[691] スコセッシも絶賛、アリーチェ・ロルヴァケル新作『ハッピー・アズ・ラザロ 』


『ハッピー・アズ・ラザロ (原題:Lazzaro Felite 英題:Happy as Lazzaro』は、数々の批評家から絶賛され、今年のカンヌでも脚本賞を受賞した話題の作品である。

監督のアリーチェ・ロルヴァケルは、『夏を行く人々』でカンヌ国際映画祭グランプリを獲得したことでも知られる新鋭のイタリア人監督だ。

ロルヴァケルが高校時代に読んだ1つの記事がインスピレーションとなっているこの作品。その記事は特権を与えられた地位の人たちがそうでない人たちを利用し騙したことについて書かれた、彼女がいうには「ほとんどの人が読んだ次の日には忘れてしまうような、イタリアの歴史の中での小さな出来事」についてだった。

しかし、その遍在的な問題についての記事が彼女にとってこの作品をつくる一番初めのきっかけだったと彼女は話す。そのため、『ハッピー・アズ・ラザロ』はその記事に基づいて当初はもっと政治的な主張を持った作品になる予定だった。

しかしこの問題の普遍性を考え、物語を全体的に明るくした方がよいと制作を進めるにつれロルヴァケルは考えるようになった。そこで、ラザロというキャラクターを思いついたという。

「ラザロはおかしなくらいにとても心が清く澄んでいる。彼の純潔さは、ほかの人間にとって革新的でもはや動揺を引き起こすくらいのもの。彼は完全に善良である。大抵の映画の中の登場人物とは違って、ラザロは変化をしない。変化し続ける世界の中でも最初から最後まで永遠に、ラザロは善い人でいる。」

「映画の中で、彼は単純で頭の回転が鈍い人物としては描かれていない。一方で、聖人でもない。でもその2つの間の線引きはとても薄いと私は考えている。この映画は観客がラザロの目線に立って物事をみることができるように作られたのではない。重要なのは観客がラザロのような人をどのようにみるかであって、ラザロが世界をどうみているかではない。」

『ハッピー・アズ・ラズロ』のいわゆる “あらすじ” は何であるのか。ロルヴァケルはそれについて多くは語っておらず、予告編を観てもそれについて簡単に言語化することは非常に困難である。「良い映画とは、人々に持続するある一種の滞在意識を残すものだ」というロルヴァケルがいうように、人々はこの映画が言葉で説明できるあらすじを持たないというところにも魅力を感じているのかもしれない。

そして先週、新たな巨匠がこの作品を絶賛のしたゆえに製作に加わった。マーティン・スコセッシである。

ロルヴァケルは、作品の完成後にこの映画の製作を申し出たスコセッシについて

「彼は心から本作品を気に入り、支援を申し出てくれた。偉大な映画作家であり映画の保存に力を注いでいる彼のような人がこの作品に関わってくれたことはとても光栄である」

と述べている。

– New York, NY – 9/21/18 – NYC Special Screening of Happy As Lazzaro
-Pictured: Alice Rohrwacher (Director), Martin Scorsese
-Photo by: Patrick Lewis/Starpix for Netflix
-Location: The Whitby Hotel

スコセッシが新鋭の映画監督の作品に注目を示しその作品と監督の知名度を上げたのは今回が初めてではない。彼は2017年に、『フランシス・ハ』や『君の名前で僕を呼んで』の製作も手がけたブラジル人のプロデューサー、ロドリーゴ・テイシェイラと共同で映画制作会社への資金提供を開始した。その資金は、カンヌ国際映画祭でおなじみのジョナス・カルピニャーノとテイシェイラが初めてタッグを組んだ作品『チャンブラにて』を祝うものだった。スコセッシもこの映画に製作総指揮として関わっており、『チャンブラにて』について「美しく人々の心に触れる作品」だと述べている。

次世代の自主映画製作者たちに対するスコセッシの献身的な支援は、この基金を設立する前から行われていた。『マンチェスター・バイ・ザ・シー』のケネス・ロナーガンが監督の『マーガレット』を始め、アンガス・マクラクラン監督の『Abundant Acreage Available (原題)』、ベン・ウィートリー監督の『フリー・ファイアー』、そしてケント・ジョーンズ監督の『Diane (原題)』などへの支援が例として挙げられる。

スコセッシが作品に加わったことにより更に注目が増した『ハッピー・アズ・ラザロ』は、9月28日から始まったニューヨーク映画祭で上映される。

参照記事

‘Happy as Lazzaro’: Martin Scorsese Added as Executive Producer to Alice Rohrwacher’s Potential Oscar Entry — Exclusive

Happy as Lazzaro (Lazzaro Felice) interview: Director Alice Rohrwacher discusses the tragic ties between power and exploitation

NYFF 2018: 10 Films to Seek Out at This Year’s Festival, From a 14-Hour Argentinian Epic to a Puppy-Filled Cult Classic

Cannes 2018 Dispatch #4: Shoplifters, Girl, Happy as Lazzaro

予告編

樋口典華
映画と旅と本と音楽と絵画がとにかく好きです。現在、早稲田大学1年生。


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