レバノンの首都、ベイルート市当局は2018年1月18日から公開予定だったスティーブン・スピルバーグ監督『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(原題『The Post』)の上映を禁止した。

メリル・ストリープ、トム・ハンクス主演の『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』はワシントン・ポストのキャサリン・グラハムがアメリカ政府に隠されていた「ペンダゴン・ペーパーズ」の記事を出すために奮闘する物語である。レバノンの主唱者は報道の自由を問う映画を禁止することは皮肉だと指摘する。

上映禁止の理由はスピルバーグがイスラエルと協力関係にあるからだとされている。彼が1994年に設立したショア財団がレバノンのヒズボラの動向から、 2006年にイスラエルに救援活動費として100万ドルを寄付した。その後、スピルバーグはアラブ諸国のブラックリストに登録された。しかし、それ以降も彼の作品が禁止されることはなかった。『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』(2011年)の広告のスピルバーグの名前が黒塗りされていたことはあるが、『トランスフォーマー/最後の騎士王』(2017年)や『ジュラシック・ワールド/炎の王国』(2015年)はレバノンで問題なく上映されてきた。

レバノンで表現の自由のための市民運動を行うNGO Marchの副会長、Gino Raidyは自身のブログで「なぜ『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』はされるがままなのか」、「それはこの映画が間違っているときは権力に立ち向かい、政府を超えて真実と正義を選ぶジャーナリストを偶像化しているからなのか」と問いかける。また、L’Orient-Le Jourに「公開前には試写会が行われている。」と説明する。Hanounはこの決定は全面的にスピルバーグとイスラエルの相互の影響に基づいて行われたと言う。内務省に禁止を実施する最終決定権があるが、検閲委員会の決定がそれを覆すことは珍しいことだそうだ。

また、パティ・ジェンキンス監督のアクション映画『ワンダーウーマン』(2017年)も昨年、主役のガル・ガドットがイスラエル国防軍に勤めていたイスラエル市民であることから上映を拒否された。先週、世界的に有名なレバノンのファッションデザイナーであるElie Saabが自身のドレスを着たガドットの写真をインスラグラムに投稿したところ、非難を浴びた。Elie Saabはその後写真を削除した。12月には、ダニエル・ラドクリフが主演を務める『ジャングル ギンズバーグ19日間の軌跡』がイスラエル人のYossi Ghinsbergの自伝に基づいたボリビアのジャングルでの冒険物語のため、レバノンの映画館で2週間の上映の後に上映禁止となった。

そのほかにも恣意的な理由で、レバノンでの上映が禁止されてきた映画がある。「The Boston Globe」の記者によるカトリック教徒の児童虐待の調査を映し出す『スポットライト 世紀のスクープ』(2015年)はレバノンの人口の約半分を占めるキリスト教の影を描いているという理由で上映中止となった。『インディペンデンス・デイ』(1996年)と『トゥルーライズ』(1994年)もアラブ人の描き方に問題があるとして禁止されてきた。また同性愛を描いた全ての映画も規制されている。

レバノンは依然としてイスラエルを精力的にボイコットしている数少ない国の一つだとRaidy氏は言う。また、「レバノンはそれをする唯一の国であり、このような禁止は小さな国の芸術と文化に悪影響を及ぼす。」と述べている。

『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』2018年3月30日(金)日本公開
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=vOb8MKgB1qY
公式HP:http://pentagonpapers-movie.jp

参照:
http://www.lefigaro.fr/cinema/2018/01/15/03002-20180115ARTFIG00318-les-libanais-prives-de-steven-spielberg-et-de-daniel-radcliffe-en-raison-du-boycott-contre-israel.php
https://www.washingtonpost.com/world/middle_east/lebanon-bans-new-film-the-post-citing-spielbergs-ties-to-israel/2018/01/15/7cbefacc-fa0f-11e7-b832-8c26844b74fb_story.html?utm_term=.e9ff962f8f1b
https://sfi.usc.edu/about

‘The Post’ Review: Steven Spielberg’s Spectacularly Entertaining Journalism Thriller Is a Rallying Cry for the Resistance


http://www.independent.co.uk/news/long_reads/the-post-meryl-streep-tom-hanks-hollywood-press-journalists-steven-spielberg-film-a8150296.html

兒玉奈々
World News担当。大学4年生。映画に出てくる女優さん、ダンスシーン、音楽が大好きです。熱しやすく冷めやすいタイプなので、ハマってるものがコロコロ変わります。


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