、かい摘んでご紹介します。

まず、この作品は四年の歳月をかけて作られました。『戦場でワルツを』を作ったあとすぐにスタニスワフ・レムの映画化権を購入、その時は実写とアニメーションのハイブリッドで作るということ以外何も決まっていなかった。どのような物語にしようか考えあぐねていた時に、カンヌ国際映画祭のマーケットの会場で、ある一人の年老いた女性を見かけたそうです。その女性は、70年代に活躍したアメリカの大女優だったそうなのですが、カンヌにいる映画関係の人間は、ほぼ誰もその存在に気づいていなかった。カンヌは映画の聖地(メッカ)であるにも関わらず、数十年前には映画界のトップスターだった彼女が、ただの人となってしまっていた様にショックを受けた監督は、彼女がどんな気持ちだったのだろうと考えて、物語の骨格を思いつく。

約8ヶ月かけて脚本を書き上げ(『戦場でワルツを』のときはわずか四日で書き終えたそうです)、米国にて実写パートを撮影。主演はケイト・ブランシェットがつとめる予定だったそうですが、LAでばったりロビン・ライトに会ってすぐにピンときて、彼女にオファーを申し出たそうです。

一番苦労したのはやはりアニメーションパートで、欧州の様々な場所のアニメ制作助成制度で資金集めを行ったので、資金をもらったその土地土地で作業をしなくてはならず、60分のアニメーションパートを9カ国で制作するという形になった。それぞれの国の技術的なムラやキャラクター描写を一つのものにまとめる作業に時間がかかった。

この作品は、コンピューターグラフィックスではなく、すべて手書きで制作されていて、それぞれのシーンを実際の生身の俳優が演じた映像(顔や動き方)を見ながら、アニメーターが紙の上で表現しなおすという、気の遠くなるような制作プロセスを経て完成している。

フライシャー兄弟のスタイルを用いたのは、同時期に活躍していた完成度の高い優等生的なディズニーとは対照的に、兄弟の持つ不良的なワイルドさに惹かれたから。幻覚的な幻想イメージは、今敏監督の『パプリカ』などからの影響が強いそうです。

‘何が現実で、何が現実じゃないか’、といったことに監督が強い興味を持っているのではないかと感じた、という山村監督の言葉に対して、

誰もがパラレルワールドと現実世界を行き来しながら暮らしている。
この二つの世界を合体・融合することができている映画がいい映画だと考えている。
意識と無意識、そういった矛盾を描く映画を目指している、と答えていました。
(この部分は、『戦場でワルツを』の根底にある表現のテーマとも通じるものがあり、興味深かったです。)

今取り掛かっている新作は、「アンネ・フランクの日記」の子供向けアニメーション。
日本での制作も視野に入れているので、この作品が日本で成功してたくさんの方に見ていただくことを願っています、とおっしゃっていました。

初めてお目にかかったフォルマン監督は、物腰柔らかなとても格好良い方で、丁寧に言葉を選んで話されていたのが印象的でした。制作過程のラフ画や、アニメーションを作るために使われた実際の実写映像などを拝見することができ、とても貴重な体験でした。
トークのお相手をされた山村浩二監督も、このユニークな唯一無二の作品が日本で一般公開されることに喜びを隠せない様子でした。

さて、最後に監督が言及した、新作のアンネの日記のアニメーションですが、この度詳しい内容が発表されたので、ご紹介します。(またビックリするような内容です!)
この作品は、ストップモーションアニメと、伝統的な2Dアニメーションのハイブリット作となっていて、つまり、2Dのキャラクターが、ストップモーションアニメの背景の前で動く、のだそうです。物語は、アンネのイマジナリーフレンド・キティの目線で語られ、このキティというキャラクターは、2Dではなく人形なのだそう。うーん、頭がクラクラする!(*http://blogs.indiewire.com/thompsononhollywood/ari-folman-reveals-wondrous-first-look-at-his-animated-anne-frank-film-20150331)
今後、さらに詳細が明らかになった時に、World Newsで詳しく紹介したいと思います。

初めてのブログ投稿で勝手がわからず、思いのままに書きなぐってしまって、気が付いたらとっても長いものとなってしまいました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
次に書くときには、もう少し簡潔にまとめたいと思います。。

『コングレス未来学会議』は、6月20日(土)から新宿シネマカリテほか全国順次公開予定です。

http://www.thecongress-movie.jp/

心の底からオススメです。 ぜひ、劇場に足を運んでみてください。

 

松崎舞華
日本大学芸術学部映画学科2年 。猫も好きだけど犬派、肉も好きだけど魚派、海も好きだけど山派。普通自動車免許(AT限定)所持。得意料理: たらこスパゲッティ。趣味: 住宅情報サイト巡り