日本公開が一度延期されたものの、ついに2月3日に公開された「アバウト・レイ 16歳の決断」を筆頭に、今月24日には「ナチュラル・ウーマン」、3月には「彼の見つめる先に」「ビート・パー・メネッツ」、そして4月には「君の名前で僕を呼んで」など、2018年前期はLGBTQ+を扱った作品数々の日本での上映が予定されている。そんな中今回は1月にアメリカで公開されたばかりの、LGBTQ+を題材にした注目の作品をいくつか紹介したい。

1.Saturday Church
(1/12 公開 監督デーモン・カーダシス)

繊細でシャイな少年ユリシーズ(ルカ・カイン)は父親を早くに亡くしている。 母と小さな弟そして保守的な叔母の三人とニューヨークに暮らしていて、学校ではイジメに遭っている。周囲から彼に父親としての役割が求められる中でユリシーズは自分の性と宗教にだんだんと疑問を持ち始める。歌とダンスで溢れている世界を頭の中に作り上げることで現実の厳しさを忘れようとしていたユリシーズだったが、ある日トランスジェンダーのコミュニティを見つけそこから彼の人生は変わり始める。

監督のデーモン・カーダシスがウェストヴィレッジの協会でボランティアをしていた時の経験を元に作られたこの作品。主演のルカ・カインの演技が絶賛されている。

2. Studio 54
(1/21 公開 監督;マット・ティローノーアー)

1970年代のヘドニズム(快楽主義)の集まりの場であった “Studio 54” は、常に盛り上がりが絶えないナイトクラブであっただけではなく、その時代を象徴するような存在ですらあった。友人かつクラブの共同所有者であるイアン・シュレイガーとスティーブ・ルーベル、ブルックリン育ちの二人の大学生がどのようにしてStudio 54を立ち上げたのか、その様子はどのようなものだったのか。輝かしいナイトクラブの様子、訪れたセレブリティについて、成功から荒廃への流れ、浴びせられた名声と罵声、人々の貪欲さについて描いたドキュメンタリー。サンダンス国際映画祭で上映され批評家から高い評価を受けた。

3. The Strange ones
( 1/5 公開 監督;クリストファーラドクリフ、ローレン・ウォークステイン)

二人の兄弟が森にキャンプに出かけることになった。しかし兄のニック(アレックス・ペツィファー)は何をしていても、なぜか重苦しい表情を絶やすことはない。弟のサム(ジェームズ・フリードソン・ジャクソン)は不気味な森と兄の様子にどこか怯えている。何が起こるか全くわからないミステリアスな雰囲気の中、二人は“ある記憶” を頼りに車を走らせる。

アメリカのテキサスで毎年開かれる大規模イベントの “サウス・バイ・サウスウエスト” で高評価を得たこの作品。サスペンスに満ちたストーリーと雰囲気、美しくはっきりとした撮影技術、主演二人の演技力が賞賛された。

4. Freak show
(1/12 公開 監督 トゥルーディー・スタイラー)

ティーンネージャーのビリー・ブルームはディーバだ。華やかな洋服を身につけメイクをして毎日を過ごしている。いじめや中傷になど全く怯まない。彼は長い間気の強い彼の母親と住んでいたが、その母親にモラルの厳しい彼の父親と住むことを強制させられる。また新しい学校は保守的な高校。しかし恐れを知らないビリーはそこでホームカミング・クイーンに立候補することを決断する。イミテーションゲームで若きベネディクト・カンバーバッチを演じたことで話題となった、アレックス・ロウザーがビリーを演じ、アビゲイル・ブレスリンやアナソフィア・ロブなど豪華キャストが出演している。

5. The Miseducation of Cameron Post
( 1月22日 公開 監督;デジリー・アッカヴァン)

モンタナに住む12歳のキャメロン・ポスト(クロエ・グレース・モレッツ) は、自分がレズビアンであることを認識した直後に両親を交通事故で失った。その後キャメロンは保守的な叔母と祖母に育てられながら、数少ない友人と共にモンタナのマイルズシティで生活している。ある日、彼女は叔母と祖母に “ジェンダー・ロール” を学ぶよう、強制的に “ゲイ変換療法キャンプ” に送られる。一体彼女はキャンプで何をしどんな人々に出会うのかー
デジリー・アッカヴァン監督の四年ぶり第2作目となる長編。2016年のカンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した “アメリカン・ハニー(原題)” で主演を果たしたサシャ・レーンも出演している。今年のサンダンス国際映画祭で初上映され、グランプリを獲得した注目の作品である。

この他にも、三月にはニック・ロビンソン主演の “Love,Simon” 、またナチュラル・ウーマンを監督したセバスティアン・レリオ監督作品でレイチェル・マクアダムス主演を務める“Disobedience”も、アメリカで初公開する。

LGBTQ+を扱った作品がつくられて映画祭で上映されたり高評価を得たりすることはとても意味があることだが、重要なのはただ単にそのカテゴリーの中にこれらの映画が存在しているということだけではない。カテゴリーそのものや従来のステレオタイプにとらわれることなく、その映画をひとつの作品として観ることを大切にしていきたい。

参照記事:
https://www.google.co.jp/amp/variety.com/2018/film/reviews/studio-54-review-sundance-1202673346/amp/

http://www.latimes.com/entertainment/movies/la-et-mn-mini-freak-show-review-20180118-story.html

Director Damon Cardasis Shares Inspiring Stories From Real-Life ‘Saturday Church’

https://www.google.co.jp/amp/s/www.vogue.com/article/saturday-church-movie/amp

Every Year in Queer Cinema Should Start as Well as 2018

樋口典華
映画と旅と本と音楽と絵画が、とにかく好きで好きでたまらない、現在、早稲田実業学校高等部3年生。興味をもったことは、片っ端から試していく性格です。


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