[586]ジョン・ウィリアムズによる2作品の音楽:『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』


作曲家のジョン・ウィリアムズは、2017年の映画『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』の音楽を手掛けた。両作品ともに、1970年から続いているとある関係に由来している。ウィリアムズは、1974年の『続・激突!/カージャック』からほとんどのスティーヴン・スピルバーグ監督作の音楽を作曲してきたが、『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』は、その28作目にあたる。また、1977年から始まった『スター・ウォーズ』シリーズであるが、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』は、ウィリアムズが手掛けるシリーズ8作目の音楽である。

ウィリアムズは、2018年2月8日で86歳を迎えるが、TVや映画音楽のキャリアは約60年にもなる。初期の経歴でウィリアムズは、1958年にテレビ番組Playhouse 90や、低予算のドライヴイン映画であったDaddy-Oで名前がクレジットされた。

『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』と『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』の両者は、ウィリアムズにとってのこれまでの良く知られた仕事上の繋がりを示しているが、この2つのスコアが持つ対照性はこの上なく著しい。『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』は、実際に起きた新聞の物語であり、スリラーのような音楽が響く。ウィリアムズの音楽は、出版競争への切迫感や、威厳を感じさせるアメリカの出来事を反映している。後者は、出版や報道の自由の重要性を思い出させてくれる最後のシーンを導く。

「私はこのようなことをまったく行ったことがありませんでした。3つまたは4つのモンタージュがありました。印刷機のモンタージュです。前大統領の批評、裁判官の(ヒューゴ・)ブラックが下す決定の待機。そこには様々な度合いの明暗、速度などが伴います。ケイ(キャサリン)・グラハムの穏やかな2つのシーンは、伝統的な側面で音楽を表現しています。」

ウィリアムズは、何年も前に、ソリストのヨーヨー・マとチェロの協奏曲を披露した後に、ケネディ・センターで、ワシントンポストの出版者であるキャサリン・グラハムに会ったことがある。「彼女は、私たち2人に対して親切でとても優しかったです」とウィリアムズは振り返った。

スピルバーグ監督は、『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』は、前もって音楽を聞かずにレコーディングセッションに向かった希有な例であったと述べた。スピルバーグ監督は、ウィリアムズが作曲とレコーディングに取り組んでいる際に、次作『レディ・プレイヤー1』のポストプロダクションの最中であったのである(『レディ・プレイヤー1』の音楽はアラン・シルヴェストリが担当)。スピルバーグ監督は、そのスコアを「映画が求めているときに、音楽はとてつもなく抑制されて、率直で力強い」と賞賛した。

ソロピアノの節は、簡潔で意義深いとウィリアムズは示唆している。「簡潔さだけでなく、高潔さと伝統へのノスタルジアでさえも包含しているのです。非常に力強く、真実への探求に効果を発揮しています。」

『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』に関して、ライアン・ジョンソン監督は、「私は幸運にも優れていて驚くべきものを得ることができました。ジョンとの経験は、核心の中の核心でした」と述べた。

1年前に、「私たちは概要についての会話をしました」とジョンソン監督は説明をした。ジョンソン監督の音楽編集者が、以前の『スター・ウォーズ』の音楽のテンプスコアを作り、ウィリアムズに「私たちの考えていることの指針として」提示した。

フォース、レイアのテーマ曲から、レイ、スノークといった最近のテーマ曲まで、多くのウィリアムズ作曲による以前の『スター・ウォーズ』のテーマ曲が引用されていた。映画全体にわたる音楽の中で、それらのテーマ曲が複雑に絡んでいる。「レイを見て、レイのテーマ曲を聞きたくなります。フォースに言及されたり、感じたりするときに、フォースのテーマ曲を聞きたくなるといった具合です。それらの引用がファンにとって意味あるものとなること、テーマ曲が聴覚で関連付けられていくことを望むのです」とウィリアムズは話した。

それらかつてのテーマ曲は、ローズ、ルークが住む島の隠れ家オク=トー、戦闘シーン、多くの楽曲を繋ぐ間の音楽によって広がっている。

ジョンソン監督は、ウィリアムズが愉快なエイリアンのカジノ音楽の作曲を最も楽しんでいたと感じた。「プラスティックのトランペット、プランジャーとして犬のチュートイを使う人がいました。ジョンは、その日小さな子供のようでした」とジョンソン監督は述べた。その楽曲のひとつで、「アーティ・ショウ(ジャズクラリネット奏者)の真似がおかしな苦労へと繋がっているよ」とウィリアムズは冗談を言った。

