cf-lgみなさん、こんにちは!みなさんはどんな時に映画のレビューサイトにアクセスされるでしょうか。どの映画を鑑賞すべきか、決めかねているときでしょうか。それとも、映画館館を出た後、DVDで映画を観た後、他の人がその映画についてどんな感想を抱いたのか気になるときでしょうか。あるいは、自分の感想をだれかと共有したいと思うときでしょうか。

今日は、米国でいわゆるレビュー集約サイトの先駆けとなったRotten TomatoesとMetacriticをヒントに、映画レビューサイトについて考えてみたいと思います。いずれも、さまざまなメディアに掲載された批評家のレビューを集め評価を数値化し、さらに一般の利用者もまたそこに加わるスペースを提供したところに、新しさがありました。

これらのレビューサイトにアクセスすれば、映画ファンは、もはやわざわざ、新聞、雑誌など、個別メディアにあたる手間なく、さまざまな批評家のレビューを閲 覧することができ、さらに自らの評価を投稿し、一般の映画好き仲間とコミュニケーションを図ることもできます。そして、最終的に、それらはすべて集積され、その映画についての社会の総合的な評価として数値化されます。こうしたレビューサイトは、映画について、社会のコンセンサスとしての評価を可能にしたとして注目され、現在も利用が拡大しています。

まず、腐ったトマトことロッテン・トマト(Rotten Tomatoes)は、1999年に立ち上がりました。その名の通り、映画の評価は、トマトの鮮度で表記されています。評価が高いほど、トマトのアイコン はおいしそうに真っ赤になり、そして、75%以上と高い評価が得られると、鮮度保障のマークがつきます。59%を下回るとトマトは緑色に潰れてしまいます。ロッテン・トマトが承認する批評家はリスト化されており、利用者は映画からだけでなく、批評家からもレビューにアクセスすることができます。年末に は、最高得点を記録した作品に、Golden Tomato賞が与えられます。

例えば、菊地凛子主演で日本でも現在話題のKumiko, the Treasure Hunterは、一般公開前ですが、批評家からは鮮度91%の高評価、一般利用者の期待値も89%と上がっています。利用者同士がコミュニケーションできる フォーラムには、「最終的な評価がどうなるか予測しよう!」という投稿が見られます。

数値化の方法などいくつかの違いはあるものの、メタクリティック(Metacritic)も映画を扱い、批評家の評価を集め、一般利用者のSNS機能もある という点は同じです。メタクリティックでは、トマトの鮮度ではなく、Metascoreの得点でレーティングされます。一般的には、映画のロッテン・トマ ト、ゲーム・音楽のメタクリティックと認知されている傾向があるようです。

作品によってレビュー数も異なり、まさに一票の格差があることは否めませんが、ロッテン・トマトにはIndie Movies Onlineの批評家の記事もあり、大小さまざまな規模の映画が紹介されています。こうした奥行の広さもあり、プロの批評家から一般の映画ファンまでを、 この一つのレビューサイトという空間に集めることに成功していると言えるでしょう。Slateの2008年の記事で示されたように、レビューが実際の興行 収入に与える影響も少なくないと見られ、映画ビジネスにおけるレビューサイトの存在感は高まり続けています。

そうした中で、こうしたレビューサイトへの疑問も指摘されています。昨年2014年9月のインデペンデント紙では、Amazon.comがメタクリティックと、iTunesがロッテン・トマトとそれぞれ提携し、両サイトの評価数値を活用しようしていることに触れ、レビューの数値化がビジネスに組み込まれ、消費 者の判断に深く入り込こもうとしている現状に警鐘をならしています。同記事では、総意として扱われる集積されたレビューの数値化は、レビューの平均値を示しているにすぎず、本来多様であるはずの文化的価値が実態のない数字上の中間点に委縮する危険性があるとして、我々はあくまで自ら考え、選び、評価する姿 勢を忘れてはいけないとまとめています。

レビューサイトへの疑問は、映画人・映画ファンにも広がっており、本来、多様な価値観で主観的に感じる芸術の評価を、言葉でなく、数字でそもそも表現しえるのか。価値観も技術も目まぐるしく移ろう現代人の感覚で、あるいは商業的な短期のサイクルで、歴史的な作品を正しく評価できるのか。同時代的なコンテクストを拾わずに評価することで、本来の作品の意義を理解できのだろうか。いずれも重要な問題です。

2010 年年に、当時のニューヨーク映画批評家協会会であったアーモンド・ホワイトが、ロッテン・トマトの名を挙げ、映画批評の通俗化を危惧した発言をしていま す。彼はインターネットの進化と普及を、デモクラシーの観点からとらえながら、あくまでも専門的な批評の重要性を強調しました。デモクラシーの発展において、インターネットという新しい公共空間が広がったことの意義は紛れもなく大きいでしょう。一方で、長大量消費社会を生きる技術の利便さを実感すると共に、文化財としての映画の評価と受容のあり方について改めて考えさせられます。

Rotten tomatoes HP
http://www.rottentomatoes.com/
Metacritic HP
http://www.metacritic.com/
Erik Lungegaard, Why we need movie reviewers, Slate, July 1, 2008.
http://www.slate.com/…/07/why_we_need_movie_reviewers.html
Memphis Barker, Metacritic and Rotten Tomatoes tell you what to think. Don’t let them, The Indepent, September 15, 2014.
http://www.independent.co.uk/voices/comment/a-lot-of-people-might-like-u2-for-some-reason-but-that-doesnt-make-me-want-to-listen-to-them-9734595.html
Ben Taylor, Rotten Tomatoes vs. Metacritic: the definitive guide, The Croaking Frog, September 7, 2013.
http://www.thecroakingfrog.com/blog/rotten-tomatoes-vs-metacritic-the-definitive-guide
Armond White, Do Movie critics matter, First Things, April 201.
http://www.firstthings.com/…/04/do-movie-critics-matter


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