[577]ミシェル・ウィリアムズのギャラがマーク・ウォルバーグの1%未満と判明


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「#Metoo」ムーブメント、そしてゴールデンクローブ賞で話題となった「Time’s Up」まで、ワインスタインのセクハラ告発に端を発するハリウッドでの運動は、性別を問わず多くの人に指示されてきた。しかし、これは単にセクハラだけが問題なのではない。セクハラの背景にあるのは、ジェンダーバイアス、つまり性別によって評価や扱いを変える偏見である。そんなことが象徴されるような出来事がハリウッドで起こった。

リドリー・スコット監督の新作、『All the Money in the World』は、1973年、石油王ジョン・ポール・ゲティの孫が誘拐された事件を描いたノンフィクション小説を原作としたスリラー映画だ。 ケビン・スペイシーのセクハラ事件を受け、公開の約2ヶ月前に監督が彼の出演した全22シーンを撮り直したということでも話題となった。監督はこのことについて、「スペイシーの出演は、映画にとって悪影響だと感じた」とコメントしている。すでに英米で公開されている本作は、ウィリアムズがゴールデングローブの助演女優賞にノミネート、スペイシーに変わってゲティを演じたクリストファー・プラマーも同賞の助演男優賞にノミネートされるなど、高い評価も受けている。

しかし、監督の「スペイシーの出演シーンを撮り直すという決断にみんな快く賛同し、無報酬にもかかわらず集まってくれた」という言葉は、どうやら事実ではないようだ。少なくとも、誘拐事件に関わる元CIA捜査官を演じるマーク・ウォルバーグは、出演交渉の際に出演料を大幅につりあげ、10日間の撮影で、150万ドル(約1億7000万円)を受け取ったという。*1

『フォーブス』誌で2017年最も稼いだ俳優とも発表されたウォルバーグのことであるから、それだけでは話題にはならないのだが、問題なのは同じ撮影に参加したミシェル・ウィリアムズに1日あたり80ドル(約8900円)しか支払われなかったという事実である。これは、ウォルバーグのギャラの1パーセントにも満たない。しかも、ウォルバーグとウィリアムズのエージェントが同じウィリアム・モリス・エンデバー(WME)であるにも関わらず、ウィリアムズにはギャラについての相談は一切なかったそうだ。*2

誘拐されるゲティ三世の母親役を演じるウィリアムズは、ウォルバーグと同等のギャラをもらっても然るべき役どころを演じている。ウォルバーグに高額のギャラが支払われたのは、マネージャーの手腕とも言えなくはないが、ここまでの格差が容認されるというのはジェンダーバイアスのあらわれではないだろうか。

ハリウッドの内部からも、驚きの声が上がっている。俳優のジェシカ・チャスティンはツイッターで、「彼の何百万ドルものギャラに比べて、彼女は1日たった80ドルしかもらってないと聞いた。一体どういうことか説明してくれる?彼女は立派な女優で、あの映画でも素晴らしい演技をしていたのに」とコメントした。*3

映画監督のジャド・アパトーも、「こんなにめちゃくちゃで信じ難いこともない。こうやってビジネスは動くんだ。スタジオとウォルバーグはこの異常な事態を少しでもマシにするために、何かできなかったのかと不思議に思うよ」とツイートしている。*4

1月1日に発表された「Time’s Up」の正式コメントには、「職場における男女不平等な、アンバランスな力関係が、女性への冷遇やいやがらせの環境を育んでいる」とある。ウィリアムズは、この運動の創始者の一人であるが、きっとこうしたハリウッドの不平等さを肌で感じてきたのだろう。*5

セクハラ問題を起こした俳優のシーンをカットすることで、一見、問題に対処したかに見えた『All the Money in the World』だったが、その根本にあるジェンダーバイアスの根深さを証明してしまう本末転倒の結果となった。「Time’s Up」は、そうした”無意識的な偏見”に対しての闘いなのである。

『All the Money in the World』
日本公開 2018年初夏予定
https://youtu.be/KXHrCBkIxQQ

2018.1.15 追記:
最初の報道後、「追加のギャラを支払わなければ、クリストファー・プラマーの代役を認めない」と交渉していたことが判明、さらに批判が集中していたマーク・ウォルバーグ。*6
また、そもそもの契約が、ミシェル・ウィリアムズのみ「再撮影には無条件で応じなくてはならない」となっていたことに対して、契約エージェントのWMEにも問題があると声が上がっていた。*7
しかしこのたびウォルバーグは「Time’s Upの活動を全力でサポートする」と声明をだし、追加撮影のギャラと同じ150万ドルをウィリアムズの名前で「Time’s Up」に寄付すると発表した。さらに、WMEからも追加で50万ドルが寄付されるという。*8
今回の騒動についてウィリアムズは、「仲間の女優たちは親身になって、問題解決のために立ち上がってくれた。活動家の友達は自ら声をあげることを教えてくれた。そしてこの問題について責任のある男性たちは、私たちの声に耳を傾け、行動してくれた。真の平等な世界を作るには、男女平等な努力と献身が必要です。解決のために動いてくれた全ての人のおかげで、今日は忘れられない日になりました。」とコメントした。*9
この騒動に関連して、このほかにも性別や人種による賃金格差が数多く報道された。ハリウッドは、変わっていくことができるのだろうか。今後も注目したい。

『All the Money in the World』
日本公開 2018年初夏予定
https://youtu.be/KXHrCBkIxQQ

*1
https://www.washingtonpost.com/…/michelle-williams…/…

*2
https://www.avclub.com/mark-wahlberg-got-a-bonus-for-all…

*3,4,5
https://www.theguardian.com/…/all-the-money-in-the…

*6
https://www.usatoday.com/story/life/people/2018/01/11/exclusive-mark-wahlberg-refused-approve-christopher-plummer-unless-he-paid/1026347001/

*7
https://www.thewrap.com/mark-wahlberg-michelle-williams-all-the-money-in-the-world/

*8,9
https://www.cbsnews.com/news/mark-wahlberg-times-up-donates-all-the-money-in-the-world-fee/

北島さつき
World News&制作部。
大学卒業後、英国の大学院でFilm Studies修了。現在はアート系の映像作品に関わりながら、映画・映像の可能性を模索中。映画はロマン。


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