101人編成のオーケストラ、Los Angeles Master Choraleの64人の合唱団は、2016年12月から2017年の6月までの11日間でレコーディングを行った。L.A.のミュージシャンたちは、184分の音楽をレコーディングした。その一部は、2時間の最終カットの前に削られた。映画の尺は、さらに35分間伸ばされた(『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』では、それよりも小規模の76人編成のオーケストラが、10月後半と11月前半の3日間でレコーディングを行った)。

ジョンソン監督は、その出来上がった音楽に対して非常に喜んだ。ジョンソン監督は、最終的に、会話と効果音をなくし、前面で音楽だけが響いている映画のバージョンを公開したいと考えているのだとウィリアムズは述べた。すべての劇伴が際立つであろうと考えられる。すべての音楽が、雰囲気、キャラクターなどへの構造や説明に沿って進んでいくのである。

『スター・ウォーズ』の将来に関して、ウィリアムズはJ・J・エイブラムス監督に来年のエピソード9の音楽を担当すると伝えた。「心からそのことを完遂したいと思っています」とウィリアムズは述べた。

さらに、ウィリアムズは、『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』のソロへのテーマ曲を作曲することになっている。また、そのテーマ曲以外のすべての作曲をジョン・パウエル(『ヒックとドラゴン』シリーズ、『ボーン』シリーズなどの音楽を担当)が担当し、自身の音楽の中にウィリアムズのテーマ曲を組み込む予定である。「現在のプランでは、私がハン・ソロのテーマ曲を書き、ジョン・パウエルがそのスコアを書くというものです。彼は素晴らしい音楽を書いてくれるでしょう」とウィリアムズは語った。

パウエルは、『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』の主要な作曲家として、2017年7月に発表された。「彼が担当することになって、とてもうれしく思います。私ができることは、ジョン(・パウエル)とロン・ハワード(監督)に、このことをオファーすることです。もし、皆がそのことで喜んでくれるなら、私もうれしく思います。… ジョン(・パウエル)は、スコアを完成させてくれるでしょう。彼は、残りすべてのテーマ曲と音楽を書いてくれることになっています。聞くのがとても楽しみです」とウィリアムズは続けた。

俳優のマーク・ハミルは、ジョン・ウィリアムズを賞賛する。ハミルによれば、彼はすべてのシーンを高めてくれるのだという。
「1人の俳優は所詮1人に過ぎず、オーケストラの中のひとつの楽器に過ぎないのです。彼はキャスト全体に匹敵します。」

「ジョージ・ルーカスを除いて、ジョン・ウィリアムズほど『スター・ウォーズ』を成功に導いた名前はほかにありません」とマーク・ハミルは述べた。

それは、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』の主役を含めて、『スター・ウォーズ』シリーズの8作品の内、5作品でルーク・スカイウォーカーを演じた俳優からの大胆な発言である。しかし、ほとんどの俳優以上に、ハミルは映画の中の音楽の役割に感謝を述べているのかもしれない。

ハミルの映画音楽への興味は、彼の子供時代の経験から語られていった。かつてのワーナー・ブラザーズの作曲家として、カール・スターリングに注目をしたのである。その後、バーナード・ハーマンに目を向けた。ハーマンは、特殊効果スタッフのレイ・ハリーハウゼンによるファンタジー映画の音楽を担当したのである。「『シンバッド七回目の航海』と『アルゴ探検隊の大冒険』の2本立てを観ました。それらの映画を観たときから、メインテーマを口ずさむことができました」とハミルは話した。

ハミルは、ハーマンが『サイコ』の音楽で観客を怖がらせた作曲家であると知り、さらに驚いた。「『サイコ』にスコアがなかったらどうなるでしょうか?そのスコアにはインパクトがあり、全体における体験には欠かせません」とハミルは語った。ハミルは歳を重ねて映画のファンになるにつれて、マックス・スタイナー(『キングコング』、『風と共に去りぬ』、『カサブランカ』などの音楽を担当)や、エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト(『ロビンフッドの冒険』、『シー・ホーク』、『嵐の青春』などの音楽を担当)の音楽に感謝をするようになった。

