すでに、レオナルド・ディカプリオの出演が決定している他、トム・クルーズやブラッド・ピット、マーゴット・ロビーなど豪華俳優陣の出演が検討されている。
本作は、1960年〜1970年代に数々の殺人事件を起こした、チャールズ・マンソン率いるカルト集団「マンソン・ファミリー」を題材としているが、主人公は事件の当事者ではなく、ハリウッドでの成功を夢見るテレビ俳優とその相棒のスタントマンである。『戦場のピアニスト』などで有名なロマン・ポランスキーの妻であり、女優であるシャロン・テートがマンソン・ファミリーによって殺害された際に、隣の家に住んでいたのがディカプリオ演じるテレビ俳優という設定で、これらがタランティーノの代表作『パルプ・フィクション』のような多層構造の物語で進んでいく。
ロマン・ポランスキー監督も物語のキーパーソンになると語られており、公開日もシャロン・テートの事件が起きた1969年8月9日のちょうど50年後に設定されている。
この春から制作がスタートする本作が、これほど前から注目されているのは、タランティーノが長らくハーヴェイ・ワインスタインとタッグを組んできたのが一因である。セクハラ騒動でワインスタインが映画界から去った後、本作の配給権をめぐって争奪戦が起こっており、最終的に決定したソニーは1億ドル近い高額の制作費だけでなく、編集の決定権などかなりの好条件を示しており、タランティーノにとっては良い結果となった。
そんな中、『パルプ・フィクション』、『キル・ビル』に出演したユマ・サーマンがついにワインスタインから受けたセクハラについてニューヨーク・タイムズに告白し、その中で”『キル・ビル』の撮影中に死にかけた”と、タランティーノに対する批判も含まれていた。
彼女が青いコンバーチブルで疾走するシーンの撮影について、以下のように語っている。
「クエンティンは私のトレーターにやってきて、他の監督同様、私が拒否するのに耳をかしてはくれませんでした。」
マニュアルのスティックシフトをATに改造された車はどう見ても安全に見えず、スタントマンを起用して欲しいとお願いしても、プロデューサーに聞き入れてもらえなかったと言う。
「彼に、『君の車はきっと大丈夫だ。道を直進するだけだし、時速40マイル(約64km/h)は出してくれないと、髪がちゃんとなびかない。できなきゃ撮りなおしだ。』と説得されました。しかし、私が乗っていたのは”死の箱”だったのです。座席のネジ止めは甘く、道は砂だらけの上、直線ではありませんでした。」
彼女の心配は的中し、車は道を外れ、木に衝突する事故を起こした。
怪我をおったサーマンは、2週間後、事故の全貌を知り、告訴する権利を得るために、事故車とその時に撮影していた映像を見せて欲しいと自身の弁護士を通してミラマックスに手紙を送った。するとその返事は”これによりどんな苦痛を得ようと、制作側の責任を追及しない”という書類にサインすれば見せても良い、というものだった。もちろん彼女はサインせず、その後数年に渡りタランティーノとは争い続けた。
「事故の後、映画のプロモーションのためにあちこち一緒に回らなければいけませんでした。2004年、ニューヨークのソーホーハウスでお互いを罵り合うひどい喧嘩をしたことがあります。彼が事故の映像を見せたがらず、それが決定事項だと言われたからです。」
「ハーヴェイは私に襲いかかってきたけど、殺そうとはしなかった。」と、15年ごしで公にできた事故の写真とともに語っている。
過去、ベルトルッチ監督が『ラスト・タンゴ・イン・パリ』でレイプシーンを同意なしで撮影した件など、俳優への強要が問題になっているケースはあるが、今後は女性の権利のみならず”俳優”としての人権の尊重についても見直す動きが活発化しそうである。
参考
http://www.indiewire.com/2018/02/quentin-tarantino-manson-movie-roman-polanski-1201924310/
https://www.nytimes.com/2018/02/03/opinion/sunday/this-is-why-uma-thurman-is-angry.html
https://www.vox.com/culture/2018/2/3/16968152/uma-thurman-harvey-weinstein-quentin-tarantino-kill-bill
http://www.indiewire.com/2018/02/uma-thurman-kill-bill-accident-quentin-tarantino-1201924795/
荒木 彩可
九州大学芸術工学府卒。現在はデザイン会社で働きながら、写真を撮ったり、tallguyshortgirlというブランドでTシャツを作ったりしています。
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