[655] グレタ・ガーウィグ新作『若草物語』について


初監督作『レディ・バード』でその才能を発揮したグレタ・ガーウィグ。彼女は、アカデミー史上5人目の作品賞にノミネートされた女性監督になった。そんな彼女の次回作は、『若草物語』の映画化になるようだ。

『若草物語』は、19世紀後半のアメリカを舞台に、北軍の従軍牧師として戦地に赴いた父親が留守の間、信心深い母親を中心にそれぞれ性格のちがう四人姉妹が成長していく様子を描いた、ルイーザ・メイ・オルコットの古典的名作。古くは白黒映画の時代から、これまでに何度も映画化されてきた。思春期の女性の心情を描ききって鮮烈な監督デビューを果たしたグレタ・ガーウィグが、この名作をどのように映画化するのか注目が集まっている。

コロンビア・ピクチャーズが製作する本作は、同社の最高責任者エイミー・パスカルがプロデューサーを務める。彼女は、『フォーブス』の世界で最もパワフルな女性100人にランクインしたり、エンターテイメント業界で女性の役割を広げた功績でクリスタル賞を受賞するなど、ハリウッドを代表する女性の一人だ。近年では、スティーブン・スピルバーグ監督の『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』や、アーロン・ソーキン監督の『モリーズ・ゲーム』等、評価の高い作品をプロデュースしている。

エイミー・パスカル(下段右端)

もともとガーウィグはこの『若草物語』の脚本を任されていたが、このパスカル率いるコロンビア・ピクチャーズの強い希望により、監督も務めることになったそうだ。『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』も、トランプ政権下におけるメディアのあり方を訴える脚本に緊急性を感じたプロデューサーとスピルバーグが、大急ぎで製作した作品だ。「Time’s Up」のように社会の中での女性の立場についてとらえ直そうという動きがあるなかで、若い女性のストーリーを得意とするガーウィグにパスカルが熱烈なアピールをしたのは不思議ではない。

原題の『Little Women』は、直訳で「小さき女性たち」を指す。原作小説には、現代の感性からすると、旧時代的で保守的な女性観も登場するが、ガーウィグはそれらをどのように扱うのだろうか。また、『レディ・バード』でカトリックの高校に通う女性を描いたガーウィグが、ピューリタン家庭の姉妹をどう描くのかも注目される。

また、『若草物語』は賞レースでも数々の結果を残してきた題材である。1933年の作品では、第6回アカデミー賞の脚色賞を受賞し、キャサリン・ヘップバーンがヴェネツィア国際映画祭の女優賞を受賞。また、1994年のジリアン・アームストロング監督の作品では、第67回アカデミー賞でウィノナ・ライダーが主演女優賞に、また作曲賞と衣装デザイン賞にもノミネートされた。ガーウィグ版にも、プロダクションは期待を寄せていることだろう。

その熱量は、キャスティングからもうかがえる。長女メグにエマ・ストーン、次女ジョーに『レディ・バード』に引き続きシアーシャ・ローナン、四女エイミーにフローレンス・プー、姉妹の母親にメリル・ストリープ、ローレンス家の息子ローリーにティモシー・シャラメの出演が予定されている。三女ベスのキャストは現在、オーディションがすすめられているようだ。

ガーウィグはローナンについて、こうコメントしている。

「スクリーンのシアーシャには、特別な何かがある。彼女の心や頭の中をのぞいているような感覚になる。私は役に憑依されるような女優を求めている。その役が女優の身体を間借りしているような感じではなく、完璧にモノにしているような感じで。」

有名俳優たちを起用したピリオド・ドラマ(時代劇)は、ほとんど無名の俳優をつかい自然主義的に現代の若者たちを描いてきたマンブルコアとはいわば対極に位置するものともいえる。大舞台に立ってもインディー精神を忘れないガーウィグとこの名作は、どのような化学反応を見せてくれるのか。期待が高まる。

参照:

https://www.google.co.jp/amp/s/www.indiewire.com/2018/06/greta-gerwig-little-women-saoirse-ronan-timothee-chalamet-stone-streep-1201979912/amp/

https://www.google.co.jp/amp/s/variety.com/2018/film/features/greta-gerwig-saoirse-ronan-lady-bird-interview-collaboration-1202650197/amp/

https://www.google.co.jp/amp/s/variety.com/2018/film/features/greta-gerwig-saoirse-ronan-lady-bird-interview-collaboration-1202650197/amp/

北島さつき
World News&制作部。
大学卒業後、英国の大学院でFilm Studies修了。現在はアート系の映像作品に関わりながら、映画・映像の可能性を模索中。映画はロマン。


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