[670]“デップー”より過激?壮絶な過去をもつオーガスティーン・フリッツェル監督とは何者か


世界一有名な子役、マコーレー・カルキンを生んだ大ヒットコメディ『ホーム・アローン』がリメイクされる。それも『デッドプール』シリーズでスターダムにのし上がったライアン・レイノルズがプロデューサーを務めるR指定版「オトナのホーム・アローン」というのだから、さぞかし過激なものになるに違いない。『Stoned Alone(原題)』、キャストは未定だが、「ハタチのジャンキー男が飛行機を乗り過ごしてスキー旅行をドタキャン。計画を変更し、薬をキメてハイな自宅休暇を満喫の真っ最中に、泥棒侵入!目の前にいる泥棒が本物なのか、薬の見せる幻覚なのか、判断がつかないまま孤軍奮闘する男の姿を描いた作品」といった話になるらしいということ、そして監督として名が挙げられているのが、女優として15年のキャリアを持つオーガスティーン・フリッツェル、本作が決まれば2本目の長編作品となる。

 

フリッツェルの名はどこからやって来たのか。彼女が注目を浴びるきっかけとなった初監督作品であり、ことしのサンダンス映画祭をにぎわわせた“Never Goin’ Back”が間もなくアメリカで公開される。配給は『ムーンライト』や『グッド・タイム』、『フロリダ・プロジェクト』、『レディ・バード』など個性的なヒット作を飛ばし続けるA24だ。

 

“Never Goin’ Back”の主人公は、高校をドロップアウトした親友同士の二人。ビンボー生活からの脱出を夢見てウェイトレスとして働く彼女たちが、1週間の休みを取って海へバカンスを楽しみに行っている間に事件は起こる。家には泥棒が入り、家賃滞納のせいで立ち退きのピンチ。おまけにバイトもクビになりそう。二人はこの難局を乗り切って憧れのリッチ生活を手に入れられるのかというコメディである。

 

実はこの話には、フリッツェル監督自身の体験が盛り込まれているという。ワイルドな10代の体験を赤裸々に語るインタビューの一部を見てみよう。

 

「この映画はとても自伝的。私にも親友がいた。二人で3カ月ほどフロリダのパナマシティービーチで過ごしたのち、テキサス州に戻ることにした。彼女のきょうだい、あと数名のルームメイトとで家を借りた。実際は彼女のお父さんも一緒に住んでいたけれど、彼は父親タイプの男じゃなかった。ただの喫煙仲間っていう感じ。私たちはIHOP(ファーストフードのファミレス)で働き、山ほどドラッグをやっていた。映画の中に出てくる3つのエピソードのうち、2つは本当のこと。私たちは店に強盗に入った。でも、トニーっていう名の男に襲われて、逆にTVを盗まれてしまった」。

 

ドラッグ、強盗といった単語がよどみなく出てくる彼女の口から、さらに驚きの過去が語られる。

 

「私は自分の価値がわかっていた。白人だし、そこそこ魅力的。素敵な服を着て男性にお酒を勧めるような仕事ならいつでもつくことができた。外見の美しさに加え、遺伝子的にも良好だったから、卵子を売ってお金を稼いでいた」。

 

凄まじいのは、これらの手段が彼女にとっては「救い」であったということだ。

 

「ドラッグをやめたのは17歳のとき。それまではどっぷり浸かっていたし、薬を買うお金のために盗みもした。刑務所に何度も入った。あるときこう思った。いつまでも自分の生い立ちへの不満を抱いていてもだめだって。それを両親のせいにする子どももいる。私には因果関係というものが見えてきていた。単純に、盗めば刑務所へ入れられる、ということではなく、私が悪事を働き続けたら、世の中でも悪いことが起こり続けるということ。良い行いをしない限り、私の人生も良くはならないのだということだ。

私は自分の人生に多くを望んでいたし、自分にはやりたいことがあることもわかっていた。ただ、どうすればいいのか、どういう道を歩んでいけばいいのかがわからなかった。でも、とりあえずドラッグはやめた。刑務所には戻りたくない、逮捕なんかされたくない、執行猶予中に罪を犯して長いこと刑務所に入るはめになる人生は望んでいない。ドラッグをやめたおかげでタバコもやめられたと思う。すぐに妊娠した。私がコミュニティカレッジに通っていたときで、18歳だった。相手は昔の同級生。身ごもってすぐ、妊娠をいいわけにせず、したいと思うことはすべてやり抜こうと心に誓った」。

 

モテ外見を駆使して人生の苦境を乗り越えてきた彼女だが、見た目の美しさがハリウッドで成功するための必須の要素だとは考えていない。

 

「今回の主役に彼女たち(マイア・ミッチェル、カミ・モローネ)を選んだのも、二人がホットだからじゃない。古典的なお色気タイプから冴えない感じの女の子まで、試してみたいと思う俳優はすべて試した。正直言って、カミをキャスティングしようとは思っていなかった。彼女は魅力的すぎた。私は彼女のエージェントに伝えた。“彼女は見た目が良すぎる。こんな子、私のまちにはいなかった”。それでもエージェントが、会うだけ会ってほしいと勧めてくるので、スカイプを通じてカミと話をしてみた。私は彼女のエネルギーにやられてしまった。カミの内面はまばゆいばかりに光り輝いており、それこそが彼女の魅力だった。彼女の起用について、私たちは話し合った。人生どん底の女の子を演じるのには、ちょっと魅力的すぎない? スーパーモデルみたいだし。カミを呼び、ほかの4人の女の子たちと脚本の読み合わせをさせてみた。カミとマイアはぴったりのコンビだった。カミがこのまま続けていけるかなんて杞憂で、彼女はただただ最高だった」。

 

現在、男性と結婚しているフリッツェル監督だが、バイセクシャルだという。このことを言うのでさえ、「男性が女性に抱く妄想が服を着て目の前にいるかのよう」に扱われることに強い嫌悪を示す。「私という人間の本質を話しているだけなのに、まともに話すらできないなんておかしい」。

 

みずからの体験を織り交ぜつつ、今のアメリカが抱える「白人若年層の貧困問題」を描いた本作の日本公開は未定だが、日本でも大ヒットとなった『ブリグズビー・ベア』のカイル・ムーニーが二人に翻弄される青年役で出演しており、興味を引かれるところである。また、プロデューサーとして名を連ねるのは、フリッツェル監督の配偶者で映画監督のデヴィッド・ロウリーだ。彼がメガホンとったルーニー・マーラとケイシー・アフレック主演の『ア・ゴースト・ストーリー』はようやくこの11月、日本で公開される。ちょっと特異な経歴を持つ彼女と、そんな彼女が引き寄せる人々から、何か新しい動きが生まれていくかもしれない。オーガスティーン・フリッツェル、また一人、今後の活動に注目したい監督が出現した。

 

<参照URL>

https://www.imdb.com/title/tt7690016/

https://themuse.jezebel.com/director-augustine-frizzell-on-representation-in-her-dr-1828040584

https://variety.com/2018/film/features/10-directors-to-watch-augustine-frizzell-1202651985/

Maia Mitchell to Bring Never Goin’ Back to Sundance

小島ともみ
80%ぐらいが映画で、10%はミステリ小説、あとの10%はUKロックでできています。ホラー・スプラッター・スラッシャー映画大好きですが、お化け屋敷は入れません。


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