ハミルにとって、1976年は極めて重要な年であった。ジョージ・ルーカス監督のSF冒険活劇映画のキャストとなったからである。「『ジョーズ』は、ジョン・ウィリアムズが『スター・ウォーズ』を手掛ける前に知っていた彼による唯一の映画です。間違いなく、“ジョニー”・ウィリアムズ(かつてジョンではなく、“ジョニー”の名義でクレジットされていた)として、彼はテレビで功績を挙げていました。しかし、かなり後になってから知ったのです」とハミルは述べた。

ハミルは、最初の映画のウィリアムズのスコアを聴かせてもらったときのことを鮮明に覚えている。ダビングセッションの途中で、プロデューサーのゲイリー・カーツがマリブの家に彼を迎えに行った際のことであった。「優れた音響設備が備わった2座席のスポーツカーでした。彼はテープを入れて、私はぶちのめされました。目的地に着くまで、私は浮き上がっていました。信じられなかったのです。涙が顔を伝っていきました。とても圧倒されて、感動し、感激しました。彼の音楽はエピックでした。私たちのようにこじんまりした映画でしたが、彼の音楽は映画を『アラビアのロレンス』の地位にまで高めてくれました」とハミルは思い返した。

ハミルはすぐさまウィリアムズのファンになった。ウィリアムズが『スーパーマン』のレコーディングをしている際に、ハミルは偶然にもロンドンにいた。ハミルは数あるレコーディングセッションの内の1回に招待をしてもらった。ハミルは、その音楽がこんなにもスリリングであることについて考えた。「なぜ、シリーズの次作である『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』のためにその音楽を取って置いてくれないのだろうか?自分たちのこととして、やや彼に考えを巡らせていました」とハミルは笑いながら述べた。

2015年に『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』で、新たな3部作が幕をあける。「ジョンは繋がりにおける組織であるのです。フォースは、その上で我々と共にあったのです。誰も彼を引き継ぐことはできません」とハミルは話した。

ライアン・ジョンソン監督は、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』のレコーディングセッションにハミルを招待した。「私は畏敬の中にいました。オーケストラ全体を見ると、100を超える人々がいて、ウィリアムズは彼らとコミュニケーションをとっていました。彼は、皆の名前を覚えているのです!いかに彼がすべてのシーンを高めているのかについては筆舌に尽くしがたいです。シーンにおける感情、俳優が行っていることと同じように、深く表現されている葛藤についてのダイナミックさを理解していました。ある意味で、それはもっと複雑です。1人の俳優は所詮1人に過ぎず、オーケストラの中のひとつの楽器に過ぎないのです。彼はキャスト全体に匹敵します。」

ウィリアムズは引退をするつもりはないと述べる。「音楽を書くことから引退をすることはできないと思います。私はとても幸運で、仕事は致命的なことには左右されていません。眼が大丈夫ならば、手が大丈夫ならば、(続けられます)。私はまったく両手に関節炎がなく、ピアノを苦労なく弾くことができます。私には、自分から仕事の楽しみを奪う理由がまったくないように思います。音楽はとてもやりがいがあります。」

60年間、この仕事を続けてきたことをどのように思うかについて尋ねられると、ウィリアムズは、「いいスタートが切れていると思いますよ」と笑って答えた。

<ジョン・ウィリアムズが『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』のオープニングファンファーレを指揮する様子。2016年12月15日、ロサンゼルスのソニースタジオにて。>

参考URL:

http://variety.com/2018/film/awards/john-williams-could-set-oscar-record-1202658996/

http://variety.com/2017/film/news/john-williams-star-wars-composer-han-solo-movie-theme-1202650282/

http://variety.com/2018/film/news/mark-hamill-on-star-wars-music-composer-john-williams-1202659494/

宍戸明彦
World News部門担当。IndieKyoto暫定支部長。
同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科博士課程(前期課程)。現在、京都から映画を広げるべく、IndieKyoto暫定支部長として活動中。日々、映画音楽を聴きつつ、作品へ思いを寄せる。


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